社会保険に関する一般常識から確定拠出年金法について学習します。前回の確定給付企業年金との違いを意識しながらみていきましょう。
第1章 総則
目的
確定拠出年金は、確定した拠出金に対して、高齢期においてその結果に基づいた給付が受けられる年金について定めた法律です。前回の確定給付企業年金も、公的年金の給付以外の年金を自主的な努力によってつくるものですが、確定給付企業年金は、給付が確定した企業年金であるのに対して、確定拠出年金は、拠出額が確定しているだけで、運用結果に基づいた給付を受けることができる点が異なります。
定義
「確定拠出年金」とは、企業型年金及び個人型年金をいう(2条1項)。
「企業型年金」とは、厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して、実施する年金制度をいう(2条2項)。
「個人型年金」とは、連合会が、実施する年金制度をいう(2条3項)。
「個人別管理資産」とは、企業型年金加入者若しくは企業型年金加入者であった者又は個人型年金加入者若しくは個人型年金加入者であった者に支給する給付に充てるべきものとして、一の企業型年金又は個人型年金において積み立てられている資産をいう(2条12項)。
前回の確定給付企業年金は、名前が表すように企業年金です。今回の確定拠出年金は、企業型年金と個人型年金のふたつがあります。
第2章 企業型年金
規約の承認
企業型年金は、いわゆる「企業型DC」(Defined Contribution Plan)と呼ばれるものです。試験対策として企業型DCという名称を覚える必要はありませんが、名称を聞いたことがある方は、企業型年金のことを意味しているのだと考えましょう。
運営管理業務の委託
確定拠出年金運営管理機関とは、登録を受けて確定拠出年金運営管理業を営む者のことをいいます。銀行などの金融機関を想像するとわかりやすいと思います。
企業型年金加入者
企業型年金加入者の資格の得喪に関する特例
同時に2以上の企業型年金の企業型年金加入者となる資格を有する者の取扱い
同時に2以上の企業型年金の企業型年金加入者となる資格を有する者は、その者の選択する一の企業型年金以外の企業型年金の企業型年金加入者としないものとする(13条1項)。
前項の選択は、その者が二以上の企業型年金の企業型年金加入者となる資格を有するに至った日から起算して10日以内にしなければならない(同条2項)。
事業主掛金及び企業型年金加入者掛金
事業主は、年1回以上、定期的に掛金を拠出する(19条1項)。
事業主掛金の額は、企業型年金規約で定めるものとする(19条2項本文)。
企業型年金加入者は、政令で定める基準に従い企業型年金規約で定めるところにより、年1回以上、定期的に自ら掛金を拠出することができる(19条3項)。
企業型年金加入者掛金の額は、企業型年金規約で定めるところにより、企業型年金加入者が決定し、又は変更する(19条4項)。
拠出限度額
拠出限度額について、政令を確認しましょう。
① 企業型年金加入者であって、他制度加入者以外のもの 55000円
② 企業型年金加入者であって、他制度加入者であるもの 55000円から他制度掛金相当額を控除した額
企業型年金加入者に係る1年間の事業主掛金の額の総額は、原則55000円です。そして、確定給付企業年金など他制度に加入しているものは、55000円から他制度掛金相当額を控除した額となります。
事業主掛金の納付
企業型年金加入者掛金の納付
企業型年金加入者掛金の源泉控除
企業型年金加入者掛金の納付は、健康保険法などと同じように考えることができます。
給付の種類
① 老齢給付金
② 障害給付金
③ 死亡一時金
以下、老齢給付金について、かんたんにみておきましょう。
給付の額
支給要件
企業型年金加入者であった者が、それぞれ各号に定める年数又は月数以上の通算加入者等期間を有するときは、その者は、企業型記録関連運営管理機関等に老齢給付金の支給を請求することができる(33条1項本文)。
① 60歳以上61歳未満の者 10年
② 61歳以上62歳未満の者 8年
③ 62歳以上63歳未満の者 6年
④ 63歳以上64歳未満の者 4年
⑤ 64歳以上65歳未満の者 2年
⑥ 65歳以上の者 1月
支給要件について、年数や月数まで覚える必要はありませんが、企業型年金加入者であった者が、一定の通算加入者等期間を有するときは、老齢給付金の請求をすることができます。
75歳到達時の支給
支給の方法
老齢給付金は、年金として支給する(35条1項)。
老齢給付金は、企業型年金規約でその全部又は一部を一時金として支給することができることを定めた場合には、企業型年金規約で定めるところにより、一時金として支給することができる(35条2項)。
確定給付企業年金と同じように考えることができます。
失権
① 受給権者が死亡したとき。
② 当該企業型年金の障害給付金の受給権者となったとき。
③ 当該企業型年金に個人別管理資産がなくなったとき。
確定拠出年金は、個人が自己の責任において運用の指図を行い、その結果に基づいた給付を受けるため、個人別管理資産がなくなったときは、受給権は消滅します。
他の制度の資産の移換
移換について、確定給付企業年金と同じように考えることができます。
第3章 個人型年金
規約の承認
個人型年金は、「iDeCo」(individual-type Defined Contribution pension plan)と呼ばれるものです。
運営管理業務の委託
企業型年金が委託することができるのに対して、個人型年金は、委託しなければならない点に注意しましょう。連合会が運用するのは制度になじまないことを考えるとわかりやすいと思います。
個人型年金加入者
① 国民年金法第1号被保険者(保険料免除者を除く。)
② 国民年金法第2号被保険者(企業型掛金拠出者等を除く。)
③ 国民年金法第3号被保険者
④ 任意加入被保険者
整理しましょう。個人型年金は、原則的に誰でも加入者となることができます。
1号について、保険料免除者は、1階にあたる公的年金部分が免除されているほどなので、3階部分の個人型年金の加入者となることはできません。
2号について、企業型年金に加入している者も個人型年金に加入することはできますが、企業型年金で掛金を拠出する企業型年金加入者は、個人型年金の加入者となることはできません。掛金は全額所得控除となるため、公平性の観点から、一方しかできないと考えるとわかりやすいと思います。
届出
個人型年金加入者掛金
個人型年金加入者は、年1回以上、定期的に掛金を拠出する(68条1項)。
個人型年金加入者掛金の額は、個人型年金規約で定めるところにより、個人型年金加入者が決定し、又は変更する(68条2項)。
個人型年金は、名前が表すように、原則として個人が掛金を拠出します。例外として中小事業主掛金というものありますが、試験対策上割愛します。
拠出限度額
拠出限度額について、政令をみてみましょう。
政令で定める額は、個人型年金加入者期間の計算の基礎となる期間の各月の末日における次の各号に掲げる個人型年金加入者の区分に応じて当該各号に定める額を合計した額とする(政令36条)。
① 第1号加入者及び第4号加入者[任意加入被保険者] 68,000円
② 第2号加入者であって、次号から第5号までに掲げる者以外のもの 23,000円
③ 第2号加入者であって、企業型年金加入者であるもの(次号に掲げる者を除く。) 20,000円
④ 第2号加入者であって、他制度加入者であるもの 20,000円
⑤ 第2号加入者であって、第2号厚生年金被保険者[国家公務員]又は第3号厚生年金被保険者[地方公務員]であるもの 20,000円
⑥ 第3号加入者 23,000円
ここでいう第1号などは、個人型年金加入者の種別です。基本的には、国民年金法の種別に対応しており、第4号は任意加入被保険者となります(国民年金法は第4号被保険者はありません)。
1号と4号(基礎年金のみの方)は68,000円、2号と3号(会社勤めやその被扶養配偶者)は23,000円、企業型年金など他制度加入者である方は20,000円となります。
個人型年金加入者掛金の納付
個人型年金加入者は、個人型年金規約で定めるところにより、個人型年金加入者掛金を連合会に納付するものとする(70条1項)。
第2号加入者は、納付をその使用される厚生年金適用事業所の事業主を介して行うことができる(70条2項)。
連合会は、納付を受けたときは、各個人型年金加入者に係る個人型年金加入者掛金の額を個人型記録関連運営管理機関に通知しなければならない(70条4項)。
個人型年金加入者掛金の源泉控除
個人型年金加入者は、個人型年金加入者掛金を連合会に納付します。第2号加入者、つまり、会社員等の方は、事業主を介して行うことができます。この場合、毎月のお給料から天引きされます。
第4章 個人別管理資産の移換
個人別管理資産の移換
条文は省略しますが、企業型年金加入者となった者の個人別管理資産の移換、個人型年金加入者となった者等の個人別管理資産の移換が認められています。
- 個人型年金→企業型年金
- 企業型年金→個人型年金
第5章 確定拠出年金についての税制上の措置等
※省略
第6章 確定拠出年金運営管理機関
※省略
第7章 雑則
※省略
第8章 罰則
※省略