【厚生年金保険法】障害厚生年金及び障害手当金について、併給の調整などのまとめ

厚生年金保険法
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厚生年金保険法の保険給付から障害厚生年金及び障害手当金について学習します。老齢と遺族に関しては年金だけですが、障害に関しては年金と手当金(一時金)があることに注意しましょう。

厚生年金保険法>保険給付>障害厚生年金及び障害手当金

障害厚生年金の受給権者

障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であった者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない(47条1項)。

障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、各級の障害の状態は、政令で定める(47条2項)。

障害厚生年金は、傷病につき初診日において被保険者であった者が、初診日から起算して1年6月を経過した日において、1級、2級、3級に該当する程度の障害の状態にある場合に、支給します。

基本的な考え方は国民年金法の障害基礎年金と同じです。

以下、障害基礎年金と異なる点について解説します。まず、障害厚生年金は、初診日において被保険者であった者が対象です。初診日において、被保険者ではなかった者は対象となりません。障害基礎年金は、初診日の時点で、「被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満である」(国民年金法30条1項2号)者も対象であったことと比較しましょう。次に、障害等級は、1級、2級、3級です。障害基礎年金が1級、2級だったことと比較しましょう。

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であった者であって、障害等級に該当する程度の障害の状態になかったものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に障害厚生年金の支給を請求することができる(47条の2第1項)。

前条第1項ただし書の規定は、前項の場合に準用する(47条の2第2項)。

国民年金法の事後重症と同様の規定です。障害厚生年金の事後重症も、請求が受給権発生の要件となる点が共通しています。

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(以下この条において「基準傷病」という。)に係る初診日において被保険者であった者であって、基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準傷病による障害(以下この条において「基準障害」という。)と他の障害とを併合して障害等級の1級又は2級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったとき(基準傷病の初診日が、基準傷病以外の傷病に係る初診日以降であるときに限る。)は、その者に基準障害と他の障害とを併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する(47条の3第1項)。

第1項の障害基礎年金の支給は、当該障害基礎年金の請求があった月の翌月から始めるものとする(47条の3第3項)。

国民年金法の基準障害と同様の規定です。気をつけたいのは、基準障害の場合、基準障害と他の障害とを併合して1級または2級に該当する障害の状態に該当するに至ったときが対象となる点です。基準障害の場合、併せて3級は対象外となる点に注意しましょう。

障害厚生年金の併給の調整

障害厚生年金(その権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級又は2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く。以下この条、次条、第52条第4項、第52条の2及び第54条第2項ただし書において同じ。)の受給権者に対して更に障害厚生年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する(48条1項)。

障害厚生年金の受給権者が前項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金の受給権を取得したときは、従前の障害厚生年金の受給権は、消滅する(48条2項)。

併合も、3級は除かれています。

期間を定めて支給を停止されている障害厚生年金の受給権者に対して更に障害厚生年金を支給すべき事由が生じたときは、前条第1項の規定により支給する前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金は、従前の障害厚生年金の支給を停止すべきであった期間、その支給を停止するものとし、その間、その者に従前の障害を併合しない障害の程度による障害厚生年金を支給する(49条1項)。

障害厚生年金の受給権者が更に障害厚生年金の受給権を取得した場合において、新たに取得した障害厚生年金がその支給を停止すべきものであるときは、その停止すべき期間、その者に対して従前の障害厚生年金を支給する(49条2項)。

支給を停止されている場合の規定です。

障害厚生年金の額

障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の額の例により計算した額とする。この場合において、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする(50条1項)。

障害の程度が障害等級の1級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、前項の規定にかかわらず、同項に定める額の100分の125に相当する額とする(50条2項)。

障害厚生年金の給付事由となった障害について国民年金法による障害基礎年金を受けることができない場合において、障害厚生年金の額が障害基礎年金の額に4分の3を乗じて得た額(その額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)に満たないときは、当該額をこれらの項に定める額とする(50条3項)。

併給の調整による障害厚生年金の額は、その額が消滅した障害厚生年金の額より低額であるときは、従前の障害厚生年金の額に相当する額とする(50条4項)。

障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の額になります。この場合、被保険者期間の月数が300に満たないときは、300として計算します。300というのは、25年分にあたります。

また、1級が100分の125になる点は、障害基礎年金と同じです。

3項について、障害基礎年金を受けることができない場合、障害厚生年金の額が障害基礎年金の額(780,900円に改定率を乗じて得た額)の4分の3に満たないときは、この4分の3の額になります。1項で、300月分で計算しても、そもそものお給料に相当する額が少ない場合が考えられます。そこで、最低でも、障害基礎年金の4分の3は保障されるようになっています。

障害の程度が障害等級の1級又は2級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、受給権者によって生計を維持しているその者の65歳未満の配偶者があるときは、同条に定める額に加給年金額を加算した額とする(50条の2第1項)。

加給年金額は、224,700円に改定率を乗じて得た額(その額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)とする(50条の2第2項)。

受給権者がその権利を取得した日の翌日以後にその者によって生計を維持しているその者の65歳未満の配偶者を有するに至ったことにより加給年金額を加算することとなったときは、当該配偶者を有するに至った日の属する月の翌月から、障害厚生年金の額を改定する(50条の2第3項)。

1級または2級に該当する場合、65歳未満の配偶者があるときは、224,700円に改定率を乗じて得た額が加給年金額として支給されます。障害基礎年金では、子に対して加算されていた点を比較しましょう。

また、障害厚生年金の受給権を取得した日の翌日以後に生計を維持している65歳未満の配偶者を有するに至ったときは、翌月から、障害厚生年金の額が改定されます。障害基礎年金の子の加算のときもそうでしたが、障害年金は若いときに受給する場合もあるため、配偶者ができたり子が増えたりしたときは改定されます。一方、老齢厚生年金は、「受給権者がその権利を取得した当時」に生計を維持していた配偶者又は子があるときに加給年金額が加算されるのであって、その後に配偶者や子ができても加算されなかった点と比較しておきましょう。

障害厚生年金の額については、当該障害厚生年金の支給事由となった障害に係る障害認定日の属する月後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としない(51条)。

障害厚生年金の額は、障害認定日の属する月までの期間で決めるということです。

実施機関は、障害厚生年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、その程度に応じて、障害厚生年金の額を改定することができる(52条1項)。

障害厚生年金の受給権者は、実施機関に対し、障害の程度が増進したことによる障害厚生年金の額の改定を請求することができる(52条2項)。

前項の請求は、障害厚生年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該障害厚生年金の受給権を取得した日又は実施機関の診査を受けた日から起算して1年を経過した日後でなければ行うことができない(52条3項)。

障害厚生年金の受給権者であって、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る当該初診日において被保険者であったものが、当該傷病により障害(障害等級の1級又は2級に該当しない程度のものに限る。以下この項及び同条第2項ただし書において「その他障害」という。)の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害厚生年金の支給事由となった障害とその他障害とを併合した障害の程度が当該障害厚生年金の支給事由となった障害の程度より増進したときは、その者は、実施機関に対し、その期間内に障害厚生年金の額の改定を請求することができる(52条4項)。

障害厚生年金の額が改定されたときは、改定後の額による障害厚生年金の支給は、改定が行われた月の翌月から始めるものとする(52条6項)。

障害厚生年金の額の改定は、65歳以上の者であって、かつ、障害厚生年金の受給権者(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給権を有しないものに限る。)については、適用しない(52条7項)。

障害厚生年金の改定について、基本的に障害基礎年金と同じように考えることができます。

4項について、ここでも3級が除かれている点に注意しましょう。

7項について、ここがわかりにくいと思います。まず、カッコ書きの中の部分を考えます。「当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給権を有しない」というのは、これまで一度も1級または2級に該当したことがないということです。

ここで、国民年金法をおさらいしましょう。

「障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。」(国民年金法36条2項本文)

障害基礎年金は、受給権者が1級または2級に該当しなくなったときは、支給を停止します。失権するわけではない点に注意しましょう(受給権はある)。つまり、障害基礎年金の受給権を有しないというのは、これまで同一の支給事由で1級または2級に該当したことがないという意味になります。この場合、65歳以上、かつ、障害厚生年金の受給権者については、改定しないということです。障害の程度が増進した原因が、加齢によるものか判断するのが難しいと考えるとわかると思います。

もっとも、これまで同一の支給事由で1級または2級に該当したことがある方は、障害の程度が増進した原因が障害である可能性が高いため、65歳以上の者であっても、障害厚生年金の額の改定を請求することができるとされています。

障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金の受給権を有するに至ったときは、当該障害厚生年金の支給事由となった障害と当該障害基礎年金の支給事由となった障害とを併合した障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定する(52条の2第1項)。

障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金の受給権を有する場合において、併合された障害の程度が当該障害基礎年金の支給事由となった障害の程度より増進したときは、これらの規定により併合された障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定する(52条の2第2項)。

1項について、「障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金の受給権を有するに至ったとき」というのは、3級から2級になったときということです。このときは、当該障害厚生年金の支給事由となった障害(3級)と当該障害基礎年金の支給事由となった障害(1級または2級)とを併合した障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定します。

2項について、「障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金の受給権を有する場合」というのは、2級ということです(次に増進して改定されることが前提のため1級は該当しない)。そして、併合された障害の程度が当該障害基礎年金の支給事由となった障害の程度(2級)より増進したときは、併合された障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定します。

失権

障害厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、消滅する(53条各号)。

① 死亡したとき。
② 障害等級に該当する程度の障害の状態にない者が、65歳に達したとき。ただし、65歳に達した日において、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過していないときを除く。
③ 障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過したとき。ただし、3年を経過した日において、当該受給権者が65歳未満であるときを除く。

障害基礎年金の失権と同じように考えることができます。2号と3号について、条文構造は障害基礎年金のところで解説していますが、(ⅰ)障害等級に該当する程度の障害の状態にない、(ⅱ)65歳に達した、(ⅲ)3年を経過した、この3点がそろったときに失権します。

支給停止

障害厚生年金は、その受給権者が当該傷病について労働基準法の規定による障害補償を受ける権利を取得したときは、6年間その支給を停止する(54条1項)。

障害厚生年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間その支給を停止する。ただし、その支給を停止された障害厚生年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であった場合であって、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害厚生年金の支給事由となった障害とその他障害とを併合した障害の程度が障害等級の1級又は2級に該当するに至ったときは、この限りでない(54条2項)。

1項について、障害基礎年金と同じです。

2項について、基本的には障害基礎年金と同じです。ただし書きについて、原則として、障害の状態に該当しなくなったときは、支給を停止しますが、併合して1級または2級に該当するに至ったときは、この限りでない、つまり、支給は停止されません。ここでも併合して3級はない点に注意しましょう。

障害厚生年金は、単体で3級は認められますが、併合して3級は認められない点をおさえると、理解記憶しやすいと思います。

障害手当金の受給権者

障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であった者が、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治った日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合に、その者に支給する(55条1項)。

障害の程度を定めるべき日において次の各号のいずれかに該当する者には、障害手当金を支給しない(56条各)。

① 年金たる保険給付の受給権者(最後に障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害厚生年金の受給権者を除く。)
② 国民年金法による年金たる給付の受給権者(最後に障害状態に該当しなくなった日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金の受給権者その他の政令で定める者を除く。)
③ 当該傷病について国家公務員災害補償法等による障害を支給事由とする給付を受ける権利を有する者

障害手当金は、障害厚生年金がもらえない程度の障害の状態にある場合に、支給します。このことから、年金がもらえる人には、支給しません。

1号と2号のカッコ書きについて、障害手当金は、年金の受給権者には支給されませんが、障害の状態に該当しなくなった日から起算して3年を経過した者は除かれます。前述のように、障害の状態にないものは支給が停止されますが、失権したわけではないので受給権者には変わりません。もっとも、この方は、3年間は年金をもらっていないため、障害手当金を支給します。

障害手当金の額

障害手当金の額は、障害厚生年金の額の100分の200に相当する額とする。ただし、その額が障害基礎年金の額に4分の3を乗じて得た額に2を乗じて得た額に満たないときは、当該額とする(57条)。

障害手当金の額は、障害厚生年金の100分の200に相当する額、つまり2倍です。ただし、その額が、障害基礎年金の額に4分の3を乗じて得た額に2を乗じて得た額に満たないときは、その額とします。障害基礎年金の4分の3というのは、最低保障の額でした。障害手当金は、障害厚生年金の2倍の額なので、障害基礎年金の4分の3を2倍した額を最低保障の額としています。

 

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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