【行政法】行政上の法律関係について、国の安全配慮義務違反などのまとめ

行政法総論
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行政法の行政上の法律関係について学習します。行政上の法律関係とは、国や地方公共団体、つまり行政と国民との間の権利義務関係のことをいいます。行政と国民との間は、公法(憲法・行政法)が適用されるのが原則ですが、私法(民法など)が適用される場面があります。ここでは、どのようなときに私法が適用されるのかみていきましょう。

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消滅時効

民法167条は、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、20年間としているのに対して、公法である会計法は、消滅時効期間を5年としているため、国の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効について、どちらの規定が適用されるかが問題となりました。

判例は、「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公正な填補を目的とする点において、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではないから、国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法30条所定の5年と解すべきではなく、民法167条により20年と解すべきである。」としました(最判昭50.2.25)。

実際にどのように出題されたか過去問をみてみましょう。

公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。(平27-9-5)

正誤:◯

不動産登記

民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」としています。不動産の物権変動について、民法177条が適用されるか、判例は結論がわかれています。

まず、旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、判例は、民法177条の適用を否定しました(最判昭28.2.18)。なお、旧自作農創設特別措置法は、戦前までの大地主制度を改め、自作農を中心とする民主的な農村社会の形成を促進するために作られた法律です。

判例は、以下の理由を述べています。「自作農創設特別措置法は、今次大戦の終結に伴い、我国農地制度の急速な民主化を図り、耕作者の地位の安定、農業生産力の発展を期して制定せられたものであつて、政府は、この目的達成のため、同法に基いて、公権力を以て同法所定の要件に従い、所謂不在地主や大地主等の所有農地を買収し、これを耕作者に売渡す権限を与えられているのである。即ち政府の同法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。」

次に、租税滞納処分に基づく土地の差押えについて、判例は、「滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である」として、民法177条の適用を肯定しています(最判昭31.4.24)。

租税滞納処分について、過去問を見てみましょう。

租税滞納処分は、国家が公権力を発動して財産所有者の意思いかんにかかわらず一方的に処分の効果を発生させる行為であるという点で、自作農創設特別措置法(当時)所定の農地買収処分に類似するものであるから、物権変動の対抗要件に関する民法の規定の適用はない。(平30-9-3)

正誤:☓

租税滞納処分は、民法が適用されます。このように、特に☓の選択肢については、何についてどのくらいの深さで知識が問われるかを意識して学習するとよいでしょう。今回の問題であれば、「租税滞納処分は、民法の適用があるかどうか」が問われています。

建築物の建築

民法234条1項は「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。」と規定しています。一方、建築法63条は「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」と規定しているため、どちらの規定が優先されるか問題となります。

判例は、「防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物、すなわち、建築基準法63条の要件に該当する建物については、直ちに民法234条1項の規定の適用が排除されるものではなく、同項により保護される採光、通風、建物の建築・修繕の便宜等の相隣土地所有者の生活利益を犠牲にしても、なお接境建築を許すだけの合理的理由、例えば、相隣者間の合意とか、同法236条所定の慣習等がある場合に限って初めて、建築基準法63条の規定が民法234条1項の規定に優先して適用される」としています(最判平元.9.19)。

結論としては、建築基準法の規定が民法の規定に優先される点をおさえておきましょう。

それでは、過去問を見てみましょう。

建築基準法において、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができるとされているところ、この規定が適用される場合、建物を築造するには、境界線から一定以上の距離を保たなければならないとする民法の規定は適用されない。(平30-9-4)

正誤:◯

公営住宅の使用関係

判例は、「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法(公法)として民法及び借家法(現借地借家法)に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法(私法)である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」としています(最判昭59.12.13)。

公法(公営住宅法と条例)が私法(民法と借地借家法)に優先して適用されますが、公法に特別の定めがない限り、私法である民法や借地借家法が適用されるということです。

それでは最後に、過去問を見てみましょう。

公営住宅の使用関係については、一般法である民法および借家法(当時)が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用されることから、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。(平30-9-1)

正誤:☓

公営住宅の使用関係については、公営住宅法などの特別法が民法や借地借家法に優先して適用されます。この問題の難しいところは、後半の「信頼関係の法理の適用がある」という部分は合っている点です。問題文の冒頭と後半だけ見て「正しい」と判断した方も少なくないと思います。

また、この選択肢は「1」というのも厄介なところです。本試験の緊張状態を考えると、この選択肢を見て「◯」と判断し(本問題は「妥当なもの」を選ぶ問題)、他の選択肢を読まないことも十分考えられます。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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