雇用保険法の失業等給付の一般被保険者の求職給付の基本手当から延長給付について学習します。延長給付は、訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付を整理しましょう。
訓練延長給付
訓練延長給付は、公共職業訓練等を受けるため待期している期間、公共職業訓練等を受ける期間、公共職業訓練等を受け終わったあとの期間の3つがあります。
- 待期している期間:90日間
- 公共職業訓練等を受ける期間:2年間
- 受け終わったあとの期間:30日間
通達を確認しましょう。
・訓練等の期間中に病気その他の理由により所定の訓練等を受けることができず、所定の訓練等の計画に基づく基準時間数に不足を生じたために所定の訓練等の終了の日に訓練等を修了することができない場合において、当該訓練等の終了の日を超えて行われる補習を受ける者に対しては延長給付は行わない(行政手引52352)。
個別延長給付
① 心身の状況が厚生労働省令で定める基準に該当する者
② 雇用されていた適用事業が激甚災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は激甚災害法の規定により離職したものとみなされた者であって、政令で定める基準に照らして職業に就くことが特に困難であると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住する者
③ 雇用されていた適用事業が激甚災害その他の災害(厚生労働省令で定める災害に限る。)の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は激甚災害法の規定により離職したものとみなされた者(前号に該当する者を除く。)
延長給付のふたつめは個別延長給付です。特定理由資格者又は特定受給資格者であって、各号のいずれかに該当し、かつ、指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができます。
まず、厚生労働省令で定める特定理由資格者は、「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと」を理由により離職した者に限られます(規則38条の2)。特定理由資格者のもうひとつの理由である「正当な理由」は対象外である点をおさえましょう。
1号の「心身の状況が厚生労働省令で定める基準」について、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)がある者が該当します(規則38条の4)。
2号は、適用事業が激甚災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者などが該当します。
3号は、激甚災害のほか、災害救助法に基づく救助が行われた災害やこれらに準ずる災害として職業安定局長が定める災害です(規則38条の5)。条文が読みにくいですが、「(前号に該当する者を除く。)」となっているので、まず、激甚災害に該当する方は、2号の対象になります。そして、2号までならない方が3号の対象になるイメージを持っておきましょう。これが、延長日数に影響します。
就職困難者についても同様の規定がされています。
前2項の場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、次の各号に掲げる受給資格者の区分に応じ、当該各号に定める日数を限度とするものとする(24条の2第3項)。
①第1項(第1号及び第3号に限る。)又は前項に該当する受給資格者 60日(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては、30日)
②第1項(第2号に限る。)に該当する受給資格者 120日(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては、90日)
ここは少し難しく感じるので、整理しましょう。また、令和6年度の本試験の選択式で問われた部分でもあるので、このレベル感でおさえておくことが重要といえます。
まず、個別延長給付は、原則として「60日」であることをおさえましょう。ただ、2号の激甚災害については、程度が重いので、2倍の「120日」となっています。
そして、ややこしく見えるのが括弧書き「(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては)」です。23条1項2号イは、45歳以上60歳未満で算定基礎期間が20年以上ある特定受給資格者で、所定給付日数は330日となります。また、23条1項3号イは、35歳以上45歳未満で算定基礎期間が20年以上ある特定受給資格者で、所定給付日数は270日となります。35歳以上45歳未満、45歳以上60歳未満はもっとも長い所定給付日数が設定されているため、その中でもっとも長い20年以上あるものについては、30日分減らしています。括弧書きまではおさえる必要性は高くありませんが、原則60日、激甚災害の場合は120日の部分は、理解記憶できるようにしておきましょう。
延長した分の求職者給付を受けられるようにするため、延長分の日数を加えた期間が支給の期間となります。
広域延長給付
続いて、広域延長給付です。特に理解が難しいところはないと思いますが、必要があると認めるときは、広域延長給付が認められています。
全国延長給付
最後は、全国延長給付です。
「失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準」は、連続する4月間(以下この項において「基準期間」という。)の失業の状況が次に掲げる状態にあり、かつ、これらの状態が継続すると認められることとする(政令7条)。
① 基準期間内の各月における基本手当の支給を受けた受給資格者の数を、当該受給資格者の数に当該各月の末日における一般被保険者の数を加えた数で除して得た率が、それぞれ100分の4を超えること。
② 基準期間内の各月における初回受給者の数を、当該各月の末日における一般被保険者の数で除して得た率が、基準期間において低下する傾向にないこと。
簡単にいうと、全被保険者の4パーセントを超えた人数が基本手当の支給を受け、新規受給者の数の割合が低下する傾向にない、つまり失業している人の割合が高止まりしている状態が継続すると認められるということです。
延長給付に関する調整
延長給付に関する調整は、条文で規定されていますが、読みにくい部分なのでまとめます(28条1項、28条2項)。
延長給付は、上記のような優先順位があります。たとえば、広域延長給付を受給している者は、広域延長給付が終わった後でなければ、全国延長給付、訓練延長給付は行われません。そして、個別延長給付が行われることとなったときは、個別延長給付がされ、広域延長給付はされません。
給付日数を延長した場合の給付制限
延長給付は、給付日数を延長する必要があるから延長しています。そのため、その趣旨を没却するようなことをした場合、その拒んだ日以後基本手当を支給しません。ただし、その者が新たに受給資格を取得したときは、支給されます。その人には二度と支給しないというわけではなく、その資格については支給しませんということです。
まとめ
延長給付についてみてきました。
延長給付は、訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付の4つに分けられます。これらは、①公共職業訓練を受けることを考慮した訓練延長給付、②個別の事情を考慮した個別延長給付、③地域を考慮した広域延長給付と全国延長給付の3つに分けると理解記憶しやすくなります。
まず、訓練延長給付は、訓練前(90日)、訓練中(2年)、訓練後(30日)に分けます。
次に、個別延長給付は、60日が原則、激甚災害の場合は2倍の120日になりました。もっとも、所定給付日数が長い者に関しては30日分調整される点に注意しましょう。
広域延長給付と全国延長給付といった地域で区切られているものは90日です。