【民法改正】相続について、相続財産の管理人・相続財産の清算人などのまとめ

民法
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令和3年に改正された民法のうち、令和5年度(2023年度)の各試験から出題範囲となる「相続」についてまとめます。「相続財産の管理人」と「相続財産の清算人」、遺産分割ができるのが「相続開始の時から10年」とされたことを押さえておきましょう。



相続財産の保存

相続財産の保存

第897条の2

1 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

相続財産を適切に管理するため、相続財産の管理人の制度が新設されました(897条の2第1項本文)。相続財産の適切な管理が目的のため、単純承認をしたとき、遺産の全部の分割がされたとき、相続財産の清算人が選任されたときは相続財産の管理人の選任はできません(897条の2第1項但書)。

27条〜29条は、不在者財産制度です。

  • 27条:管理人の職務
  • 28条:管理人の権限
  • 29条:管理人の担保提供及び報酬

期間経過後の遺産の分割における相続分

第904条の3

前3条の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

相続開始の時から10年を経過した後は、遺産分割ができないとする規定ができました。これにより遺産分割を促し、相続登記がされることによって、日本の課題となっている所有者不明土地を減らすことを目的としています。反対に言うと、所有者不明土地を減らすために相続登記をする必要があり、そのために遺産分割を促す(10年経ったらできなくなると規定する)ようになっています。

遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止

第908条

1 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

2 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

3 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

4 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

5 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

「期間経過後の遺産の分割における相続分」が規定されたことに伴って、遺産分割の禁止期間も「相続開始の時から10年を超えることができない」と修正されました(908条)。

条文が複雑に見えますが、1項は被相続人が遺産分割を禁止するもの、2項と3項は相続人によるもの、4項と5項は家庭裁判所によるものです。また、2項と4項が新たに契約するもの、3項と5項が更新になります。当然ですが、被相続人は亡くなっているので、更新を規定する条文はありません。

被相続人 相続人 家庭裁判所
新規 1項 2項 4項
更新 3項 5項

相続人が数人ある場合の相続財産の清算人

相続財産の清算人

第936条 

1 相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。

2 前項の相続財産の清算人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。

3 第926条から前条までの規定は、第1項の相続財産の清算人について準用する。この場合において、第927条第1項中「限定承認をした後5日以内」とあるのは、「その相続財産の清算人の選任があった後10日以内」と読み替えるものとする。

これまで、相続財産の清算をしない者も「相続財産の管理人」として選任されていましたが、令和3年の改正法では、相続財産の清算をする者は「相続財産の清算人」に改められました。

相続財産の管理人は、相続財産の管理のために選任されます。相続財産の清算人は、相続財産の管理だけでなく清算(債務の弁済に必要な一切の行為)もします。

そのため、前述の相続財産の管理人は、相続財産の清算人が選任されているときは、選任することができないようになっているのです(第897条の2第1項但書)。

相続財産の管理人 相続財産の清算人
管理
清算 ×

相続の放棄をした者による管理

第940条

1 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2 第645条、第646条並びに第650条第1項及び第2項の規定は、前項の場合について準用する。

相続放棄者がどのような場合に義務を負うのかが規定されました。具体的には、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人や相続財産の清算人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、財産を保存するとしています(940条1項)。占有していないときまで保存義務を負うと酷であると考えると理解しやすいと思います。

相続財産の清算人の選任

第952条 

1 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

上記897条の2の「相続財産の管理人」と区別するために、952条で選任される者の名称が「相続財産の清算人」に改められました(936条、952条〜958条)。

また、これまでは1回目の公告(2か月)→2回目の公告(2か月以上)→最終の公告(6か月以上)で相続人不存在が確定しましたが、改正後は、6か月以上(952条2項)で確定します。

具体的には、1回目の公告(952条)が6か月以上になり、2回目の公告(957条)の2か月間が6か月の期間内に満了するものになり(つまり最大で6か月)、最終の公告(958条)が条文削除なり、結果的に6か月以上(条文の表記は「6箇月を下ることができない」)になっています。

【補足】司法書士試験対策として、特別縁故者への財産分与の登記に使う条文が「958条の3」から「958条の2」に繰り上がっているので注意が必要です。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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