民事執行法の扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例について解説します。今回で、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行は最後です。扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行は、どのような特例が設けられているのか、原則と特例を比較しながら押さえていきましょう。
扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制
扶養義務等に係る金銭債権の強制執行は、前各款の規定、つまり不動産、動産、債権に対する強制執行の規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、間接強制の方法により行います。間接強制とは、債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければ間接的に強制金を課すことで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払を促すものです。
本試験では、扶養義務等に係る金銭債権は、強制執行ができないといった問われ方がされるので、強制執行、間接強制のどちらでもできるといった点を押さえておきましょう。
参考:間接強制 | 裁判所
扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例
参照される条文が多いので、整理しましょう。債権者が扶養義務等に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合、債権の一部に不履行があるときは、第30条第1項[請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。]の規定にかかわらず、6月以内に確定期限が到来するものについても、間接強制等による強制執行を開始することができます。
たとえば離婚した前の夫が扶養義務等に係るお金を振り込んでくれない場面を思い浮かべてみましょう。こちらは、シングルマザーで毎月の余裕はほとんどない状況です。このとき、毎月、確定期限が到来して初めて、金銭債権が履行されない、強制執行をしようというのでは、生活ができなくなってしまいます。そこで、扶養義務等に係る確定期限の定めのある定期金債権については、その一部に不履行があったときは、確定期限が到来していなくても、6月以内に確定期限が到来するものについても、強制執行を開始することができるとされています。
扶養義務等に係るものは、間接強制ができる、定期金債権は6月以内に確定期限が到来するものについてもできる、この2点の特例を押さえておきましょう。