今回のテーマは、自然災害です。
それでは、実際に出題された問題を見てみましょう。
次の図5中の①〜⑤は、自然災害の影響を受ける大西洋周辺のいくつかの地域を示したものである。また、後の文JとKは、いくつかの地域で発生する自然災害について述べたものである。これらのうち、JとKの両方が当てはまる地域と、Jのみが当てはまる地域を選ぶ問題です。
今回は、①〜⑤の地域が示されていますが、これらの地域について、点で知識を覚えようとすると、次に違う角度から聞かれたときに応用できなくなってしまうので、火山や熱帯低気圧がどのような場所でできるのかといった大枠から考えてみましょう。
火山とは、火山活動によって生じた地形です。火山の多くは、①狭まる境界の沈み込み帯、②広がる境界の海嶺、③プレートとは無関係にマグマが噴出するホットスポットなどに分布します。
ここで、プレートについておさらいしましょう。
地球の内部は、地殻・マントル・核に分類できます。このうち、地殻と上部マントルの部分を合わせた部分をプレートといいます。地理では、地球の表層の部分と考えて間違いないでしょう。
地球には、多くのプレートがあります。そして、隣り合うプレートの動く向きによって、広がる境界、狭まる境界、ずれる境界の3つに分類できます。
参考:大陸が移動するしくみ | NHK for School
広がる境界は、地球内部のマントルが上昇する力などにより、プレートが互いに広がっていく境界です。大陸では地溝となり、海底では海嶺となります。そして、地溝と海嶺からマグマが噴き出し、火山ができます。
狭まる境界は、プレートが互いに近づく境界です。このとき、一方の海洋プレートがもう一方の大陸プレートの下に沈み込む沈み込み帯と、プレート同士が衝突する衝突帯があります。このうち、沈み込み帯で は、重い海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み、地球内部の高圧・高温な環境にさらされ、加熱されます。この加熱によって生じた水分やガスによってマントルが部分的に溶け、マグマを形成します。このマグマが地殻を通って上昇し、火山が形成されます。
沈み込み帯では、沈み込む部分に海底が深い海溝が形成されます。マリアナ海溝などが有名です。
また、海溝に沿った大陸プレート側では、弧状列島が形成されます。日本列島はそのひとつです。
大陸プレート同士が衝突する衝突帯では、衝突した部分が山脈になります。ヒマラヤ山脈はそのひとつです。
なお、今回は、火山についてなので、ずれる境界は省略します。
代わりにホットスポットを見てみましょう。ホットスポットは、マントルの深部の固定されたマグマの供給源のことをいいます。ホットスポットからマグマが上昇し、火山を形成します。広がる境界でもなく狭まる境界でもなく、突然あるマグマの供給源、お肌にできるニキビを想像すると、少し理解できるかもしれません。
ホットスポットによって形成された有名な場所は、ハワイ諸島です。
熱帯低気圧は、熱帯や亜熱帯で発生する低気圧で、等圧線が同心円を描くなどの特徴をもつものをいいます。発達すると、太平洋側では台風、カリブ海やメキシコ湾ではハリケーン、インド洋やベンガル湾ではサイクロンなどと呼ばれます。
参考:気象庁「台風、熱帯低気圧、温帯低気圧は、どうちがうの?」
熱帯低気圧が発生するには、海水温が26.5度以上であることが必要です。そのため、寒流の影響を受ける地域では発生しません。海流は、北半球では時計回り、南半球では反時計回りに流れるので、北極や南極から流れてくる寒流は、大陸の西海岸に流れることがわかります。なお、海流の流れについては、別の記事(海流)をご参照ください。(概要欄にリンクを貼っておきます)。
これらの情報を参考に問題を見てみましょう。
まずは、火山が当てはまるものを探します。
①、カリブ海東部は、大陸プレートである北アメリカプレートがカリブプレートに部分的に沈み込むことによって、プエルトリコ海溝が形成されています。海溝があるので、火山ができます。気をつけたいのは、北アメリカプレートもカリブプレートも大陸プレートである点です。日本列島のような典型的な沈み込みではないため、ここでは「部分的に沈み込む」という表現を使いました。
②はブラジル楯状地、③と④はアフリカ楯状地、どちらも先カンブリア時代の基盤岩が露出する地域で、なだらかな地形なのが特徴です。火山はありません。
⑤、イタリア半島付近は、アフリカプレートがユーラシアプレートに沈み込み、火山を形成しています。なお、アフリカプレートは大陸部分と海洋部分を含むプレートで、海洋部分がユーラシアプレートに沈み込んでいます。地理としては、イタリア半島は火山が多いと押さえておけばよいでしょう。
これで、①と⑤が火山が多いことがわかりました。
次に、熱帯低気圧が当てはまるものを探します。
①、カリブ海は、熱帯低気圧が発達したハリケーンの被害が多い場所です。
②と③について、南半球の大西洋は、南極からのベンゲラ海流の影響が強く、海面温度が低いために熱帯低気圧は発生しません。
④、寒流であるカナリア海流が低緯度に向かって流れてくるので、熱帯低気圧は発生しません。
⑤、地中海は、海水温が十分に高くないため、熱帯低気圧は発生しません。
以上のことから、JとK、火山と熱帯低気圧の両方に当てはまる地域は、①。
J、火山のみに当てはまる地域は⑤であることがわかります。