【不動産登記法】地上権の登記の登記事項について、事業用定期借地権などのまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続の権利に関する登記の用益権に関する登記から地上権について学習します。第3款の用益権には、地上権、永小作権、地役権、賃借権、配偶者居住権、採石権があります。今回は、このうち地上権について見ていきます。また、あくまで不動産登記の部分にとどめます。

不動産登記法>登記手続>権利に関する登記>用益権に関する登記

地上権の登記の登記事項

地上権の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(78条)。

① 地上権設定の目的
② 地代又はその支払時期の定めがあるときは、その定め
③ 存続期間又は借地借家法第22条第1項前段[定期借地権]若しくは第23条第1項[存続期間30年以上50年未満の事業用定期借地権等]の定めがあるときは、その定め
④ 地上権設定の目的が借地借家法第23条第1項[存続期間30年以上50年未満の事業用定期借地権等]又は第2項[存続期間10年以上30年未満の事業用定期借地権等]に規定する建物の所有であるときは、その旨
⑤ 民法第269条の2第1項前段[区分地上権]に規定する地上権の設定にあっては、その目的である地下又は空間の上下の範囲及び同項後段の定め[土地の制限]があるときはその定め

3号:特約について

3号について、まず、借地借家法22条1項を見てみましょう。

存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条[借地権の存続期間等の強行規定]及び第16条[借地権の効力の強行規定]の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第1項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条[建物買取請求権]の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない(借地借家法22条1項)。

借地借家法は、借主と貸主のバランスをとるために作られた法律です。基本的に貸主の立場が強くなりやすいため、借主を保護し、一方、借主を保護しすぎると、今度は貸主に過大な負担がかかるため、調整がされています。この視点を持つと、民法と借地借家法の関係が理解しやすいと思います。

借地権の存続期間は、原則30年です(借地借家法3条)。民法の地上権は、存続期間を定めることは要件ではない点と比較しておきましょう。30年という長さは、建物の寿命を考慮しています。また、原則として、借地権は、借地権者、つまり借主が契約の更新を請求したときは、建物がある場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条本文)。

ただ、これだと借主が有利になりすぎ、貸主が貸し控えをすることにもつながるため、存続期間を50年以上として借地権を設定する場合、①契約の更新をしないこと、②建物の築造による存続期間の延長がないこと、③建物買取請求権をしないことを特約として定めることができるようになっています。

国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅取得者(一次取得者)の平均年齢は38.5歳です。また、厚生労働省によると、借地借家法が制定された平成3年(1991年)当時の平均寿命は、男性75.9歳、女性81.9歳でした。38歳くらいに家を購入し、そこから50年間土地を利用することができれば、借地権者の不利益になることは少なく、土地の所有者にとっても過大な負担にならないと考えることができます。

参考:平均寿命の推移|厚生労働省

※一次取得者:初めて住宅を取得した世帯

次に、借地借家法23条1項を見てみましょう。

専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる(借地借家法23条1項)。

23条1項の事業用定期借地権等の場合は、30年以上50年未満として借地権を設定する場合は、同じく①契約の更新をしないこと、②建物の築造による存続期間の延長がないこと、③建物買取請求権をしないことを特約として定めることができるようになっています。

これも、企業のライフサイクルが約30年というのを考慮すると、30年以上50年未満の借地権があれば、事業者にとって不利益にならないと考えることができます。

地上権の3号に話を戻すと、これらの定め、つまり特約がある場合は、その定めを登記します。

【申請書の例】

特約 借地借家法第22条1項の特約

4号:目的について

4号について、地上権設定の目的が借地借家法第23条第1項または第2項に規定する建物の所有であるときは、その旨を登記します。

23条2項の条文を見てみましょう。

専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条[借地権の存続期間等]まで、第13条[建物買取請求権]及び第18条[借地契約の更新後の建物の再築の許可]の規定は、適用しない(借地借家法23条2項)。

2項は、存続期間が10年以上30年未満の事業用定期借地権です。

つまり、地上権の目的が事業用定期借地権の場合は、その旨を登記するということです。

【申請書の例】

目的 借地借家法第23条2項の建物所有

ここで、先ほどの特約(22条1項、23条1項)と目的(23条1項、23条2項)の記載事項を混乱する方が多いと思います。

目的については、事業用定期借地権(23条)の場合は、その旨を登記すると理解記憶しましょう。

特約を登記する22条1項、23条1項については、条文が「…定めがあるときは」となっているのに対して、特約を登記しない23条1項は、条文が「…適用しない」として、当然に更新されないこととなっています。もちろん、法律がそうなっているからというのはかんたんですが、法律が制定された背景を理解すると理解記憶がよりしやすくなると思うので、立法背景を紹介します。

元々、事業用定期借地権は、創立当初、期間は10年以上20年以下として、短期間の活用が想定されていましたが、平成20年に10年以上50年未満に改正されました。というのも、事業用定期借地権で想定した活用は、ロードサイド店舗が主で、これらの事業期間が短いことから20年になりました。

その後、ショッピングモール等の大規模なものが数多く出現し、当初想定した活用方法からは変わってきました。また、税制上の建物償却期間との問題から、期間の延長に対する要望が強く、10年以上50年未満に改正されたという経緯があります。さらに、30年以上の事業用定期借地権については、更新や建物買取請求権などについて特約を併せることもできるようになりました。

つまり、元々、事業用定期借地権は、法律上当然に更新等が認められていない10年以上30年未満(当初は20年以下)のものがあった(23条2項)、活用方法が変わってきたことや税制の問題から特約を付ける30年以上50年未満のものができた(23条1項)と考えることができます。

平成3年成立当時の借地借家法を見てみると、次のようにあります。

第24条(現23条) 第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上20年以下として借地権を設定する場合には、適用しない。

法律第九十号(平三・一〇・四)|衆議院

事業用定期借地権は、法律上当然に、適用しない、つまり、更新などの規定が適用されないようになっています。

登記制度としては、法律上、当然に更新等が認められていない10年以上30年未満の事業用定期借地権(23条2項)、特約を付けることによって更新等を認めないことができる30年以上50年未満の事業用定期借地権(23条1項)と定期借地権(22条1項)に関しては、特約を登記をすると考えましょう。なお、50年以上の場合は、事業用定期借地権ではなく通常の定期借地権を利用することが可能です。

参考:建設産業・不動定期借地権の解説 – 国土交通省

5号:区分地上権について(目的・範囲)

5号について、区分地上権の設定にあっては、範囲と土地の制限の定めがあるときはその定めを登記します。

【申請書の例】

範囲 東京湾平均海面の上100メートルから上20メートルの間

 

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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