ここでは、表現の自由から集会の自由について学習します。集会とは、多数人が共通の目的をもって一定の場所に集まることをいいます。集会の自由も21条1項によって保障されます。
もっとも、集会や集団行動は、特定の場所に集まるため、他の権利と衝突する可能性があります。そこで、集会の自由も、公共の福祉による制約を受ける場合があります。どのような場合にどのようなことが問題になるのか、判例をみていきましょう。
皇居前広場事件
事案
Xが、皇居外苑をメーデーに使用するため許可申請したところ、不許可処分されました。そこで、Xは、不許可処分が、憲法に違反するとして出訴しました。
判旨
判例は、本件不許可処分は,「若し本件申請を許可すれば」,「外苑全域に約50万人が長時間充満することとなり,尨大[ぼうだい]な人数,長い使用時間からいって,当然公園自体が著しい損壊を受けることを予想せねばならず,かくて公園の管理保存に著しい支障を蒙るのみならず,長時間に亘り一般国民の公園としての本来の利用が全く阻害されることになる等を理由としてなされたことが認められる」としました。
また、「本件不許可処分は,Yがその管理権の範囲内に属する国民公園の管理上の必要から,本件メーデーのための集会及び示威行進に皇居外苑を使用することを許可しなかったのであって,何ら表現の自由又は団体行動権自体を制限することを目的としたものでない」として合憲としました(最判昭28.12.23)。
泉佐野市民会館事件
事案
Xらが、「関西新空港反対全国総決起集会」を開催することを企画し、市立泉佐野市民会館の使用許可の申請をしたところ、申請を不許可処分されました。そこで、Xらは、憲法21条違反を理由に争いました。
判旨
判例は、「集会の用に供される公共施設の管理者は,当該公共施設の種類に応じ,また,その規模,構造,設備等を勘案し,公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって,これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるものというべきであり,このような場合には,その危険を回避し,防止するために,その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。」として、利用を拒否できる場合について述べました。
次に、「右の制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは,基本的には,基本的人権としての集会の自由の重要性と,当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。本件条例7条による本件会館の使用の規制は,このような較量によって必要かつ合理的なものとして肯認される限りは……憲法21条に違反するものではない。」「そして,このような較量をするに当たっては,集会の自由の制約は,基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから,経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下にされなければならない……。」として、集会の自由の重要性と集会が開かられることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量することを述べました。
そして、「本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,本件会館で集会が開かれることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては……単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である……。」として、具体的な基準を示しました。
結論は、「本件不許可処分のあった当時,関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し,対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実からみて,本件集会が本件会館で開かれたならば,本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ,その結果,グループの構成員だけでなく,本件会館の職員,通行人,付近住民等の生命,身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが,具体的に明らかに予見されることを理由とするものと認められる」として、合憲としました(最判平7.3.7)。