映像送信型性風俗特殊営業は,届出制です。ここでは,映像送信型性風俗特殊営業を開業するまでの流れについて解説します。
映像送信型性風俗特殊営業とは
映像送信型性風俗特殊営業とはどのようなものを指すのでしょうか。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法(風営法)2条8項では次のように定義されています。
(前略)専ら,性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で,電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むものをいう。
これには有料アダルトサイトやライブチャット配信が該当します。
また,解釈運用基準(通達)も紹介します。
「性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像」
「性的な行為を表す場面」とは,自慰行為,性交,性交類似行為等を行っている人の様子や光景のことをいいます。
「衣服を脱いだ人の姿態」とは,全裸又は半裸等社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服を脱いだ人の姿態をいいます。したがって,通常の水着を着用した姿は当たりません。
「映像」とは,静止映像のほか,ビデオの映像のような「動く映像(動画)」も含まれます。
「専ら」
「専ら」とは,おおむね7割ないし8割程度以上をいいます。該当するかどうかは,営業を営む者の意図及び営業の実態を踏まえて判断されます。
「性的好奇心をそそるため」
「性的好奇心をそそるため」とは,当該客の性的な感情を著しく刺激する目的であると社会通念上認められるものをいいます。一般的には,次の映像がおおむね2割以上含まれている場合には,「性的好奇心をそそるため」のものであると評価することができます。
① 衣服を脱いだ人の姿態で,次に掲げるもの
(ⅰ) 大腿部を開いた姿態
(ⅱ) 陰部,臀部又は胸部を誇示した姿態
(ⅲ) 自慰の姿態
(ⅳ) 排泄の姿態
(ⅴ) 愛撫の姿態又はこれを連想させる姿態
(ⅵ) 緊縛の姿態② 性的な行為を表す場面で,次に掲げるもの
(ⅰ) 男女間の性交又は性交を連想させる行為
(ⅱ) 強姦,輪姦その他のりょう辱行為
(ⅲ) 性交類似行為
(ⅳ) 変態性欲に基づく性行為
バナー広告の依頼者の客に映像を伝達する形態のもの
バナー広告(いわゆるアフィリエイト広告)については,映像送信型性風俗特殊営業に該当しません(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」より)。
バナー広告(インターネットのホームページ等に設けられた横断幕状の映像であって,広告の内容を表示するとともに,当該広告の部分をクリックすることにより,当該広告の広告主が希望するホームページに自動的にアクセスすることができるようにしているものをいう。)を表示すること等により広告収入を得て,当該バナー広告を依頼した者の客となるべき者に映像を伝達する形態のものは,映像送信型性風俗特殊営業に当たらない。
映像送信型性風俗特殊営業の届出の全体像
それでは,映像送信型性風俗特殊営業の全体像を確認しましょう。
- 基準を確認する
- 書類を準備する
- 届出をする
風俗営業(キャバクラ等)と異なり,許可が必要ではない分,すっきりしています。
基準を確認する
事務所
映像送信型性風俗特殊営業は,事務所の所在地を決めておく必要があります。事務所の所在地には,地域や専有面積などの制限はありません。ワンルームマンションのような場所でも開業可能です。
ただし,自己所有ではない場合(賃貸借契約など),所有者による使用承諾書が必要になります。
広告又は宣伝をする場合に使用する呼称
広告又は宣伝をする場合に使用する呼称を決めます。また,映像送信型だと少ないとは思いますが,広告物を表示するときは場所の制限があるので,確認しておく必要があります。

2022.11.04
沖縄県における風俗営業の営業区域の制限について
風俗営業は,善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し,少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため,営業区域の制限がされています。ここでは,営...
書類を準備する
映像送信型性風俗特殊営業を営もうとする者は,営業を開始する10日前までに営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する公安委員会に,届出書を提出する必要があります。
届出書
届出書には次の事項を記載します。
- 氏名(法人の場合は名称,代表者の氏名)及び住所
- 広告又は宣伝をする場合に使用する呼称
- 事務所の所在地
- 映像の伝達の用に供する電気通信設備を識別するための電話番号その他これに類する記号であって,当該映像を伝達する際に用いるもの
- 自動公衆送信装置が他の者の設置するものである場合,当該自動公衆送信装置の設置者の氏名又は名称及び住所
添付書類
届出書には,以下の書類を添付します。
- 営業の方法を記載した書類
- 営業の本拠となる事務所,受付所及び待機所の使用について権原を有することを疎明する書類
- 個人であるときは,住民票の写し
- 法人であるときは,定款,登記事項証明書及び役員に係る住民票の写し※
※法人の場合,定款の事業目的に「映像送信型性風俗特殊営業」を記載しておく必要があります。事業目的は登記事項のため,法務局で登記する必要があります。
届出をする
届出書,添付書類を管轄する公安委員会に提出します。問題がなければ,「届出書の提出があった旨を記載した書面」が交付されます。
営業上の注意点
廃止・変更があったときの届出書の提出
営業を廃止したとき,届出した事項に変更があったときは,届出書を提出する必要があります。
18歳以上であることの証明
客が18歳以上である旨の証明,または18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を受けた後でなければ,映像を伝達してはなりません。
わいせつな映像等の送信を防止するための必要な措置
映像送信型性風俗特殊営業を営む者が「わいせつな映像」または「児童ポルノ映像」を記録したことを知ったときは,当該映像の送信を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。