特定技能外国人を受け入れるには,JACへの入会や建設特定技能受入計画の認定申請などが必要になります。ここでは,建設業者が特定技能外国人を受け入れるまでの流れをまとめています。
特定技能外国人を受け入れるまでの流れ
まずは,特定技能外国人を受け入れるまでの全体の流れを見てみましょう。
- 建設業許可の取得
- JACに入会する
- 建設キャリアアップシステムへの登録
- 重要事項事前説明書
- 特定技能雇用契約の締結
- 建設特定技能受入計画の認定申請
- 1号特定技能外国人支援計画の作成
- 在留資格変更許可申請
- 1号特定技能外国人受入れ報告の提出
- 生活オリエンテーションの実施
- 受入れ後講習の受講
上記のうち,1〜8は受入前,9〜11は受入後に行います。
建設業許可の取得
最初は,建設業の許可を取得します。特定技能外国人を受け入れようと考えている建設業者さんのほとんどは建設業許可を取得されていると思うので,ここでは詳細は割愛します。
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2022.11.01
建設業許可について
建設業(元請・下請)を営もうとする者(個人・法人)は,「軽微な建設工事」を除いて,建設業法による許可を受ける必要があります。 軽微な工事 ...
JACに入会する
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「JAC」ウェブサイト
JAC(一般社団法人 建設技能人材機構/Japan Association for Construction Human Resources)とは,外国人を現場を支える技術者として受け入れ育成するために設立された組織です。特定技能外国人を受け入れるには,JACに入会する必要があります。
JACの会員になるには,2つのルートがあります。
- 正会員団体の会員になる
- JACの賛助会員になる
①正会員団体の会員になる
ひとつめは,JAC正会員団体の会員になる方法です。JACは正会員である46建設業者団体で構成されています。これらの正会員団体に入会するには,建設業者団体が定める会費の負担が必要になります(金額は団体によって異なります)。
②JACの賛助会員になる
ふたつめは,JACの賛助会員になる方法です。年会費24万円(入会金なし)を負担,JACの理事会の承認を経ることによって,JACに直接的に加入することができます。
①または②の方法でJACに入会すると「会員証明書」が入手できます。会員証明書は,あとの「建設特定技能受入計画の認定申請」に必要になります。
受入負担金について
1号特定技能外国人を受け入れる場合には,年会費のほか,受入負担金がかかります(税込)。
対象となる特定技能外国人 | 1人あたり受入負担金の月額 |
海外試験合格者(本機構が指定する海外教育訓練を受ける場合) | 20,000円 (年額:24万円) |
海外試験合格者(本機構が指定する海外教育訓練を受けない場合) | 15,000円 (年額:18万円) |
国内試験合格者 | 13,750円 (年額:16.5万円) |
試験免除者(技能実習2号修了者等) | 12,500円 (年額:15万円) |
実際は,試験免除者(技能実習2号修了者等)が多くなります。
建設キャリアアップシステムへの登録
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「建設キャリアアップシステム」ウェブサイト
「建設キャリアアップシステム」(一般財団法人 建設業振興基金)への登録をします。
建設特定技能受入計画の認定申請
主な認定基準
「建設特定技能受入計画」を作成して,国土交通省の「外国人就労管理システム」で認定申請を行います。在留期間満了日(または入国予定日)の6か月前から申請可能です。
受入計画の主な認定基準は次のとおりです。
- 建設業法許可の取得
- 建設キャリアアップシステムへの登録
- 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入
- 同一技能・同一賃金,月給制,昇給
- 重要事項について,母国語による書面での事前説明
- 受入れ後講習を受講させること
- 巡回指導による確認を受け入れること
基本的には,特定技能外国人を受け入れるまでの流れに沿っていれば問題ありませんが,ここでは「同一技能・同一賃金,月給制,昇給」については,補足します。
同一技能・同一賃金,月給制,昇給
①同一技能・同一賃金:同等の技能を有する日本人と同等以上
- 社内の同等技能の日本人技能者との比較
- 同一圏域における建設技能者の賃金水準と均衡を失していないこと
- 全国の賃金水準との比較も考慮すること
たとえば,経験年数(技能)の差で賃金に差を設けることは可能ですが,日本語能力を理由とした賃金の差別は禁止されています。また,賃金水準は,各都道府県労働局において公表されているハローワークの求人求職賃金を参考にします(参考:統計情報|沖縄労働局)。
②月給制:安定的な賃金支払い
- 月給制
- 口座振込
天候や受注状況によって基本給が大きく変動しない支払方法にします。
③昇給:技能習熟に応じた昇給
- 在留中の技能習得計画
- 技能習得に応じた昇給
- 各種資格の取得
技能習得は,建設キャリアアップシステムの能力評価と連動させます。
1号特定技能外国人支援計画の作成
受入企業は,特定技能外国人の職業生活上,日常生活上,社会生活上の支援を実施するため,「1号特定技能外国人支援計画」を作成します。以下,10の義務的支援があります。
- 事前ガイダンスの提供(3時間以上)
- 出入国する際の送迎
- 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続きへの同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談又は苦情への対応
- 日本人との交流促進に係る支援
- 非自発的離職時の転職支援
- 定期的な面談の実施・行政機関への通報
この計画は,在留資格変更許可申請等の際に必要です。
在留資格変更
①在留資格変更許可申請
すでに日本国内に在留している技能実習等の方を1号特定技能外国人とするためには,「在留資格変更許可申請」の手続きをする必要があります(期間満了日の2か月前から申請可能)。
もし,在留資格切替え手続に時間を要する場合(在留期間の満了日までに書類をそろえることができないなど)は,「特定活動」(4か月,就労可能できます)への在留資格変更をし,その間に「在留資格変更許可申請」の準備をするとよいでしょう。
②在留資格認定証明書交付申請
海外にいる外国人を1号特定技能外国人として採用するためには,「在留資格認定証明書交付申請」の手続きをする必要があります(入国予定日の3か月前から申請可能)。
1号特定技能外国人受入れ報告の提出
1号特定技能外国人の受入れ後,1か月以内に「受入報告書」を「外国人就労管理システム」(国土交通省)に提出します。受入れた特定技能外国人が帰国した場合や,他社へ転職した場合,倒産により雇用継続ができなくな場合も報告する必要があります。
生活オリエンテーションの実施
円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー,公共機関の利用方法や連絡先,災害時の対応等の生活オリエンテーション(8時間)を行います。合計8時間分実施すればよいので,「1日1時間×8日間」などのスケジュールで実施してもかまいません。
受入れ後講習の受講
「受入れ後講習」とは,1号特定技能外国人に対して,巡回指導・母国語相談ホットライン等にて,二重契約,虚偽申請等がないか本人に確認するものです。受入企業は,1号特定技能外国人の受入れ後,3か月以内に受入れ後講習を受講させることが必要です。
ただし,受入企業が,建設特定技能受入計画の認定前にFITS(一般財団法人 国際建設技能振興機構)による事前巡回指導を受けた場合は,受入れ後講習は免除されます。FITSは,適正就労監理機関としてJACから委託を受け,巡回指導(原則1年に1回)などを行っています。