厚生年金保険法の脱退一時金について学習します。脱退一時金は、国民年金法と同じく附則で定められています。難易度が高くないため、他の給付と合わせて見ていきます。
日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給
当分の間、被保険者期間が6月以上である日本国籍を有しない者(国民年金の被保険者でないものに限る。)であって、第42条第2号[保険料納付済期間等が10年以上あること]に該当しないものその他これに準ずるものとして政令で定めるものは、脱退一時金の支給を請求することができる。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない(附則29条1項)。
① 日本国内に住所を有するとき。
② 障害厚生年金その他政令で定める保険給付の受給権を有したことがあるとき。
③ 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあっては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなった日)から起算して2年を経過しているとき。
前項の請求があったときは、その請求をした者に脱退一時金を支給する(附則29条2項)。
脱退一時金の額は、被保険者であった期間に応じて、その期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。)に支給率を乗じて得た額とする(附則29条3項)。
前項の支給率は、最終月(最後に被保険者の資格を喪失した日の属する月の前月をいう。以下この項において同じ。)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月から8月までの場合にあっては、前々年10月の保険料率)に2分の1を乗じて得た率に、被保険者であった期間に応じて政令で定める数[6〜60]を乗じて得た率とし、その率に小数点以下1位未満の端数があるときは、これを四捨五入する(附則29条3項、政令12条の2)。
脱退一時金の支給を受けたときは、支給を受けた者は、その額の計算の基礎となった被保険者であった期間は、被保険者でなかったものとみなす(附則29条5項)。
厚生労働大臣による脱退一時金に関する処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる(附則29条6項)。
国民年金法と同じように考えることができます。
脱退一時金の額について、国民年金法は、基準月の属する年度における保険料の額に2分の1を乗じて得た額に保険料納付済期間等の月数に応じて政令で定める数[6〜60]を乗じて得た額でしたが、厚生年金保険法は、平均標準報酬額に支給率を乗じて得た額となっており、この支給率は、最終月の属する年の前年10月の保険料率に2分の1を乗じて得た率に、被保険者であった期間に応じて政令で定める数を乗じて得た率となっています。
- 国年の例:保険料の額×2分の1×60
- 厚年の例:平均標準報酬額×支給率(保険料率×2分の1×60)
平均標準報酬額に保険料率を掛けると保険料の額になるので、実質的に同じです。本試験でもそれほど問われる部分ではないので、ひととおり確認しておきましょう。
また、国民年金法と同じく、脱退一時金に関する処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができます。