【不動産登記法】所有権に関する登記について、相続人である旨の申出等のまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続の権利に関する登記から所有権に関する登記について学習します。不動産登記において、もっとも基本となる所有権に関する登記です。

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所有権の登記の登記事項

所有権の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(73条の2第1項)。
① 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの
② 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの

前項各号に掲げる登記事項についての登記に関し必要な事項は、法務省令で定める(73条の2第2項)。

 

所有権の保存の登記

所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない(74条1項)。
① 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
② 所有権を有することが確定判決によって確認された者
③ 収用によって所有権を取得した者

区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない(74条2項)。

所有権の保存の登記は、その不動産について最初に登記されるものです。所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができないとしています。つまり、次に掲げる者のみが申請することができるということです。所有権の保存の登記は、①表題部所有者、相続人などの一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者、③収用によって所有権を取得した者ができます。

2号について、所有権の保存の登記は、所有権を有することが確定判決によって確認された者がすることができます。共同申請における判決による登記等では、「登記手続をすべきことを命ずる確定判決」であってことと比較しておきましょう。

3号について、収用とは、国や地方公共団体が公共事業のために必要となる土地や建物の所有権を取得することです。所有者には正当な補償が支払われます。これによって、所有権を取得した者は、所有権の保存の登記をすることができます。

区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、保存の登記を申請することができます。

表題登記がない不動産についてする所有権の保存の登記

登記官は、前条第1項第2号又は第3号に掲げる者の申請に基づいて表題登記がない不動産について所有権の保存の登記をするときは、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものを登記しなければならない(75条)。

表題登記がない不動産について所有権の保存の登記をするときは、登記官が職権登記します。1号が除外されているのは、1号は「表題部所有者又はその相続人」といったように表題登記がされていることが前提となっているからです。

所有権の保存の登記の登記事項等

所有権の保存の登記においては、第59条第3号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第74条第2項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない(76条1項)。

登記官は、所有権の登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、所有権の保存の登記をしなければならない(76条2項)。

前条の規定は、表題登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をする場合について準用する(76条3項)。

所有者の保存の登記は、登記原因と日付を登記する必要がありません。ただし、敷地権付き区分建物について第74条第2項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、土地について所有権移転の要素があるため、原則通り、登記原因と日付を登記する必要があります。

所有権の登記がない不動産、表題登記がない不動産について、裁判所からの嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で所有権の保存の登記がされます。

相続等による所有権の移転の登記の申請

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする(76条の2第1項)。

前項前段の規定による登記(民法第900条[法定相続分]及び第901条[代襲相続人の相続分]の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(76条の2第2項)。

前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない(76条の2第3項)。

新しくできた規定です。所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請します。また、相続人に対する遺贈により所有権を取得した者も、所有権の移転の登記を申請します。誰の土地かわからなくなってしまうことを防ぐために、相続登記が義務化されました。

また、法定相続分による所有権の移転の登記がされた後に遺産分割があって、相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。

相続人である旨の申出等

前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる(76条の3第1項)。

前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす(76条の3第2項)。

登記官は、第1項の規定による申出があったときは、職権でその旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる(76条の3第3項)。

第1項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第1項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(76条の3第4項)。

前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない(76条の3第5項)。

前条の所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができます。これにより、所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなされます。そして、登記官は、職権で、その旨、申出をした者の氏名及び住所等を付記します。

相続登記の義務化は、前述のように土地の所有者が誰かわからなくなることを防ぐためなので、所有者がわかればよいということです。

もっとも、その後に遺産分割によって所有権を取得したときは、遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないとされています。このとき、相続分を超えたかどうかにかかわらず、登記を申請しなければならないのがポイントです。

先ほどは、すでに法定相続分の登記をしているため、法定相続分を超えた場合は登記しましょうとなっていました。今回は、登記をしておらず、とりあえず申告したにすぎないので、遺産分割によって正式に決まったのなら、きちんと登記してくださいということです。

所有権の登記の抹消

所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる(77条)。

所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合は、所有権の登記名義人が単独で申請することができます。

参考:不動産登記申請手続:法務局

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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