記述式問題の解法や必要な知識について、令和3年度の記述式問題を題材にして学習します。
問題44 行政法
まず、何が問われているか確認しましょう。ここでは、「この文部科学大臣の勧告は、行政手続法の定義に照らして何に該当するか」また、「誰に対して」「どのような手段をとることができるか」について、答えることがわかります。
それでは、問題文を読んでみましょう。
A大学は、学校教育法15条1項に基づき、文部科学大臣から必要な措置をとるべき旨の書面による勧告を受けています。学校教育法15条1項を見てみると、「ー法令の規定に違反していると認めるときは、当該学校に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。」とあります。
まずは、行政手続法の定義に照らして何に該当するか考えていきましょう。
ここで、行政手続法が何について定めているか確認しましょう。
行政手続法は、処分、行政指導、届出、命令等を定める手続きについて定めていることがわかりました。リズムよく、「処分・指導・届出・命令」と繰り返し口に出すとなじみやすいと思います。
「勧告」という響きから、「行政指導」であることが予想できます。
まさに、勧告が入っています。
行政指導は、「処分に該当しないもの」というのがポイントです。
「処分」とは、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」をいいます(2条2号)。行政指導は、あくまで指導であって、処分には該当しないものをいいます。少し前の言葉だと「お願いベース」という表現がしっくりくるかもしれません。
今回、A大学は、指摘のような法令違反はないとの立場で、勧告に不服をもっています。そこで、続いて、「誰に対して、どのような手段をとることができるか」について考えていきます。
行政手続法では、行政指導の中止等の求めが定められています。
本問では、この条文を参考に答えを導くことが求められています。
「誰に対して」の部分は、当該行政指導をした行政機関なので、「文部科学大臣に対して」となります。そして、「どのような手段をとることができるか」の部分は、「行政指導の中止を求めることができる」となります。
今回の問題を見ても、本試験では条文の文言に沿って、解答することが求められています。基本書等の中には、噛み砕いた表現を優先させ、文章のどこが条文でどこが条文ではないかがわかりにくいものが少なくありません。本試験対策として、条文を参照する、または条文の文言がわかりやすく書かれているものを選ぶのをおすすめします。
最後に、これまでの答えを設問の形式に沿うように、調整しましょう。
例:行政指導に該当し、文部科学大臣に対し、行政指導の中止を求めることができる。(37字)
問題45 民法
まずは設問を読んでみましょう。「Bが本権代金債権に係る債務の履行を拒むことができるのは、どのような場合か」となっています。
続いて、問題文を読んでいきましょう。
本問は、「第三者への譲渡を禁止することが約されていた」ということなので、譲渡禁止特約を題材にした問題であることがわかります。それでは、譲渡制限特約について条文を確認してみましょう。
原則として、債権は自由に譲り渡すことができます。「その性質がこれを許さないとき」というのは、たとえば、扶養請求権などがあります。
そして、当事者が債権の譲渡制限をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない、つまり、譲渡できるということです。譲渡制限の意思表示をしても債権の譲渡はできるという点をおさえておきましょう。
譲渡制限の意思表示をした債権が譲渡された場合、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人等に対しては、債務者は、債務の履行を拒むことができ、譲渡人に対する弁済など債務を消滅させる事由をもって対抗することができます。これが本問の論点です。
なお、問題では出てきていませんが、譲渡制限についてもう少し見てみましょう。
譲渡制限がされた債権が譲渡された場合、債務者は、悪意重過失の譲受人等に対して、債務の履行を拒むことができます。債務者は譲渡人に対して履行すればよいということです。ただ、債務者が債務の履行をしない場合、第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない、つまり、譲受人に債務の履行を拒むことができないということです。債務の履行をしない債務者の保護性が下がると考えるとわかりやすいと思います。
債務者としては、債務の履行をしたいけれど、譲受人とは関わりたくないということもあると思います。そこで、債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときは、金銭を供託所に供託することもできます。
供託とは、金銭などを供託所に提出して、管理を委ね、供託所がその金銭などをある人(例:ここでは譲受人)に取得させることによって、一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。一般的には、法務局が供託所として、供託を取り扱っています。
ここで、供託に触れたのは、問題文の最後に「BのAに対する弁済その他の本件代金債権に係る債務の消滅事由はなく、また、Bの本件代金債権に係る債務の供託はないものとする」と書かれているからです。つまり、466条3項の「債務を消滅させる事由」や466条の2第1項の「供託」といった事情はなく、悪意や重過失の部分について答えてほしいということです。
本問では、「Bが本件代金債権に係る債務の履行を拒むことができるのは、どのような場合か」なので、「Cが、譲渡制限を知り、又は重大な過失によって知らなかった場合」といった内容を答えます。
例:Cが、本件代金債権の譲渡制限特約について、知り、又は重大な過失によって知らなかった場合。(44文字)
参考:法務省:供託
問題46 民法
本問の設問は、「誰がCに対して損害賠償責任を負うことになるか」となっています。
それでは、問題文を頭から読んでいきましょう。
不法行為のうち、土地の工作物等の占有者及び所有者の責任が論点になっていることがわかります。ただ、行政書士試験の範囲としては少し細かい論点なので、部分点を狙っていくのが現実的といえます。
まず、不法行為の原則です。故意または過失によって他人の権利利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。現実でもっとも使われることが多い条文のひとつといえます。
この不法行為について、責任能力がない場合、使用者がいる場合、動物が損害を与えた場合などについて規定されています。今回の土地の工作物等もそのひとつです。709条以下は、細かいので全範囲を学習して余裕があったらおさえておくようにしましょう。
まず、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、占有者は、損害を賠償する責任を負います。本問では、賃借して占有しているBが責任を負います。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が損賠を賠償しなければなりません。
前述のように、現場で出題されたら難しい問題なので、占有者が最初に責任を負うこと、必要な注意をしたときは、所有者が責任を負うことの1つか2つが答えられれば十分だと思います。
例:Bが責任を負い、Bが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、Aが責任を負う。(42文字)