無効等確認訴訟(無効等確認の訴え)についてまとめています。
目次
無効等確認訴訟とは
行政事件訴訟法における「無効等確認訴訟」の位置
無効等確認訴訟は、行政事件訴訟法を「抗告訴訟」「当事者訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」の4つに分けたうち、抗告訴訟のひとつに分類されます。
「無効等確認訴訟」は、処分・裁決の「有無(有効・無効)」または「存否(存在・不存在)」の確認を求める訴えをいいます(3条4項)。
以下、疑問に持ちやすいことについて触れておきます。
「無効等確認の訴え」と「無効等確認訴訟」
「無効等確認の訴え」と「無効等確認訴訟」について、この2つは同じ意味です。条文では「無効等確認の訴え」となっていますが、基本書などでは「無効等確認訴訟」となっていることも多くあります。どちらも同じ意味で使うものだということを覚えておけば良いでしょう。
無効(等)確認の訴訟の「等」の意味
「無効(等)確認訴訟」の「等」について、疑問を持つ方もいると思います。無効等確認訴訟は、処分や裁決の「有効・無効」「存在・不存在」の確認を求めます。有効か無効かを争うだけではないので、「無効確認」ではなく、「無効(等)確認」という名前になっています。
余談:「無効等確認の訴え」の単語を切るところ
余談ですが、呼び方について、「無効等確認の訴え」(響きがわかりやすいので、「訴え」で表記しています)を切る(気持ちで息継ぎする)ところは「『無効等確認』『の訴え』」ではなく、「『無効等』『確認の訴え』」になります。
民事訴訟法には、「給付の訴え」「確認の訴え」「形成の訴え」という3つの分類があります。「無効等確認の訴え」は、「確認の訴え」の行政訴訟版なので、「『無効等』『確認の訴え』」と考えるのが妥当でしょう。また、頭の中でも「無効等を争う『確認の訴え』なんだ」と考えた方が、学習を進めるについて理解しやすいはずです(呼び方なのでどちらでも良いのですが)。
無効等確認訴訟の意義を考える
ここからようやく、無効等確認訴訟がどのような場面で役立つかを考えましょう。
行政処分は、それが違法であっても当然には無効とはならず、取り消されない限り、原則として有効と扱われます。これを「公定力」といいます。間違った課税処分がされたからといって、払わないでいいわけではなく、それを取り消してもらわない限りは(一応)有効であるということです。
また、違法な処分を取消すには、原則として「取消訴訟」を提起する必要があります。これを「取消訴訟の排他的管轄」といいます(法律の定めによって先に「審査請求が必要な場合もあります)。
しかし、取消訴訟は出訴期間が設けられており、出訴期間が過ぎてしまった場合、国民の側からは処分の効力を争うことができなくなってしまいます。これを「不可争力」といいます。これでは、違法な処分がされたにもかかわらず泣き寝入りをしなければならないといったケースが出てきてしまいます。
そこで、登場するのが「無効等確認訴訟」です。
行政処分の瑕疵が大きい場合、それは無効で、取消訴訟を提起しなくても効力を否定できると考えられています。これによって、取消訴訟の出訴期間だけでなく、取消訴訟を提起する必要があるという問題もクリアできたことになります。そこで、文字通り「これは無効ですよね?」と「確認の訴え」を提起することで、違法な処分を受けた国民は救済されます。
このことから、無効等確認訴訟は、「時機に遅れた取消訴訟」ともいわれます(お願いしていることは取消訴訟と同じだけれど、出訴期間がないということです)。
無効等確認訴訟は、このイメージを持っておくと、「出訴期間」がないということ、遅れて訴訟を提起できるため、要件が厳しめになっていて「補充性」が要求されるなどが理解しやすくなります。
訴訟要件
無効等確認訴訟は、①処分・裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者、②処分・裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、③現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものが提起することができます(36条)。
「一元説」と「二元説」
※この部分は、行政書士試験、公務員試験では発展的な内容ですが、条文を読むときに(日本語として)「どこで切って読めばいいのか」の疑問が解けると思うので記載しています。
さて、条文に番号を振るとわかりにくさが見えてきますが、無効等確認訴訟は「一元説」と「二元説」があります。国語の読点(、)の問題に近いように感じます。
- 一元説:①または②に該当するもので、かつ③を満たす者
- 二元説:①の者、②+③の者
最高裁は、「課税処分を受け、当該課税処分にかかる税金をいまだ納付していないため滞納処分を受けるおそれがある場合」に無効等確認訴訟の提起を認めています(最判昭51.4.27)。
①のみで成立しているということは、二元説と言えそうです。また、判例があるので、答えが出ているようにも感じますが、最高裁は、③に触れずに判決を出しているため、説が対立しています。
「予防的確認訴訟」と「補充的確認訴訟」
①を「予防的無効等確認訴訟」、②+③を「補充的無効等確認訴訟」をいいます。
①は、損害を受けるおそれがあるから「予防」するためなのでネーミングがわかりやすいと思います。②+③は、法律上の利益はあるけれど、それだけでは足りず、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」という厳しめの「補充性」の要件が必要になります。
「より直截的で適切な争訟形態」で判定
もっとも、近時は、「より直截的で適切な争訟形態」というもので判定しています。
最高裁は、換地処分の事案において、「換地処分の無効を前提とする従前の土地の所有権確認訴訟等の現在の法律関係に関する訴えは右紛争を解決するための争訟形態として適切なものとはいえず、むしろ当該換地処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態である」としています(最判昭62.4.17)。
また、もんじゅ訴訟においては、「当該処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合」としています(最判平4.9.22)。
【直截】
・読み方:ちょくせつ
・意味:まわりくどくない
無効等確認訴訟を題材にした問題
行政書士試験では、「無効等確認訴訟」について、記述式問題でも出題されています。
A県内の一定区域において、土地区画整理事業(これを「本件事業」という。)が計画された。それを施行するため、土地区画整理法に基づくA県知事の認可(これを「本件認可処分」という。)を受けて、土地区画整理組合(これを「本件組合」という。)が設立され、あわせて本件事業にかかる事業計画も確定された。これを受けて本件事業が施行され、工事の完了などを経て、最終的に、本件組合は、換地処分(これを「本件換地処分」という。)を行った。
Xは、本件事業の区域内の宅地につき所有権を有し、本件組合の組合員であるところ、本件換地処分は換地の配分につき違法なものであるとして、その取消しの訴えを提起しようと考えたが、同訴訟の出訴期間がすでに経過していることが判明した。
この時点において、本件換地処分の効力を争い、換地のやり直しを求めるため、Xは、①誰を被告として、②どのような行為を対象とする、③どのような訴訟(行政事件訴訟法に定められている抗告訴訟に限る。)を提起すべきか。
※太文字、番号はこちらで編集したものです。
①「本件組合を被告として」、②「本件換地処分を対象とする」、③「無効等確認訴訟を提起する」といった内容のことを答えます。