行政手続法では、手続規定になじまないものについて適用除外のものが定められています。しかし、「手続規定になじまない」と言われても、「どういう意味なんだろう?」という方が多いと思います。ここでは、行政手続法の適用除外についてまとめています。
試験対策としては、地方公共団体の適用除外が頻出です(それ以外はあまり問われません)。まずは、地方公共団体の適用除外について理解をし、それから周りの知識を広げていくとよいでしょう。
処分・行政指導の適用除外(3条1項)
行政手続法は、3条1項において16項目の適用除外を設けています。たとえば、国会の議決によってされる処分(1号)や裁判所の処分(2号)など慎重な手続があるものは適用が除外されています。
また、「専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分」も適用除外とされています(11号)。行政書士試験について考えてみると、試験の結果についての処分、つまり合格や不合格といったものは、行政手続法の申請に対する処分や不利益処分にはなじまないことがわかると思います。
命令等の適用除外(3条2項)
命令等を定める行為のうち、「法律の施行期日について定める政令」(1号)や「恩赦に関する命令」(2号)などについても適用除外とされています。
ただし、前述のように、先ほどの「処分・行政指導の適用除外」とこの「命令等の適用除外」については、本試験であまり問われることはないので、それほど気にする必要はないでしょう。
大切なのは、次の地方公共団体の適用除外です。
地方公共団体の適用除外(3条3項)
まずは、条文を見てみましょう。
地方公共団体がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。
カッコ書きがあって少し読みにくいので、整理しましょう。
まず、②行政指導と④命令等を定める手続(条文は「行為」)は適用除外となっています。そして、①処分と③届出は「その根拠となる規定が条例または規則に置かれているもの」は適用除外となります。
基本書にもよくある表ですが、まとめてみましょう。
法律 | 条例・規則 | |
処分 | 適用あり | 適用なし |
行政指導 | 適用なし | 適用なし |
届出 | 適用あり | 適用なし |
命令等 | 適用なし | 適用なし |
覚え方としては、まず丸暗記をしてしまうなら、地方公共団体のものは原則「適用なし」、処分と届出は、法律に基づいて行われるものは「適用あり」と覚えてしまいます。試験直前で問題を反射的に解くため、または理解している時間がない人は丸暗記をしてしまうのもひとつの方法です。
ただし、これだけだとなぜ「適用あり」と「適用なし」に分かれるのかがわからず、記憶が定着しにくいというデメリットがあります。そこで、補足をします。
地方公共団体について、「適用なし」が基本となるのは、地方自治を尊重するためです。ただし、法律に基づく処分や届出は一律で規定すべきため、行政手続法が適用とされています。
たとえば、飲食店の許可などを考えるとわかりやすいと思います。食品衛生法(法律です)では、「飲食店営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない」と規定しています。この場合、申請に対する処分などは行政手続法が適用されます。
しかし、今度は反対に行政手続法が適用されないとなると、「地方公共団体はなんでもやりたい放題になってしまうのではないか」という疑問が生まれます。そこで、行政手続法46条では、「地方公共団体は、適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定しています。
つまり、各地方公共団体は、行政手続条例を制定するよう努めなければならないということです。
たとえば、私が住んでいる沖縄県でも「沖縄県行政手続条例 」「那覇市行政手続条例」が制定されています。ぜひ、みなさんが住んでいる地方公共団体の行政手続条例も検索してみましょう。自分ごとにすることで記憶が定着しやすくなると思います。
それでは、本試験ではどのように問われるのかを見てみましょう。
行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについても行政手続法が適用されると定めている。
(令5-問26-1)
正解:✕
地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律に置かれているものであれば、行政指導について定める行政手続法の規定は適用される。
(令3-問13-エ)
正解:✕
地方公共団体の機関がする行政指導のうち、その根拠が条例または規則に置かれているものについては、行政手続法の行政指導に関する定めの適用はないが、その根拠が国の法律に置かれているものについては、その適用がある。
(令元-問11-3)
正解:✕
毎年のように出題される頻出論点です。前述のように表を丸覚えしてしまってもいいですが、どうして適用除外されるのか(地方自治を尊重するため)を意識するとなおよいでしょう。
国の機関等に対する処分等の適用除外(4条)
最後に、国の機関等に対する処分等の適用除外です。
国の機関または地方公共団体もしくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しないとされています(4条1項)。
少し難しいですが、国の機関や地方公共団体に対する処分や行政指導、届出については、行政手続法は適用しないということです。本試験対策でいうと、ほとんど気にする必要はないでしょう。
適用除外について、面倒に感じてしまう方もいるかもしれませんが、適用除外で問われるのは地方公共団体についての論点がほぼすべてなので、そこだけ押さえるようにしましょう。