ここでは,民法の弁済の提供について解説します。
本試験対策として,弁済の提供の原則と例外を押さえておくことが重要になります。
弁済の提供の効果
債務者は,弁済の提供の時から,債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れます(492条)。
つまり,弁済の提供をすることによって,債務者は債務不履行に陥らないということです。かんたんにいうと,自分はやることはやったということです。
それでは,弁済の提供の効果を得るためには,債務者は,どの程度のことをする必要があるのでしょうか。債務不履行から逃れるためにこのくらいは必要だろうという目線を持っておきましょう。
弁済の提供の方法
弁済の提供は,債務の本旨に従って現実にしなければなりません(493条本文)。ただし,債権者があらかじめその受領を拒み,または債務の履行について債権者の行為を要するときは,弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(493条但書)。
弁済の提供の原則は,現実の提供です。
ただし,例外として以下のときは,口頭の提供で足ります。
- 債権者があらかじめその受領を拒んだとき
- 債務の履行について債権者の行為を要するとき
債権者があらかじめ受領を拒んでいるときは,「私はきちんと弁済するつもりですからね」と準備をしたことを通知すればよいといことです。そうすれば,債務者は債務不履行に陥ることはありません。
また,判例は「 債権者が契約の存在を否定する等,弁済を受領しない意思が明確と認められるときは,債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行の責を免れる」としています(最判昭32.6.5)
これで,原則(本文)の現実の提供,例外(但書)の口頭の提供,さらに判例の口頭の提供をしなくても良い場合の三段階がそろいました。
本試験では,やはり,判例の部分について問われています。
Aは,Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても,甲につき弁済期に現実の提供をしなければ,履行遅滞の責任を免れない。
令5-問32-1
正解:✕