【労働者災害補償保険法】特別加入について、対象者や給付基礎日額などのまとめ

労働者災害補償保険法
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労働者災害補償保険法の特別加入について解説します。

労災法においては、「労働者を使用する事業を適用事業」とします(3条)。しかし、この規定だと、労働者を使用しないで働いている人が業務上の事由で負傷等をしたときに保護されないという不都合が生じてしまう場合があります。そこで、労災法では、「特別加入」という制度をつくり、より広い範囲で労災をカバーできるようにしました。このイメージを持って学習していきましょう。

・次の各号に掲げる者(第2号、第4号及び第5号に掲げる者にあっては、労働者である者を除く。)の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関しては、この章に定めるところによる(33条)。

① 厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業(厚生労働省令で定める事業を除く。第7号において「特定事業」という。)の事業主で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託するものである者(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者)

② 前号の事業主が行う事業に従事する者

③ 厚生労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者

④ 前号の者が行う事業に従事する者

⑤ 厚生労働省令で定める種類の作業に従事する者

⑥ この法律の施行地外の地域のうち開発途上にある地域に対する技術協力の実施の事業を行う団体が、当該団体の業務の実施のため、当該開発途上にある地域において行われる事業に従事させるために派遣する者

⑦ この法律の施行地内において事業(事業の期間が予定される事業を除く。)を行う事業主が、この法律の施行地外の地域において行われる事業に従事させるために派遣する者(当該事業が特定事業に該当しないときは、当該事業に使用される労働者として派遣する者に限る。)

→1号について、労災法は、前述のように「労働者を使用する事業を適用事業」としていますが、一定の数以下の労働者を使用する事業に関しては、任意の適用としています。ただ、そうすると、そこで働いている人たちが労災で守られなくなってしまうので、特別加入でカバーしています。

・厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業の事業主は、常時300人(金融業若しくは保険業、不動産業又は小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人以下の労働者を使用する事業主とする(規則46条の16)。

→これらの特定事業の事業主です。なお、「労働保険事務組合」については徴収法で学習しますが、今の段階では、特定事業であって労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託しているものと考えましょう(特別加入にあたっては、労働保険事務組合の証明が必要になります)。

→2号について、1号の事業主が行う事業に従事する者も対象になります。

→3号について、自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業などで労働者を使用しないで行うことを常態とする者が対象となります(規則46条の17)。個人タクシーや個人貨物運送業などが該当します。

→4号について、3号の事業主が行う事業に従事する者も対象になります。

→5号について、規則は、農業における一定の作業、国又は地方公共団体が実施する訓練として行われる一定の作業、労働組合等の常勤の役員が行う一定の作業、介護関係業務に係る一定の作業と並び、家内労働者又は補助者が行う一定の作業を挙げています(規則46条の18)。

① 農業(畜産及び養蚕の事業を含む。)における一定の作業
② 国又は地方公共団体が実施する訓練として行われる作業のうち一定のもの
③ 家内労働者又は同条第四項の補助者が行う作業のうち一定のもの
④ 労働組合等の常勤の役員が行う集会の運営、団体交渉その他の当該労働組合等の活動に係る作業であつて、当該労働組合等の事務所、事業場、集会場又は道路、公園その他の公共の用に供する施設におけるもの(当該作業に必要な移動を含む。)
⑤ 日常生活を円滑に営むことができるようにするための必要な援助として行われる作業であつて、一定のもの
⑥ 放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業であつて、一定のもの
⑦ アニメーシヨンの制作の作業であつて、一定のもの
⑧ 情報処理システムの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理若しくは情報処理システムに係る業務の一体的な企画又はソフトウェア若しくはウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン若しくはソフトウェア若しくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業であつて、一定のもの

※家事は含まない

→6号と7号について、海外に派遣される者です。細かくとらえる必要はありません。大切なのは、「事業の期間が予定される事業は除く」という点です。つまり、有期事業は除かれます。

海外派遣されてからでも派遣元の事業主(日本国内で実施している事業について労災保険の保険関係が既に成立している事業主)が申請すれば、政府の承認があった場合に特別加入することができる。

海外出張者として特段の加入手続を経ることなく当然に労災保険の保護を与えられるのか、海外派遣者として特別加入しなければ保護が与えられないのかは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務するのか、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになるのかという点からその勤務の実態を総合的に勘案して判定されるべきものである(昭52.3.30基発192号)。

 

中小事業主等の特別加入においては、事業主が事業主と当該事業に徒事する者を包括して加入申請を行い、承認を受けることにより労災保険が適用されるものであり、事業主自身が加入することが前提となっています。しかし、これらの中小事業主の中には、病気療養中、高齢等の事情により実態として当該事業場において就業していない者もいることから、例外が定められています。

就業実態のない事業主が自らを包括加入の対象から除外することを申し出た場合には、当該事業主を特別加入者としないこととする。

就業実態のない事業主として包括加入の対象から除外することができる者は、次のいずれかに該当する者とする。

(1) 病気療養中、高齢その他の事情のため、実際に就業しない事業主
(2) 事業主の立場において行う事業主本来の業務のみに従事する事業主

平15.5.20基発0520002号

 

・給付基礎日額は、当該事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円及び25,000円のうちから定める)とする(34条1項3号、35条1項6号、36条1項2号、規則46条の20第1項、46条の24、46条の25の3)。

→給付基礎日額は、ここから決めることができます。ここは暗記になってしまいますが、下限と上限の日額はおさえておきましょう。

特別加入について、選択式で出題された判例をみておきましょう。

最高裁判所は、中小事業主が労災保険に特別加入する際に成立する保険関係について、次のように判示している(作題に当たり一部改変)。

労災保険法(以下「法」という。)が定める中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係(以下「保険関係」という。)を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労動者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度である。そして、法第3条第1項、労働保険徴収法第3条によれば、保険関係は、労働者を使用する事業について成立するものであり、その成否は当該事業ごとに判断すべきものであるところ、同法第4条の2第1項において、保険関係が成立した事業の事業主による政府への届出事項の中に「事業の行われる場所」が含まれており、また、労働保険徴収法施行規則第16条第1項に基づき労災保険率の適用区分である同施行規則別表第1所定の事業の種類の細目を定める労災保険率適用事業細目表において、同じ建設事業に附帯して行われる事業の中でも当該建設事業の現場内において行われる事業とそうでない事業とで適用される労災保険率の区別がされているものがあることなどに鑑みると、保険関係の成立する事業は、主として場所的な独立性を基準とし、当該一定の場所において一定の組織の下に相関連して行われる作業の一体を単位として区分されるものと解される。そうすると、土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(以下「建設の事業」という。)を行う事業主については、個々の建設等の現場における建築工事等の業務活動と本店等の事務所を拠点とする営業、経営管理その他の業務活動とがそれぞれ別個の事業であって、それぞれその業務の中に労働者を使用するものがあることを前提に、各別に保険関係が成立するものと解される。
したがって、建設の事業を行う事業主が、その使用する労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ、本店等の事務所を拠点とする営業等の事業に従事させていないときは、営業等の事業につき保険関係の成立する余地はないから、営業等の事業について、当該事業主が特別加入の承認を受けることはできず、営業等の事業に係る業務に起因する事業主又はその代表者の死亡等に関し、その遺族等が法に基づく保険給付を受けることはできないものというべきである。

(最判平24.2.24)

参考:特別加入制度とは何ですか。|厚生労働省

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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