【民法改正】共有制度の整備について、変更・管理者などのまとめ

民法
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令和3年に改正された民法のうち、令和5年度(2023年度)の各試験から出題範囲となる「共有」についてまとめます。新しく「共有物の管理者」というものができました。いきなり共有物の管理者を覚えるのもよいですが、日本の課題となっている所有者不明土地や管理不全土地の問題が背景にあるというのを知っておくと、よりイメージがわきやすいと思います。



共有物の使用

共有物の使用

第249条

1 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

使用対価の償還義務(249条2項)、善管注意義務(249条3項)が新設されました。

共有物の変更

共有物の変更

第251条 

1 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

変更の意義が明確化されました(251条1項括弧書)。

共有者が不明のときに対応するための規定が設けられました(251条2項)。

共有物の管理

共有物の管理

第252条

1 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

3 前2項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

4 共有者は、前3項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
三 建物の賃借権等 3年
四 動産の賃借権等 6箇月

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

共有者が不明などの場合に対応するための規定が新設されました(252条2項)。

共有物の管理者

共有物の管理者

第252条の2 

共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

共有物の管理者に関する条文が新設されました。

「共有物の管理に関する事項」に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者には効力を生じませんが、善意の第三者には対抗することができません(252条の2第4項)。この善意の第三者には対抗できないというのは、所有者不明の管理命令のときも出てくるので、合わせて覚えておきましょう。

裁判による共有物の分割

裁判による共有物の分割

第258条 

1 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

分割を請求するための要件に、「協議をすることができないとき」が加わりました(258条1項)。

賠償分割が明示されました(258条2項2号)。

また、債務履行確保のための規定が新設されました(258条4項)。

第258条の2 

1 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合の規定が新設されました。

共有物の全部またはその持分が相続財産に属する場合、遺産分割手続によらなければならない(共有物分割の方法をとることができない)ということです(258条の2第1項)。

相続開始の時から10年を経過したときは、共有物分割の方法をとることができます(258条の2第2項本文)。ただし、異議の申出をしたときは、遺産分割になります(258条の2第2項但書)。異議を申し出ている間に10年を経過したからといって、共有物分割の方法になっては酷ということです。

  • 遺産分割:家庭裁判所の審判
  • 共有物分割:地方裁判所の裁判

これは元々、「相続により相続人の共有となった財産について、共同相続人間に遺産の分割の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、遺産の分割の審判を求めるべきであって、共有物分割の訴えを提起することは許されない。」という判例(最判昭62.9.4)の考え方に従ったものでしたが、今回の改正で明文化されました。

初めて法律を学習したときにすでにある条文についてはそのまま理解しようと努めるものですが、学習を続けていく中で新設された条文については、どのような判例があって条文が作られたのかを理解するようになります。これもまた、法律を学習する面白さのひとつなのだと思います。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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