ここでは、表現の自由からアクセス権について学習します。アクセス権とは、国民がマスメディアに対して自己の意見の発表の場を提供することを要求する権利のことをいいます。アクセス権については、サンケイ新聞事件をみておきましょう。
サンケイ新聞事件
Y(サンケイ新聞社)は、昭和48年12月2日に、自民党を広告主とする意見広告を掲載しました。この意見広告は、X(共産党)を名指しにしたものでした。Xは、意見広告の内容が、共産党の名誉を毀損したものとして、Yに対して反論文の無料掲載を要求したという事案です。
判例は、「日刊全国紙による情報の提供が一般国民に対し強い影響力をもち、その記事が特定の者の名誉ないしプライバシーに重大な影響を及ぼすことがあるとしても、不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることは別論として、反論権の制度について具体的な成文法がないのに、反論権を認めるに等しいX主張のような反論文掲載請求権をたやすく認めることはできない」としました(最判昭62.4.24)。
判例に出てくる「不法行為」とは、民法709条に規定されているもので、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」というものです。不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることはあるとしても、反論権という制度がないのに、反論権を認めるに等しいことはできないとされました。新聞社にとっては、無料で広告枠を使わせるのに等しい行為であるということを考えると理解しやすいと思います。