【憲法】法人の人権について、八幡製鉄所政治献金事件など判例まとめ

憲法
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前回は、外国人の人権について見てきました。今回は法人の人権についてまとめています。法人とは、会社のように法律によって権利義務が認められたものをいいます。

本試験対策としては、判例の知識が問われます。法人の人権については難しいことはないと思うので、有名な判例知識を増やしていきましょう。



八幡製鉄所政治献金事件

八幡製鉄所政治献金事件

八幡製鉄所の代表取締役が、同社を代表して自由民主党に政治資金を寄附しました。そこで、同社の株主が、寄附は定款に定められた事業目的の範囲外の行為であり、かつ取締役の忠実義務にも違反しており、会社に対する賠償責任が発生するとして、株主代表訴訟を提起しました。

憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によつてそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあつたとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。

最判昭45.6.24

八幡製鉄所政治献金事件において、有名なフレーズは「性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用される」という部分です。そして、政治資金の寄附も、自由の一環であり、自然人による寄附と別異に扱う憲法上の要請があるものではない、つまり会社による寄附は認められるとしています。

南九州税理士会事件

南九州税理士会事件

南九州税理士会が政治団体に寄付するための特別会費5,000円の徴収決議に反対し、納入を拒否した南九州税理士会の税理士が、南九州税理士会の選挙権・被選挙権を停止されました。そこで、この税理士の方は、税理士会の目的の範囲外であるとして、訴訟を提起しました。

税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法四九条二項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべきである。

最判平8.3.19

判例は、税理士会が政党に寄付をすることは、税理士会の目的の範囲外の行為であり、会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であるとしました。先ほどの八幡製鉄所政治献金事件は、法人による寄付は自由としましたが、税理士会は無効とされています。これは、企業の考えが合わない場合は、辞めればいいだけですが、税理士会は強制加入団体だからです。

ちなみに、行政書士会もほぼ自動的にこういったお金を集められます。本来、強制ではないものを当たり前のようにすることに対しては、さまざまな考え方ができそうです。

群馬司法書士会事件

群馬司法書士会事件

群馬司法書士会が、阪神大震災に被災した兵庫県司法書士会に復興支援拠出金3,000万円を寄付するため、会員から登記申請事件1件あたり50円の復興支援特別負担金の徴収する総会決議をしたところ、会員たちが、司法書士会の目的の範囲外の行為であること、司法書士会は強制加入団体であるため強制することはできないこと等を理由に、債務の不存在の確認を求める訴えを提起しました。

司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、3000万円という本件拠出金の額については、それがやや多額にすぎるのではないかという見方があり得るとしても、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。

 最判平14.4.25

判例は、目的を遂行する上で直接または間接に必要な範囲であること、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったこと、また、負担金も登記申請事件1件につき50円であることから、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないとしています。

先ほどの税理士会では、強制加入団体であるから政治団体に対する寄付は無効とされましたが、こちらの司法書士会では、震災が甚大な被害を生じさせた大災害であることや負担金の額が少ないことから、目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできないとしています。

こうして憲法の判例を見てみると、目的がどのようなものか、それに対してどのような不利益があるのかといったことについて、事件ごとに細かく利益衡量されていることがわかります。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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