労働安全衛生法の総則について解説します。
※リライト中です。
目的
・この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする(1条)。
参考:安全・衛生 |厚生労働省
定義
・労働安全衛生法において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる(2条各号)。
・労働災害 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
・労働者 労働基準法第9条に規定する労働者をいう。
→労働者の定義は、労働基準法と同じです。労働安全衛生法は、労働基準法から分化してできたイメージを持つと理解しやすいと思います。
「事業者」とは法人企業であれば当該法人、個人企業であれば事業経営主を指している(昭47.9.18発基91号)。
事業者は、法人の場合は法人そのもの、個人企業の場合は事業主個人のことです。労働基準法に出てきた「使用者」の定義「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と混同しないように気をつけましょう。
・化学物質 元素及び化合物をいう。
・作業環境測定 作業環境の実態をは握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング及び分析(解析を含む。)をいう。
事業者等の責務
・事業者は、単に労働安全衛生法で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない(3条1項)。
・機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない(3条2項)。
・建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない(3条3項)。
・労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない(4条)。
→事業者や労働者などそれぞれについての責務が定められています。
事業者に関する規定の適用
・2以上の建設業に属する事業の事業者が、一の場所において行われる当該事業の仕事を共同連帯して請け負った場合においては、そのうちの1人を代表者として定め、これを都道府県労働局長に届け出なければならない(5条1項)。
→いわゆるジョイントベンチャーについて定めた条文です。仕事を共同連帯して請け負った場合は、責任の所在が曖昧になってしまうため、そのうちの1人を代表者として定め、都道府県労働局長に届け出ることとされています。
・第1項に規定する場合においては、当該事業を代表者のみの事業と、当該代表者のみを当該事業の事業者と、当該事業の仕事に従事する労働者を当該代表者のみが使用する労働者とそれぞれみなして、この法律を適用する(5条4項)。
→補足します。私は最初、これが何を言っているのかわかりませんでした。条文を分解しましょう。前述のように、仕事を共同連帯して請け負った場合は、責任の所在が曖昧になってしまうため、そのうちの1人を代表者として定める必要がありました。その結果について、定めています。
①当該事業、つまり共同連帯して請け負った事業の仕事を「代表者のみの事業」とみなします。共同連帯して請け負っているにもかかわらず、代表者として定めた者の事業とします。
②当該代表者、つまり代表者として定めた者のみ「当該事業の事業者」とみなします。
③当該事業の仕事に従事する労働者は、当該代表者、つまり代表者として定めた者が使用する労働者とみなします。
条文だけ読むととてもややこしく見えますが、労働安全衛生法としては、誰が代表者なのかはっきりしない状態を避けたいのです。つまり、労働災害が起きたときに誰が責任をとるべき存在なのかを決めておきたいということです。
- 当該事業を代表者のみの事業とみなす
- 当該代表者のみを当該事業の事業者とみなす
- 当該事業の仕事に従事する労働者を当該代表者のみが使用する労働者とみなす
こうすると、条文が読みやすくなります。