今回のテーマは、海流です。
それでは、実際に出題された問題を見てみましょう。
次の図2中のアとイは、南北アメリカにおけるサンゴ礁とマングローブのいずれかの分布を示したものである。また、後の図3は、主な海流を示したものである。マングローブと海流の向きとの正しい組み合わせを選ぶ問題です。
まずは、サンゴ礁とマングローブについて考えるところからはじめましょう。
サンゴ礁は、サンゴによって作られた地形です。
サンゴは、25度から30度くらいの高い水温、水深20mほどの浅くてきれいな海に生息します。
日本でサンゴがきれいというと沖縄の海を想像する方が多いと思います。
また、オーストラリアのグレートバリアリーフ、
カリブ海にあるベリーズもバリアリーフが有名です。
マングローブは、熱帯や亜熱帯の汽水、つまり海水と淡水が混ざった水の湿地に生息する植物の総称です。マングローブという植物があるわけではない点に注意しましょう。
日本では、沖縄にマングローブ林があります。
また、バングラデシュの「シュンドルボン」は世界最大のマングローブ林として世界遺産に登録されています。
参考:ISME「マングローブとは?|マングローブ生態系の重要性」
ここまでで、サンゴ礁とマングローブの特徴がわかりました。
次は、海流について考えてみましょう。海流について考えるとき、風の流れを知る必要があります。あくまで地理の範囲にとどめるとすると、赤道付近は、気温が高く、常に上昇気流が発生し、低圧帯となっています。そして、上昇した空気は、緯度30度くらいの亜熱帯高圧帯から下降気流が吹き出します。
このとき、地球の自転の影響を受け、亜熱帯高圧帯から赤道に向かって北半球では北東から、南半球では南東から貿易風が吹きます。同様に、亜熱帯高圧帯から亜寒帯低圧帯に向かって北半球では南西から、南半球では北西から偏西風が吹きます。
少し遠回りしましたが、北半球では時計周りの、南半球では反時計周りの風の流れができます。そして、この風の流れによって、表層の海流が生まれます。つまり、北半球では時計周りに、南半球では反時計回りの海流となります。
それでは、海の温度を決める要因は何でしょうか。それは、その海流がどこから来たかです。たとえば、北半球で考えると、赤道から流れてきた海流は温かく暖流といいます。時計でいうと、6時から12時の方向です。
そして、北極から流れてきた海流は冷たく寒流といいます。時計でいうと、0時から6時の方向です。このように考えると、赤道から暖かい海流が流れてきた沖縄の海でサンゴ礁が見られるのがよくわかります。また、南半球のオーストラリアも、赤道から反時計回りの暖流の影響を受け、グレートバリアリーフなどのサンゴ礁が見られる理由がわかります。
以上のことから、大陸の東側は暖流が流れているということもできます。
反対に、大陸の西側は寒流の影響を受け、サンゴ礁は育たたないといえます。
これらの情報を参考に、問題を見てみましょう。
サンゴ礁は温かい水温のところで育つ、マングローブは熱帯や亜熱帯の汽水の湿地に生息するということがわかりました。あとは、どこが温かいか、どこが湿地かがわかればよいということになります。
まずは、どの方向に海流が流れるかの目処を知るために、赤道に印をつけましょう。
これで、どの方向に海流が流れるかがわかります。北半球では時計回りに、南半球では反時計回りになる「AからB」が海流の向きになります。
そして、アとイを見ると、アは海岸の西側にも分布しています。北半球において、海岸の西側は北極からの寒流(ここではカリフォルニア海流)が流れてくるため、サンゴ礁は形成されません。イを見ると、暖流が流れるカリブ海に多く分布していることがわかります。また、アは熱帯のブラジルに多く分布していることがわかります。
この問題は、サンゴ礁がカリブ海に多くあるということで、サンゴ礁はイであることがわかり、マングローブがアであることがわかります。
あとは海流について、前述の知識を持つことで解けるようになっています。また、もしサンゴ礁がカリブ海にあることを知らない場合は、海流の流れから暖流と寒流を予想し、答えを導けるようになっています。いずれにせよ、海流がキーになっていることがわかります。