【雇用保険法】延長給付について、訓練延長給付や個別延長給付などのまとめ

雇用保険法
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雇用保険法の失業等給付の一般被保険者の求職給付の基本手当から延長給付について学習します。延長給付は、訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付を整理しましょう。

失業等給付>一般被保険者の求職給付>基本手当>延長給付

訓練延長給付

受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(その期間が政令で定める期間[2年]を超えるものを除く。)を受ける場合には、当該公共職業訓練等を受ける期間(その者が当該公共職業訓練等を受けるため待期している期間(政令で定める期間[90日間]に限る。)を含む。)内の失業している日について、所定給付日数(当該受給資格者が期間内に基本手当の支給を受けた日数が所定給付日数に満たない場合には、その支給を受けた日数。)を超えてその者に基本手当を支給することができる(24条1項、政令4条)。

 

公共職業安定所長が、その指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者で、政令で定める基準に照らして当該公共職業訓練等を受け終わってもなお就職が相当程度に困難な者であると認めたものについては、期間内の失業している日について、所定給付日数を超えてその者に基本手当を支給することができる。この場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、前段に規定する政令で定める日数[30日間]から支給残日数を差し引いた日数を限度とするものとする。(24条2項、政令5条)。

訓練延長給付は、公共職業訓練等を受けるため待期している期間、公共職業訓練等を受ける期間、公共職業訓練等を受け終わったあとの期間の3つがあります。

  • 待期している期間:90日間
  • 公共職業訓練等を受ける期間:2年間
  • 受け終わったあとの期間:30日間

通達を確認しましょう。

・訓練等の期間中に病気その他の理由により所定の訓練等を受けることができず、所定の訓練等の計画に基づく基準時間数に不足を生じたために所定の訓練等の終了の日に訓練等を修了することができない場合において、当該訓練等の終了の日を超えて行われる補習を受ける者に対しては延長給付は行わない(行政手引52352)。

個別延長給付

特定理由資格者(厚生労働省令で定める者に限る。)又は特定受給資格者であって、次の各号のいずれかに該当し、かつ、公共職業安定所長が厚生労働省令で定める基準(次項において「指導基準」という。)に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、第4項の規定による期間内の失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。)について、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができる(24条の2第1項)。
① 心身の状況が厚生労働省令で定める基準に該当する者
② 雇用されていた適用事業が激甚災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は激甚災害法の規定により離職したものとみなされた者であって、政令で定める基準に照らして職業に就くことが特に困難であると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住する者
③ 雇用されていた適用事業が激甚災害その他の災害(厚生労働省令で定める災害に限る。)の被害を受けたため離職を余儀なくされた者又は激甚災害法の規定により離職したものとみなされた者(前号に該当する者を除く。)

延長給付のふたつめは個別延長給付です。特定理由資格者又は特定受給資格者であって、各号のいずれかに該当し、かつ、指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができます。

まず、厚生労働省令で定める特定理由資格者は、「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと」を理由により離職した者に限られます(規則38条の2)。特定理由資格者のもうひとつの理由である「正当な理由」は対象外である点をおさえましょう。

1号の「心身の状況が厚生労働省令で定める基準」について、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)がある者が該当します(規則38条の4)。

2号は、適用事業が激甚災害の被害を受けたため離職を余儀なくされた者などが該当します。

3号は、激甚災害のほか、災害救助法に基づく救助が行われた災害やこれらに準ずる災害として職業安定局長が定める災害です(規則38条の5)。条文が読みにくいですが、「(前号に該当する者を除く。)」となっているので、まず、激甚災害に該当する方は、2号の対象になります。そして、2号までならない方が3号の対象になるイメージを持っておきましょう。これが、延長日数に影響します。

就職が困難な受給資格者であって、前項第2号に該当し、かつ、公共職業安定所長が指導基準に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、第4項の規定による期間内の失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。)について、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができる(24条の2第2項)。

就職困難者についても同様の規定がされています。

前2項の場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、次の各号に掲げる受給資格者の区分に応じ、当該各号に定める日数を限度とするものとする(24条の2第3項)。

①第1項(第1号及び第3号に限る。)又は前項に該当する受給資格者 60日(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては、30日)
②第1項(第2号に限る。)に該当する受給資格者 120日(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては、90日)

ここは少し難しく感じるので、整理しましょう。また、令和6年度の本試験の選択式で問われた部分でもあるので、このレベル感でおさえておくことが重要といえます。

まず、個別延長給付は、原則として「60日」であることをおさえましょう。ただ、2号の激甚災害については、程度が重いので、2倍の「120日」となっています。

そして、ややこしく見えるのが括弧書き「(所定給付日数が第23条第1項第2号イ又は第3号イに該当する受給資格者にあっては)」です。23条1項2号イは、45歳以上60歳未満で算定基礎期間が20年以上ある特定受給資格者で、所定給付日数は330日となります。また、23条1項3号イは、35歳以上45歳未満で算定基礎期間が20年以上ある特定受給資格者で、所定給付日数は270日となります。35歳以上45歳未満、45歳以上60歳未満はもっとも長い所定給付日数が設定されているため、その中でもっとも長い20年以上あるものについては、30日分減らしています。括弧書きまではおさえる必要性は高くありませんが、原則60日、激甚災害の場合は120日の部分は、理解記憶できるようにしておきましょう。

第1項又は第2項の規定による基本手当の支給(以下「個別延長給付」という。)を受ける受給資格者の受給期間は、第20条第1項及び第2項[支給の期間及び日数]の規定にかかわらず、これらの規定による期間に前項に規定する日数を加えた期間とする(24条の2第4項)。

延長した分の求職者給付を受けられるようにするため、延長分の日数を加えた期間が支給の期間となります。

広域延長給付

厚生労働大臣は、その地域における雇用に関する状況等から判断して、その地域内に居住する求職者がその地域において職業に就くことが困難であると認める地域について、求職者が他の地域において職業に就くことを促進するための計画を作成し、関係都道府県労働局長及び公共職業安定所長に、当該計画に基づく広範囲の地域にわたる職業紹介活動(以下この条において「広域職業紹介活動」という。)を行わせた場合において、当該広域職業紹介活動に係る地域について、政令で定める基準[その地域における基本手当の初回受給率が全国平均の初回受給率の100分の200以上となるに至り、かつ、その状態が継続すると認められること]に照らして必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、公共職業安定所長が当該地域に係る当該広域職業紹介活動により職業のあつせんを受けることが適当であると認定する受給資格者について、第4項の規定による期間内の失業している日について、所定給付日数を超えて基本手当を支給する措置を決定することができる。この場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、政令で定める日数[90日]を限度とするものとする(25条1項、政令6条)。
前項の措置に基づく基本手当の支給(以下「広域延長給付」という。)を受けることができる者が厚生労働大臣の指定する地域に住所又は居所を変更した場合には、引き続き当該措置に基づき基本手当を支給することができる(25条2項)。
広域延長給付を受ける受給資格者の受給期間は、第20条第1項及び第2項の規定にかかわらず、これらの規定による期間に第1項後段に規定する政令で定める日数を加えた期間とする(25条4項)。

続いて、広域延長給付です。特に理解が難しいところはないと思いますが、必要があると認めるときは、広域延長給付が認められています。

全国延長給付

厚生労働大臣は、失業の状況が全国的に著しく悪化し政令で定める基準に該当するに至った場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、第3項の規定による期間内の失業している日について、所定給付日数を超えて受給資格者に基本手当を支給する措置を決定することができる。この場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、政令で定める日数[90日]を限度とするものとする(27条1項、政令7条)。
厚生労働大臣は、前項の措置を決定した後において、政令で定める基準に照らして必要があると認めるときは、同項の規定により指定した期間(その期間がこの項の規定により延長されたときは、その延長された期間)を延長することができる(27条2項)。
第1項の措置に基づく基本手当の支給(以下「全国延長給付」という。)を受ける受給資格者の受給期間は、第20条第1項及び第2項の規定にかかわらず、これらの規定による期間に第1項後段に規定する政令で定める日数を加えた期間とする(27条3項)。

最後は、全国延長給付です。

「失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準」は、連続する4月間(以下この項において「基準期間」という。)の失業の状況が次に掲げる状態にあり、かつ、これらの状態が継続すると認められることとする(政令7条)。

① 基準期間内の各月における基本手当の支給を受けた受給資格者の数を、当該受給資格者の数に当該各月の末日における一般被保険者の数を加えた数で除して得た率が、それぞれ100分の4を超えること。
② 基準期間内の各月における初回受給者の数を、当該各月の末日における一般被保険者の数で除して得た率が、基準期間において低下する傾向にないこと。

簡単にいうと、全被保険者の4パーセントを超えた人数が基本手当の支給を受け、新規受給者の数の割合が低下する傾向にない、つまり失業している人の割合が高止まりしている状態が継続すると認められるということです。

延長給付に関する調整

延長給付に関する調整は、条文で規定されていますが、読みにくい部分なのでまとめます(28条1項、28条2項)。

個別延長給付>広域延長給付>全国延長給付>訓練延長給付

延長給付は、上記のような優先順位があります。たとえば、広域延長給付を受給している者は、広域延長給付が終わった後でなければ、全国延長給付、訓練延長給付は行われません。そして、個別延長給付が行われることとなったときは、個別延長給付がされ、広域延長給付はされません。

給付日数を延長した場合の給付制限

訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付又は全国延長給付を受けている受給資格者が、正当な理由がなく公共職業安定所の紹介する職業に就くこと公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けること又は厚生労働大臣の定める基準に従って公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日以後基本手当を支給しない。ただし、その者が新たに受給資格を取得したときは、この限りでない(29条1項)。

延長給付は、給付日数を延長する必要があるから延長しています。そのため、その趣旨を没却するようなことをした場合、その拒んだ日以後基本手当を支給しません。ただし、その者が新たに受給資格を取得したときは、支給されます。その人には二度と支給しないというわけではなく、その資格については支給しませんということです。

まとめ

延長給付についてみてきました。

延長給付は、訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付の4つに分けられます。これらは、①公共職業訓練を受けることを考慮した訓練延長給付、②個別の事情を考慮した個別延長給付、③地域を考慮した広域延長給付と全国延長給付の3つに分けると理解記憶しやすくなります。

まず、訓練延長給付は、訓練前(90日)、訓練中(2年)、訓練後(30日)に分けます。

次に、個別延長給付は、60日が原則、激甚災害の場合は2倍の120日になりました。もっとも、所定給付日数が長い者に関しては30日分調整される点に注意しましょう。

広域延長給付と全国延長給付といった地域で区切られているものは90日です。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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