建設業の請負契約は,注文者が優位な地位になりやすいため,請負人に不利益な内容の契約を取り交わすことがあります。そこで,建設業法で不当な契約を禁止しています。
不当に低い請負代金の禁止
注文者は,自己の地位を不当に利用して,通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはなりません。
不当な使用資材等の購入強制の禁止
注文者は,請負契約の締結後,自己の取引上の地位を不当に利用して,その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し,これらを請負人に購入させて,その利益を害してはなりません。
国土交通大臣又は都道府県知事は,建設業者がこの規定に違反している事実があり,その事実が私的独占の禁止及び独占禁止法に違反していると認めるときは,公正取引委員会に対し,適当な措置をとるべきことを求めることができます。独占禁止法違反は,個人に対して5年以下の懲役又は500万円以下の罰金,法人に対して5億円以下の罰金が科せられます。
著しく短い工期の禁止
注文者は,注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間と比べて著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはなりません。また,「工事の工程ごとの作業」「準備に必要な日数」を明らかにして,建設工事の見積りを行うよう努めなければなりません。
そもそも,なぜ工期の適正化が必要なのかというと,建設業は全産業平均と比較して,年間300時間以上長時間労働している現状があるからです。
なお,発注者がこの規定に違反した場合において,特に必要があると認めるときは,免許権者は(国土交通大臣・都道府県知事)は,発注者に対して必要な勧告ができます。また,勧告を受けた発注者がその勧告に従わないときは,その旨を公表することができます。
一括下請負の禁止
建設業者は,請け負った建設工事を,いかなる方法をもってするかを問わず,一括して他人に請け負わせてはなりません。いわゆる丸投げの禁止です。
なぜ,丸投げが禁止されているのかというと,工事責任の所在の問題があるからです。また,注文者が現場に携わらない業者に費用を負担しなければならない問題があるからです。