国民年金法の給付から遺族基礎年金について学習します。老齢基礎年金、障害基礎年金と同じように支給要件、年金額、失権を中心におさえていきましょう。
支給要件
① 被保険者が、死亡したとき。
② 被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であるものが、死亡したとき。
③ 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)が、死亡したとき。
④ 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。
遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者または子に支給します。ただし書きの保険料納付要件について、1号と2号は障害基礎年金と同じように考えることができます。一方、3号と 4号に関しては、保険料納付要件がありません。
3号と4号は、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者について定めています。そのうち、3号は老齢基礎年金の受給権者、4号はまだ受給権者にはなっていない者、45歳より上の方を想定しましょう。これらの方は、これまでに25年以上年金を納付してきた実績があるため、3分の2を満たしていなくても遺族基礎年金を支給しましょうということです。もう少しいうと、国民年金を納付する40年の3分の2は、約26.7年です。25年という数字は、これを目安に設定していると考えることができます。
遺族の範囲
遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者又は子(以下単に「配偶者」又は「子」という。)であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする(37条の2第1項各号)。
① 配偶者については、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。
② 子については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。
被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が生まれたときは、将来に向かって、その子は、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していたものとみなし、配偶者は、その者の死亡の当時その子と生計を同じくしていたものとみなす(37条の2第2項)。
遺族基礎年金を受けることができる配偶者または子は、被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していることが必要です。社労士試験では、「生計を同一」と「生計を維持」が出てくるので、迷ってしまうことがあると思います。遺族の生活を維持するために支給するものは、生計を維持という要件が求められます。一方、亡くなった方に対する未支給年金などは、遺族等が請求権を行使するだけなので、生計を維持は求められず、生計を同一という要件が求められます。
1号について、配偶者は、子と生計を同じくすることが必要です。つまり、配偶者だけでは遺族基礎年金は受けることができないということです。障害基礎年金も子の加算がありましたが、国民年金は、自分の力では境遇を変えることができない子を救済するというイメージを持っておきましょう。なお、配偶者に関しては、厚生年金のところで学習します。
2号について、子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間、または、障害等級に該当する障害の状態である20歳未満、かつ、婚姻をしていないことです。婚姻をしているということは、親から独立して生計を立てていると考えることができるからです。
死亡の当時、胎児であった子が生まれたときは、将来に向かって、生計を維持していたものとみなします。つまり、これで遺族基礎年金の支給対象になるということです。
生計維持認定対象者に係る収入に関する認定に当たっては、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満となると認められる場合、厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする(平23.3.23年発0323第1号)。
年金額
遺族基礎年金の額は、78,0900円に改定率を乗じて得た額です。障害基礎年金と同じく、保険料納付済期間の月数は考慮されません。反対に言うと、年金額に保険料納付済期間が反映されるのは、老齢基礎年金のみということです。
配偶者に支給する遺族基礎年金の額は、同条に定める額に配偶者が遺族基礎年金の受給権を取得した当時遺族の要件に該当し、かつ、その者と生計を同じくした子につきそれぞれ74,900円に改定率を乗じて得た額(そのうち2人までについては、それぞれ224,700円に改定率を乗じて得た額とし、それらの額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上百円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)を加算した額とする(39条1項)。
配偶者が遺族基礎年金の受給権を取得した当時胎児であった子が生まれたときは、その子は、配偶者がその権利を取得した当時遺族の範囲の要件に該当し、かつ、その者と生計を同じくした子とみなし、その生まれた日の属する月の翌月から、遺族基礎年金の額を改定する(39条2項)。
1人あたり74,900円に改定率を乗じて得た額が、加算されます。また、障害基礎年金と同じく、2人までは224,700円になります。胎児であった子が生まれたときは、翌月から遺族基礎年金の額を改定します。
配偶者に支給する遺族基礎年金については、子が2人以上ある場合であって、その子のうち1人を除いた子の1人又は2人以上が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、その該当するに至った日の属する月の翌月から、その該当するに至った子の数に応じて、年金額を改定する(39条3項)。
① 死亡したとき。
② 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。以下同じ。)をしたとき。
③ 配偶者以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)となったとき。
④ 離縁によって、死亡した被保険者又は被保険者であった者の子でなくなったとき。
⑤ 配偶者と生計を同じくしなくなったとき。
⑥ 18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、障害等級に該当する障害の状態にあるときを除く。
⑦ 障害等級に該当する障害の状態にある子について、その事情がやんだとき。ただし、その子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。
⑧ 20歳に達したとき。
子に、死亡や婚姻などの事由が発生したときは、年金額を改定します。これも各号を暗記するのは大変なので、基本の支給要件を理解記憶するようにしましょう。
子に支給する遺族基礎年金の額は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について遺族基礎年金の受給権を取得した子が2人以上あるときは、同条に定める額にその子のうち1人を除いた子につきそれぞれ74,900円に改定率を乗じて得た額(そのうち1人については、224,700円に改定率を乗じて得た額とし、それらの額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)を加算した額を、その子の数で除して得た額とする(39条の2第1項)。
前項の場合において、遺族基礎年金の受給権を有する子の数に増減を生じたときは、増減を生じた日の属する月の翌月から、遺族基礎年金の額を改定する(39条の2第2項)。
今度は、子に支給する遺族基礎年金の額です。配偶者がいない、つまり、子だけになってしまった場合です。子が1人のときは、原則通り、78,0900円が支給されます。本条で規定しているのは、「遺族基礎年金の受給権を取得した子が2人以上あるとき」です。このとき、1人目は、78,0900円が支給されます。そして、その子のうち1人を除いた子、つまり78,0900円が支給された子を除いた子につきそれぞれ74,900円に改定率を乗じて得た額が加算されます。
カッコ書きについて、「そのうち1人については、224,700円に改定率を乗じて得た額」とします。先ほど、配偶者のときは、「そのうち2人について」であった点と比較しておきましょう。たとえば、子3人が遺族基礎年金の受給権者の場合、1人目は78,0900円、2人目は224,700円、3人目は74,900円になります。子だけの場合、自分自身も1人目とカウントされると考えると理解できると思います。
失権
遺族基礎年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、消滅する(40条1項各号)。
① 死亡したとき。
② 婚姻をしたとき。
③ 養子となったとき(直系血族又は直系姻族の養子となったときを除く。)。
遺族基礎年金の受給権は、受給権者が死亡や婚姻をしたときは、消滅します。これも失権を覚えるというより、受給要件を理解記憶するようにしましょう。婚姻をすれば、生計維持状態がなくなる、よって、遺族基礎年金の受給権が消滅するといった具合です。
遺族基礎年金は、配偶者のみの場合は支給されません。そのため、子のすべてが消滅事由に該当するに至ったときは、消滅します。
子の有する遺族基礎年金の受給権は、第1項の規定によって消滅するほか、子が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、消滅する(40条3項各号)。
① 離縁によって、死亡した被保険者又は被保険者であった者の子でなくなったとき。
② 18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、障害等級に該当する障害の状態にあるときを除く。
③ 障害等級に該当する障害の状態にある子について、その事情がやんだとき。ただし、その子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。
④ 20歳に達したとき。
子についても、個別に覚えるのではなく、受給要件をおさえるようにしましょう。
支給停止
遺族基礎年金は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から6年間、その支給を停止する(41条1項)。
子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき(配偶者に対する遺族基礎年金がその支給を停止されているときを除く。)、又は生計を同じくするその子の父若しくは母があるときは、その間、その支給を停止する(41条2項)。
2項について、子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき、生計を同じくするその子の父または母があるときは、支給を停止します。前段は、配偶者が遺族基礎年金を受給するので、子としては支給が停止されるということです。後段は、生計を同じくする父または母があるときは、支給を停止するというものです。少しわかりにくいですが、両親が離婚後、子は、母と一緒に生活していた。その後、母が亡くなって、父と生活をするようになったという場合が考えられます。遺族基礎年金は、遺族の生活を維持するために支給されるものなので、生活が維持できるのであれば、その間は支給されないという視点を持つと理解しやすいと思います。
配偶者に対する遺族基礎年金は、その者の所在が1年以上明らかでないときは、遺族基礎年金の受給権を有する子の申請によって、その所在が明らかでなくなった時に遡って、その支給を停止する(41条の2第1項)。
配偶者は、いつでも、支給の停止の解除を申請することができる(41条の2第2項)。
遺族基礎年金の受給権を有する子が2人以上ある場合において、その子のうち1人以上の子の所在が1年以上明らかでないときは、その子に対する遺族基礎年金は、他の子の申請によって、その所在が明らかでなくなった時にさかのぼって、その支給を停止する(42条1項)。
遺族基礎年金の支給を停止された子は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる(42条2項)。
41条の2は配偶者、42条は子について規定されていますが、所在が1年以上明らかでないときは、さかのぼって支給を停止するという点は、同じです。