前回に続き、令和6年度の兵庫県知事問題に関連して、耳にする機会が多かった「長の不信任決議」について見ていきましょう。
・普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができる(178条1項)。
・議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う(178条2項)。
・前2項の規定による不信任の議決については、議員数の3分の2以上の者が出席し、第1項の場合においてはその4分の3以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない(178条3項)。
→まず、普通地方公共団体の議会において、長の不信任の議決をしたとき、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができます。
そして、長の不信任の議決をした場合において、10日以内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があったときは、普通地方公共団体の長は、10日が経過した日又は議長から通知があった日においてその職を失います。
3項では、それぞれの議決数について定めています。これは基本書等でかみくだいて書かれていると思いますが、改めて条文レベルで整理してみましょう。まず、どちらも議員数の3分の2以上の者が出席していることが必要です。次に、第1項の場合、つまり最初の長の不信任決議の場合においては、4分の3以上の者の同意が必要になります。不信任といえ、仕事を辞めさせるわけですから慎重な判断が要求されていることがわかります。そして、第2項の場合、つまり、解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があったときは、その過半数の者の同意が必要になります。
もっとも、長としては、議会を解散しても、議会の構成が変わりにくいため、再び不信任決議をされる可能性が高いため、失職を選び、出直し選挙をすることが多くあります。実際、兵庫県の場合も、議会を解散することはせず、失職し、出直し選挙をすることになりました。
ここまでで、地方自治法における不信任決議について、把握することができました。
次に、基礎知識の一般知識対策として、長の不信任決議が実施された事例を見てみましょう。2000年以降に不信任決議が可決されたのは、都道府県で4件です(市町村は約30件ある)。本試験において、具体的な件数が問われることは少ないと思いますが、大体の目安は押さえておきましょう。
参考:不信任決議と首長の失職 | ねほりはほり聞いて!政治のことば | NHK政治マガジン