【労働者災害補償保険法】費用の負担について、療養給付の200円の徴収などのまとめ

労働者災害補償保険法
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労働者災害補償保険法の費用の負担について解説します。

・労働者災害補償保険事業に要する費用にあてるため政府が徴収する保険料については、徴収法の定めるところによる(30条)。

→徴収法については、この次の雇用保険法のあとに学習します。

・政府は、次の各号のいずれかに該当する事故について保険給付を行ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、業務災害に関する保険給付にあっては労働基準法の規定による災害補償の価額の限度又は船員法の規定による災害補償のうち労働基準法の規定による災害補償に相当する災害補償の価額の限度で、複数業務要因災害に関する保険給付にあっては複数業務要因災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する同法の規定による災害補償の価額の限度で、通勤災害に関する保険給付にあっては通勤災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する同法の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部事業主から徴収することができる(31条1項1各号)。

① 事業主が故意又は重大な過失により届出であってこの保険に係る保険関係の成立に係るものをしていない期間(政府が当該事業について徴収法の規定による決定をしたときは、その決定後の期間を除く。)中に生じた事故

② 事業主が徴収法の一般保険料を納付しない期間(徴収法の督促状に指定する期限後の期間に限る。)中に生じた事故

③ 事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

→この規定は、保険給付を行ったけれど、事業主に帰責性があるため、費用の全部または一部を事業主から徴収しますというものです。1号は、故意または重大な過失により、保険関係の成立に係る届出をしていない期間に起きたものです。2号は、保険料を納付しない期間中に生じたものです。なお、督促状に関しては今の段階では少し難しいですが、「払ってください」と言われるまでに起きたものは対象外、つまり徴収されないことになっています。3号は、故意または重大な過失により業務災害の原因である事故を起こした場合です。

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未手続事業主に対する費用徴収制度の内容について、通達を確認しましょう。なお、優先度は低いので、過去問等で必要があるときに参照する程度にとどめておきましょう。

(1)故意又は重大な過失の認定基準

イ 故意の認定
法第31条第1項第1号の事業主の故意は、下記のいずれかに該当する場合に認定すること。

① 事業主が、当該事故に係る事業に関し、所轄都道府県労働局(以下「所轄局」という。)、所轄労働基準監督署(以下「所轄署」という。)又は所轄公共職業安定所(以下「所轄所」という。)から、保険関係成立届の提出ほか所定の手続をとるよう指導(未手続事業場を訪問し又は当該事業場の事業主等を呼び出す方法等により職員が直接指導するものに限る。以下「保険手続に関する指導」という。)を受けたにもかかわらず、10日以内に保険関係成立届を提出していなかった場合

② 事業主が、当該事故に係る事業に関し、厚生労働省労働基準局長の委託する労働保険適用促進業務を行う社団法人全国労働保険事務組合連合会の支部である都道府県労働保険事務組合連合会(以下「都道府県労保連」という。)又は同業務を行う都道府県労保連の会員である労働保険事務組合から、保険関係成立届の提出ほか所定の手続をとるよう勧奨(以下「加入勧奨」という。)を受けたにもかかわらず、10日以内に保険関係成立届を提出していなかった場合

ロ 重大な過失の認定

(イ) 法第31条第1項第1号の事業主の重大な過失は、事業主が、当該事故に係る事業に関し、上記イの保険手続に関する指導又は加入勧奨を受けていない場合で、かつ、徴収法第3条に規定する保険関係が成立した日(以下「保険関係成立日」という。)から1年を経過してなお保険関係成立届を提出していないときに認定すること。

(ロ) 上記(イ)の場合であっても、下記のいずれかの事情が認められるときは、事業主の重大な過失として認定しないこと。

a 事業主が、その雇用する労働者について、労働者に該当しないと誤認したために保険関係成立届を提出していなかった場合(当該労働者が取締役の地位にある等労働者性の判断が容易でなく、事業主が誤認したことについてやむを得ない事情が認められる場合に限る。)

b 事業主が、本来独立した事業として取り扱うべき出張所等について、独立した事業には該当しないと誤認したために、当該事業の保険関係について直近上位の事業等他の事業に包括して手続をとっている場合

(4) 徴収金の額等

ロ 徴収金の額は、下記のとおりとすること。

① 上記(1)イにより事業主の故意が認定される場合には、上記イの保険給付の額に100分の100を乗じて得た額

ただし、事業主が保険関係成立届の提出を行うことが出来なかったことについて、相当の事情が認められる場合は、本省あて協議を行った上で決定した額

② 上記(1)ロにより事業主の重大な過失が認定される場合には、上記イの保険給付の額に100分の40を乗じて得た額

(平17.9.22基発0922001号)

参考:労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度の強化について|厚生労働省

・政府は、療養給付を受ける労働者(厚生労働省令で定める者を除く。)から、200円を超えない範囲内で厚生労働省令で定める額[200円]を一部負担金として徴収する(31条2項本文、規則44条の2第2項)。

・厚生労働省令で定める者は、次の各号に掲げる者とする(規則44条の2第1項)。

① 第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
② 療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない
③ 同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者

→ここが少し読みにくいので補則します。まず、原則として、療養給付を受ける労働者から、200円を一部負担金として徴収します。対象が通勤災害に関する「療養給付」となっていることに注意しましょう(業務災害や複数業務要因災害ではありません)。

そして、徴収の方法は、初回の休業給付を支給するときに200円を減額した額を支給することによって徴収をします。このあたりがいまいち想像しにくいと思いますが、いわゆる労災で病院に行ったとき、患者さん(この場合は労働者)は窓口でお金を負担することはありません。そこで、200円はいつ支払えばいいかというと、初回の休業給付から天引きされる形になります。

このことから、括弧書きの「(厚生労働省令で定める者を除く。)」の部分が理解できるようになります。1号の第三者の行為によって生じた事故は、第三者が悪いので負担する必要はありません。2号は、休業給付を受けないため負担しなくていいとされています。「療養の開始後3日以内に死亡した者」がどうして負担しなくていいかというと、休業給付は「労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給する」からです(22条の2第2項、14条1項)。3号は、同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付しているため、2回目以降は徴収されません。

参考:労災補償 |厚生労働省

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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