【労働者災害補償保険法】心理的負荷による精神障害(9号)のまとめ

労働者災害補償保険法
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ここでは、労働者災害補償保険法の業務上の疾病から心理的負荷による精神障害について学習します。

心理的負荷による精神障害の認定は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて行われます。それでは、認定基準全体をみてみましょう。

労働者災害補償保険法>通則>業務災害>業務上の疾病>心理的負荷による精神障害

第1 対象疾病

本認定基準で対象とする疾病(以下「対象疾病」という。)は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(以下「ICD-10」という。)第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを除く。

 

第2 認定要件

次の1、2及び3のいずれの要件も満たす対象疾病は、業務上の疾病として取り扱う。

1 対象疾病を発病していること。
2 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

3について、1、2の要件を満たしていても、業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したと認められるときは、業務起因性が否定されます。

第3 認定要件に関する基本的な考え方

対象疾病の発病に至る原因の考え方は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こり脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレス-脆弱性理論」に依拠している。

このため、心理的負荷による精神障害の業務起因性を判断する要件としては、対象疾病が発病しており、当該対象疾病の発病の前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められることを掲げている。さらに、これらの要件が認められた場合であっても、明らかに業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には、業務起因性が否定されるため、認定要件を前記第2のとおり定めた。

第4 認定要件の具体的判断

1 発病等の判断

※省略

2 業務による心理的負荷の強度の判断

(1) 業務による強い心理的負荷の有無の判断

認定要件のうち「2 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」(以下「認定要件2」という。)とは、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による出来事があり、当該出来事及びその後の状況による心理的負荷が、客観的に対象疾病を発病させるおそれのある強い心理的負荷であると認められることをいう。

心理的負荷の評価に当たっては、発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に把握し、その心理的負荷の強度を判断する。

その際、精神障害を発病した労働者が、その出来事及び出来事後の状況を主観的にどう受け止めたかによって評価するのではなく、同じ事態に遭遇した場合、同種の労働者が一般的にその出来事及び出来事後の状況をどう受け止めるかという観点から評価する。この「同種の労働者」は、精神障害を発病した労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいう。

その上で、後記(2)及び(3)により、心理的負荷の全体を総合的に評価して「」と判断される場合には、認定要件2を満たすものとする。

(2) 業務による心理的負荷評価表

業務による心理的負荷の強度の判断に当たっては、別表1「業務による心理的負荷評価表」(以下「別表1」という。)を指標として、前記(1)により把握した出来事による心理的負荷の強度を、次のとおり「強」、「中」、「弱」の三段階に区分する。

本試験では、「強」、「中」、「弱」の三段階に区分する点について問われています。

認定基準においては、業務による心理的負荷の強度の判断に当たっては、精神障害発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務によるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に把握し、それらによる心理的負荷の強度はどの程度であるかについて、「業務による心理的負荷評価表」を指標として「強」、「弱」の二段階に区分することとされている。(平30-1-D)

正誤:☓

なお、別表1の詳細については割愛します。詳しく知りたい方は、認定基準のPDFをご参照ください。

ア 特別な出来事の評価
発病前おおむね6か月の間に、別表1の「特別な出来事」に該当する業務による出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価を「」と判断する。

イ 特別な出来事以外の評価
「特別な出来事」以外の出来事については、当該出来事を別表1の「具体的出来事」のいずれに該当するかを判断し、合致しない場合にも近い「具体的出来事」に当てはめ、総合評価を行う。

該当する「具体的出来事」に示された具体例の内容に、認定した出来事及び出来事後の状況についての事実関係が合致する場合には、その強度で評価する。事実関係が具体例に合致しない場合には、「心理的負荷の総合評価の視点」及び「総合評価の留意事項」に基づき、具体例も参考としつつ個々の事案ごとに評価する。

なお、具体例はあくまでも例示であるので、具体例の「強」の欄で示したもの以外は「強」と判断しないというものではない。

ウ 心理的負荷の総合評価の視点及び具体例

※省略

エ 総合評価の留意事項

※省略

オ 長時間労働等の心理的負荷の評価

別表1には、時間外労働時間数(週40時間を超えて労働した時間数をいう。以下同じ。)等を指標とする具体例等を次のとおり示しているので、長時間労働等が認められる場合にはこれにより判断する。

カ ハラスメント等に関する心理的負荷の評価

ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、繰り返される出来事を一体のものとして評価し、それが継続する状況は、心理的負荷が強まるものと評価する。

 

(3) 複数の出来事の評価

対象疾病の発病に関与する業務による出来事が複数ある場合には、次のように業務による心理的負荷の全体を総合的に評価する。

ア 前記(2)によりそれぞれの具体的出来事について総合評価を行い、いずれかの具体的出来事によって「強」の判断が可能な場合は、業務による心理的負荷を「強」と判断する。

イ いずれの出来事でも単独では「強」と評価できない場合には、それらの複数の出来事について、関連して生じているのか、関連なく生じているのかを判断した上で、次により心理的負荷の全体を総合的に判断する。

(ア) 出来事が関連して生じている場合には、その全体を一つの出来事として評価することとし、原則として最初の出来事を具体的出来事として別表1に当てはめ、関連して生じた各出来事は出来事後の状況とみなす方法により、その全体について総合的な評価を行う。

具体的には、「中」である出来事があり、それに関連する別の出来事(それ単独では「中」の評価)が生じた場合には、後発の出来事は先発の出来事の出来事後の状況とみなし、当該後発の出来事の内容、程度により「強」又は「中」として全体を総合的に評価する。

(イ) ある出来事に関連せずに他の出来事が生じている場合であって、単独の出来事の評価が「中」と評価する出来事が複数生じているときには、それらの出来事が生じた時期の近接の程度、各出来事と発病との時間的な近接の程度、各出来事の継続期間、各出来事の内容、出来事の数等によって、総合的な評価が「強」となる場合もあり得ることを踏まえつつ、事案に応じて心理的負荷の全体を評価する。この場合、全体の総合的な評価は、「強」又は「中」となる。

一方、それぞれの出来事が完結して落ち着いた状況となった後に次の出来事が生じているときには、原則として、全体の総合的な評価はそれぞれの出来事の評価と同一になると考えられる。

また、単独の出来事の心理的負荷が「中」である出来事が一つあるほかには「弱」の出来事しかない場合には原則として全体の総合的な評価も「中」であり、「弱」の出来事が複数生じている場合には原則として全体の総合的な評価も「弱」となる。

(4) 評価期間の留意事項

認定要件2のとおり、業務による心理的負荷の評価期間は発病前おおむね6か月であるが、当該期間における心理的負荷を的確に評価するため、次の事項に留意する。

ア ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、前記(2)カのとおり、繰り返される出来事を一体のものとして評価することとなるので、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前おおむね6か月の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とすること。

イ 出来事の起点が発病の6か月より前であっても、その出来事(出来事後の状況)が継続している場合にあっては、発病前おおむね6か月の間における状況や対応について評価の対象とすること。例えば、業務上の傷病により長期療養中の場合、その傷病の発生は発病の6か月より前であっても、当該傷病により発病前おおむね6か月の間に生じている強い苦痛や社会復帰が困難な状況等を出来事として評価すること。

3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因による発病でないことの判断

(1) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因による発病でないことの判断

認定要件のうち、「3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」とは、次のア又はイの場合をいう。
ア 業務以外の心理的負荷及び個体側要因が確認できない場合
イ 業務以外の心理的負荷又は個体側要因は認められるものの、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが医学的に明らかであると判断できない場合

(2) 業務以外の心理的負荷の評価

業務以外の心理的負荷の評価については、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務以外の出来事の有無を確認し、出来事が一つ以上確認できた場合は、それらの出来事の心理的負荷の強度について、別表2「業務以外の心理的負荷評価表」を指標として、心理的負荷の強度を「Ⅲ」、「Ⅱ」又は「Ⅰ」に区分する。

別表2について、詳細は割愛します。

(3) 個体側要因の評価

個体側要因とは、個人に内在している脆弱性・反応性であるが、既往の精神障害や現在治療中の精神障害、アルコール依存状況等の存在が明らかな場合にその内容等を調査する。

業務による強い心理的負荷が認められる事案について、重度のアルコール依存状況がある等の顕著な個体側要因がある場合には、それが発病の主因であると判断することの医学的な妥当性を慎重に検討し、前記(1)イに該当するか否かを判断する。

ここまでが9号の心理的負荷による精神障害についてです。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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