ここでは、人権の享有主体から法人の人権について学習します。今回から、人権の享有主体に入ります。まずは、人権の享有主体について確認したあと、法人の人権についてみていきましょう。
人権の享有主体
これを受けて、国籍法の2条以下で国籍の取得について規定しています。
- 出生による国籍の取得(2条)
- 認知された子の国籍の取得(3条)
- 帰化(4条)
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる(11条)。
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ(12条)。
講学上の分類である「人権の享有主体」とは、人権が保障されている主体(人)のことです。11条から日本国民は当然に人権の享有主体となります。ここで、法人や外国人は、人権の享有主体となるかが問題となります。かんたんにいうと、法人や外国人には人権があるかということです。
法人とは、法律によって権利義務が認められたものをいいます(例:会社など)。
本試験では、法人の人権について、判例知識が問われます。
八幡製鉄所政治献金事件
八幡製鉄所の代表取締役が、同社を代表して自由民主党に政治資金を寄附しました。そこで、同社の株主が、寄附は定款に定められた事業目的の範囲外の行為であり、かつ取締役の忠実義務にも違反しており、会社に対する賠償責任が発生するとして、株主代表訴訟を提起しました。
判例は、次のように述べています。
会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によつてそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあつたとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。(最判昭45.6.24)
国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、法人にも適用されるとされました。
本試験では、法人も、「国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する」点について問われています。
会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。(平29-3-2)
正誤:◯
南九州税理士会事件
南九州税理士会が政治団体に寄付するための特別会費5,000円の徴収決議に反対し、納入を拒否した南九州税理士会の税理士が、南九州税理士会の選挙権・被選挙権を停止されました。そこで、この税理士は、税理士会の目的の範囲外であるとして、訴訟を提起しました。
判例は、次のように述べています。
(税理士)法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。
税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。(最判平8.3.19)
税理士会は強制加入団体であるため、政治団体に対して金員の寄付をすることは、目的の範囲外の行為とされました。ちなみに、行政書士会もほぼ自動的にこういったお金を集められます。本来、強制ではないものを当たり前のようにすることに対しては、さまざまな考え方ができそうです。
群馬司法書士会事件
群馬司法書士会が、阪神大震災に被災した兵庫県司法書士会に復興支援拠出金3,000万円を寄付するため、会員から登記申請事件1件あたり50円の復興支援特別負担金の徴収する総会決議をしたところ、会員たちが、司法書士会の目的の範囲外の行為であること、司法書士会は強制加入団体であるため強制することはできないこと等を理由に、債務の不存在の確認を求める訴えを提起しました。
判例は、次のように述べています。
司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、3,000万円という本件拠出金の額については、それがやや多額にすぎるのではないかという見方があり得るとしても、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。( 最判平14.4.25)
判例は、目的を遂行する上で直接または間接に必要な範囲であること、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったこと、また、負担金も登記申請事件1件につき50円であることから、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないとしています。
先ほどの税理士会では、強制加入団体であるから政治団体に対する寄付は無効とされましたが、こちらの司法書士会では、震災が甚大な被害を生じさせた大災害であることや負担金の額が少ないことから、目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできないとしています。