労働安全衛生法の労働者の危険又は健康障害を防止するための措置について解説します。本章に関しては、理解するというより、条文をひととおり読んでおくことが大切になります。
事業者の行うべき調査等
・事業者は、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない(28条の2第1項本文)。
元方事業者の講ずべき措置等
・元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない(29条1項)。
・元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行なわなければならない(29条2項)。
特定元方事業者等の講ずべき措置
・特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない(30条1項)。
- 協議組織の設置及び運営を行うこと。
- 作業間の連絡及び調整を行うこと。
- 作業場所を巡視すること。
- 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。
- 仕事を行う場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で、特定元方事業者にあっては、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。
- 前各号に掲げるもののほか、当該労働災害を防止するため必要な事項
・製造業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない(30条の2第1項)。
注文者の講ずべき措置
・特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物等を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない(31条1項)。
・化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない(31条の2)。
機械等貸与者等の講ずべき措置等
・つり上げ荷重が0.5トン以上の移動式クレーン等を他の事業者に貸与する者は、当該機械等の貸与を受けた事業者の事業場における当該機械等による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない(33条1項、政令10条1項)。
建築物貸与者の講ずべき措置
・事務所又は工場の用に供される建築物を他の事業者に貸与する者は、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。ただし、当該建築物の全部を一の事業者に貸与するときは、この限りでない(34条、政令11条)。
→事務所などの建築物を他の事業者に貸す人は、労働災害を防止するための措置を講じなければなりません。この部分は先ほどの機械等貸与者のときと同じです。但書について、建築物の全部を貸す場合は、中で具体的にどのようなことが行われているか貸す人はわからないので、この限りでないとされています。
重量表示
・一の貨物で、重量が1トン以上のものを発送しようとする者は、見やすく、かつ、容易に消滅しない方法で、当該貨物にその重量を表示しなければならない。ただし、包装されていない貨物で、その重量が一見して明らかであるものを発送しようとするときは、この限りでない(35条)。
→重いものを発送するときは、危険なので重量を表示しておきましょうということです。ただし、包装されておらず、見るからに重いということがわかる場合は、周りの人はわかるので、この限りでないとされています。