ここでは、労働者災害補償保険法の業務災害から業務上の疾病について学習します。
目次
業務上の疾病
業務上の疾病について、まず労働基準法をみてみましょう。
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない(労働基準法75条1項)。
前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める(同条2項)。
業務上の負傷が通達ベースになっているのに対して、業務上の疾病は、厚生労働省令で定められています。続いて、疾病の範囲について、規則をみてみましょう。
別表第1の2は、次の通りです。
② 物理的因子による疾病
③ 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病
④ 化学物質等による疾病
⑤ 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病
⑥ 細菌、ウイルス等の病原体による疾病
⑦ がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病
⑧ 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
⑨ 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
⑩ 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
⑪ その他業務に起因することの明らかな疾病
本試験対策として、業務上の疾病にあたるかを理解することが重要になります。これらは大きく次のように分類することができます。
- 業務上の負傷に起因する疾病(1号)
- 職業上の疾病(2号から10号)
- その他業務に起因することの明らかな疾病(11号)
職業上の疾病のうち、8号と9号の認定基準が頻出です。これらの認定基準については、記事を分けて解説をします。
最後に、これらを包括する11号が規定されています。
この全体像を把握した上で、それぞれみていきましょう。
業務上の負傷に起因する疾病(1号)
1号は、業務上の負傷に起因する疾病です。
職業性の疾病(2号から10号)
2号から10号は、職業性の疾病です。各号について、2号なら「紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患」、「赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患」など具体的な疾患が規定されています。病名まで覚える必要はありませんが、「身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病」「化学物質等による疾病」といったように、どのようなことが職業性の疾病として規定されているかはおさえておきましょう。
8号と9号の認定基準については、別途記事をご参照ください。
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(8号)
心理的負荷による精神障害(9号)
その他業務に起因することの明らかな疾病(11号)
11号について、「その他業務に起因することの明らかな疾病」として、包括的救済を定めています。
本試験では、業務上の疾病の範囲について、労働基準法施行規則別表第1の2の各号に掲げられているものに限定されているかが問われています。
業務上の疾病の範囲は、労働基準法施行規則別表第1の2の各号に掲げられているものに限定されている。(平28-5-1)
正誤:◯
業務上の疾病は1号から10号まで具体的に規定されており、さらに11号は「その他業務に起因することの明らかな疾病」として包括的に規定しているため、「限定されていない」ように感じますが、1号から10号に該当しないものを11号で包括的に救済するので、業務上の疾病の範囲はあくまで「別表第1の2の各号に掲げられているものに限定されている」ことになります。
まとめ
業務災害は、業務上の負傷と疾病に分けられます。
業務上の疾病は、業務上の負傷に起因する疾病(1号)、職業性の疾病(2号から10号)に分けられます。職業性の疾病のうち、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等」(8号)と「心理的負荷による精神障害」(9号)は認定基準をおさえます。そして、包括的救済として「その他業務に起因することの明らかな疾病」(11号)が定められています。