【不動産登記法】権利に関する登記の通則について、除権決定、敷地権などのまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続の権利に関する登記から通則について学習します。いよいよ権利に関する登記に入ります。択一・記述ともに司法書士試験の中心となる部分です。第3節「権利に関する登記」は、全8款で構成されています。

  • 第1款 通則
  • 第2款 所有権に関する登記
  • 第3款 用益権に関する登記
  • 第4款 担保権等に関する登記
  • 第5款 信託に関する登記
  • 第6款 仮登記
  • 第7款 仮処分に関する登記
  • 第8款 官庁又は公署が関与する登記等

今回は、権利に関する登記の全体について定める通則を見ていきましょう。

不動産登記法>登記手続>権利に関する登記>通則

権利に関する登記の登記事項

権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする(59条)。

① 登記の目的
② 申請の受付の年月日及び受付番号
③ 登記原因及びその日付
④ 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が2人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
⑤ 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
⑥ 共有物分割禁止の定めがあるときは、その定め
⑦ 他人に代わって登記を申請した者(以下「代位者」という。)があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
⑧ 第2号に掲げるもののほか、権利の順位を明らかにするために必要な事項として法務省令で定めるもの

権利に関する登記の登記事項は、登記の目的、登記原因及びその日付等です。また、登記名義人が2人以上あるときは持分を登記します。このあたりは、都度学習していきましょう。

共同申請

権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない(60条)。

権利に関する登記の申請は、原則として、共同申請になります。そして、登記手続の総則で学習したように、共同申請の場合は、登記識別情報を提供する必要があります(22条本文)。

登記原因証明情報の提供

権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない(61条)。

登記原因を証する情報とは、登記の原因となった事実または法律行為とこれに基づき現に権利変動が生じたことを証する情報のことをいいます。売買契約書などが該当します。記述式問題では、与えられた別紙の中から登記原因を証する情報を選んでいきます。

参考:登記申請の際に必要とされる「登記原因証明情報」とは|法務局

一般承継人による申請

登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる(62条)。

一般承継(包括承継)とは、他人の権利義務を包括的に引き継ぐことです。相続や法人の合併などが当てはまります。これに対して、売買などにより個別に権利義務を引き継ぐことを特定承継といいます。一般承継があったときは、相続人等は、当該権利に関する登記を申請することができます。

判決による登記等

申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる(63条1項)。

相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる(63条2項)。

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる(63条3項)。

共同申請の例外について定められています。権利に関する登記は、原則として共同申請になりますが、信用性が高いなど一定の場合は、単独で登記することが認められています。ただ、これらを通則の時点で覚えるのは難しいと思うので、個別の論点を学習する中で少しずつ理解記憶していきましょう。

登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、他方が単独で申請することができます。「登記手続をすべきことを命ずる確定判決」という点に気をつけましょう。

相続または法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができます。試験対策上、もっとも重要なことのひとつなので、早い段階でおさえておきましょう。

また、遺贈による所有権の移転の登記も登記権利者が単独で申請することができます。ただし、カッコ書きにあるように、「相続人に対する遺贈に限る」点に注意しましょう。

登記名義人の氏名等の変更の登記又は更正の登記等

登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる(64条1項)。

抵当証券が発行されている場合における債務者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、債務者が単独で申請することができる(64条2項)。

登記名義人の氏名や住所変更は、権利そのものが変更されるわけではないので、単独申請が認められています。抵当証券については、抵当権のところで見ていきましょう。

共有物分割禁止の定めの登記

共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない(65条)。

 

権利の変更の登記又は更正の登記

権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

権利の変更や更正の登記をする場合、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合、利害関係を有する第三者がない場合は、付記登記によってすることができます。たとえば、抵当権の場合、第1抵当権の債権額を増額するとき、第2抵当権の抵当権者は配当される金額が減ってしまうため、利害関係人にあたります。そのため、第2抵当権の抵当権者の承諾がある場合は、付記登記、つまり、第1抵当権に付記する形で登記することができますが、承諾がない場合は、下の順位の抵当権として主登記によってすることになります。また、先ほどのような登記名義人の住所変更のように、利害関係を有する第三者がいない場合も、付記登記によってすることができます。

登記の更正

登記官は、権利に関する登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、その旨を登記権利者及び登記義務者(登記権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人。)に通知しなければならない。ただし、登記権利者、登記義務者又は登記名義人がそれぞれ2人以上あるときは、その1人に対し通知すれば足りる(67条1項)。

登記官は、前項の場合において、登記の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。ただし、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の更正につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この項において同じ。)がある場合にあっては、当該第三者の承諾があるときに限る(67条2項)。

登記官が前項の登記の更正をしたときは、その旨を登記権利者及び登記義務者に通知しなければならない。この場合においては、第1項ただし書の規定を準用する(67条3項)。

第1項及び前項の通知は、代位者にもしなければならない。この場合においては、第1項ただし書の規定を準用する(67条4項)。

登記官は、登記の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をします。

登記の抹消

権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(68条)。

利害関係を有する第三者の不測の損害を防止するために、権利に関する登記の抹消は、第三者の承諾があるときに限り、申請することができます。

死亡又は解散による登記の抹消

権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されている場合において、当該権利がその死亡又は解散によって消滅したときは、第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる(69条)。

権利消滅の定めが登記されている場合、登記権利者は、単独で権利に関する登記の抹消を申請することができます。

買戻しの特約に関する登記の抹消

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる(69条の2)。

買戻しについて、民法の条文を見てみましょう。

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる(民法579条)。

買戻しの期間は、10年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、10年とする(民法580条1項)。

買戻しの期間の最長である10年を経過したときは、登記権利者、つまり不動産の売主であった者は、単独で当該登記の抹消を申請することができます。

除権決定による登記の抹消等

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、公示催告の申立てをすることができる(70条1項)。

前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する(70条2項)。

前2項の場合において、除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第1項の登記の抹消を申請することができる(70条3項)。

第1項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする(70条4項)。

条件が複数あるので、整理しましょう。

まず、登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、公示催告の申立てをすることができます。そして、除権決定があったときは、単独で登記の抹消を申請することができます。これがひとつめです。

次に、第1項に規定する場合、つまり、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないとき、登記権利者が、抵当権等が消滅したことを証する情報を提供したときは、登記権利者は、単独で登記の抹消を申請することができます。これがふたつめです。

最後に、同じく第1項に規定する場合、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に被担保債権、その利息、損害の全額に相当する金銭を供託したときも、登記権利者は、単独で登記の抹消を申請することができます。

本試験対策として、2つめと3つめに関しては、除権決定が不要な点に注意しましょう。

解散した法人の担保権に関する登記の抹消

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる(70条の2)。

解散した法人の担保権に関する登記の抹消について、単独で申請できるようになっています。

職権による登記の抹消

登記官は、権利に関する登記を完了した後に当該登記が第25条第1号から第3号まで又は第13号[申請の却下]に該当することを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、1月以内の期間を定め、当該登記の抹消について異議のある者がその期間内に書面で異議を述べないときは、当該登記を抹消する旨を通知しなければならない(71条1項)。

登記官は、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、法務省令で定めるところにより、前項の通知に代えて、通知をすべき内容を公告しなければならない(71条2項)。

登記官は、第1項の異議を述べた者がある場合において、当該異議に理由がないと認めるときは決定で当該異議を却下し、当該異議に理由があると認めるときは決定でその旨を宣言し、かつ、当該異議を述べた者に通知しなければならない(71条3項)。

登記官は、第1項の異議を述べた者がないとき、又は前項の規定により当該異議を却下したときは、職権で、第1項に規定する登記を抹消しなければならない(71条4項)。

職権による登記の抹消について定められています。1号から3号、13号は、申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき(1号)、申請が登記事項以外の事項の登記を目的とするとき(2号)、申請に係る登記が既に登記されているとき(3号)、前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき(13号)が定められています。これらの事由をひとつずつ覚える必要はありませんが、職権による登記の抹消があるという点をおさえておきましょう。

抹消された登記の回復

抹消された登記(権利に関する登記に限る。)の回復は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の回復につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(72条)。

これまで登記の抹消ができる場合について見てきました。今度は、抹消された登記を回復する場合です。抹消された登記の回復は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、第三者の承諾があるときに限り、申請することができます。

敷地権付き区分建物に関する登記等

敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に掲げる登記は、この限りでない(73条1項)。

① 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をする前に登記されたもの(担保権に係る権利に関する登記にあっては、当該登記の目的等が当該敷地権となった土地の権利についてされた担保権に係る権利に関する登記の目的等と同一であるものを除く。)

② 敷地権付き区分建物についての所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの

③ 敷地権付き区分建物についての質権又は抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの

④ 敷地権付き区分建物についての所有権又は質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生じた後に生じたもの(区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない場合(以下この条において「分離処分禁止の場合」という。)を除く。)

敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない(73条2項)。

敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない(73条3項)。

通則の最後は、多くの方が苦手とする敷地権についてです。

まず、区分建物は、土地の登記記録に、職権で、所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記がされます(46条)。この敷地権が設定されるとどうなるかについて、定めています。

1項について、敷地権付き区分建物の所有権または担保権に係る権利に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有します。つまり、区分建物の所有権を登記すると、土地の敷地権についても効力を有するということになります。もう少し言うと、敷地権付き区分建物だけの所有権、または敷地権だけを分離して処分することはできないということです。

ただし、次に掲げる登記は、この限りでないとして例外が定められています。

1号について、所有権または担保権に係る権利に関する登記であって、敷地権の登記をする前にされたものは、別のものとして扱われます。

2号について、所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたものは、登記原因が敷地権が生ずる前に生じているため、別のものとして扱われます。

3号について、質権または抵当権に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの、こちらも登記原因が敷地権が生ずる前に生じているため、別のものとして扱われます。

1号は、敷地権の登記をする前にされているので、問題なく別のものとして扱われます。2号と3号について、まとめると、所有権の仮登記、質権、抵当権に関する登記であって、敷地権の登記をした後に登記をしたけれど、登記原因は敷地権が生ずる前に生じたものは、別のものとして扱われます。

4号について、所有権、質権、抵当権に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が敷地権が生じた後に生じたものです。もっとも、区分所有者の有する専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない場合は除きます。

基本的に、敷地権後、原因後のものはできないと考えるのをおすすめします。そして、例外の例外として、分離して処分することができる場合はできると考えましょう。

2項は、敷地権である旨の登記をした土地について定めています。敷地権である旨の登記をした土地は、敷地権の移転の登記または敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができません。土地のみ建物のみに登記できない、これが敷地権の最大のポイントです。

ただし、土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)または敷地権についての仮登記、質権、抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない、つまり、登記をすることができます。

仮登記はあくまで仮なので、登記をすることができます。所有権の本登記はできない点に注意しましょう。また、質権、抵当権も、土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じたものは登記ができます。

3項は、敷地権付き区分建物について定めています。敷地権付き区分建物には、建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権、担保権に関する登記をすることができません。

ただし、建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)または建物のみの所有権についての仮登記、質権、抵当権に係る権利に関する登記であって建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない、つまり、登記することができます。

これまで例外にある「敷地権後に登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)」を不思議に感じた方が多いと思います。たとえば、不動産保存や不動産工事の先取特権は、その対象物のみを目的として法律上当然に発生するため、分離処分には該当しません。

敷地権の条文の全体像をまとめると、73条1項は、敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記は、土地の敷地権についてされた登記としての効力を有することについて規定しています。73条2項は、敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転や担保権に関する登記をすることができないこと、73条3項は、敷地権付き区分建物には、建物のみの移転や担保権の登記をすることができないことについて定めています。ただし、いずれも例外が規定されています。

特に2項と3項については、①当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は②仮登記質権抵当権に係る権利に関する登記であって敷地権が生じる前にその登記原因が生じたものは、この限りでないという例外が共通しているので、まとめておさえておきましょう。

試験対策として、まず、1項チームと2項・3項チームに分けます。1項は、敷地権後は土地に効力が及ぶこと、2項・3項は、敷地権後は登記をすることができないことについて規定しているからです。

そして、1項チームは、例外として、①敷地権前・原因前は及ばない(これはある意味当然です)、②敷地権後でも原因前なら及ばない点をおさえます。なお、1項2号は、所有権に関する仮登記、1項3号は、質権又は抵当権に関するもので分けて規定されていました。

2項・3項チームは、例外として、敷地権後、原因前は登記できる点をおさえます。なお、仮登記、質権、抵当権についてのことという前提は忘れないようにしましょう。

民法の応用知識や細かい先例をあげるとキリがありませんが、条文ベースで以上の点をおさえると、敷地権に関しての原則と例外について理解記憶しやすいと思います。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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