労働基準法の雑則について解説します。雑則とは、細かい事項についての規則です。本試験対策としては、周知義務や労働者名簿、賃金台帳、時効をおさえておきましょう。
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法令等の周知義務
使用者は、労働基準法及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、労使協定並びに労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することによって、労働者に周知させなければならない(106条1項)。
労働者名簿
・使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない(107条1項)。
・記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければならない(107条2項)。
→労働者名簿の作成が義務付けられています。
賃金台帳
・使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない(108条)。
→賃金台帳の作成が義務付けられています。細かい項目についておさえる必要はありませんが、名簿については日日雇い入れられる者は除かれていましたが、賃金台帳は日日雇い入れられる者も含まれる点はおさえておきましょう。金銭の管理というのを考えれば腑に落ちると思います。
記録の保存
・使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない(109条)。
付加金の支払
・裁判所は、賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる(114条本文)。
→たとえば、100万円の未払金がある場合、同一額の付加金つまり、もう100万円、合計200万円の支払を命ずることができるということです。
ただし、この請求は、違反のあった時から5年以内にしなければならない(114条但書)。
時効
・この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によって消滅する(115条)。
当分の間、「賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から3年間」とする(法附則115条3項)。
→時効についてです。本則で定められた部分と附則で定められた部分が混ざっているので整理します。
- 賃金の請求権:5年間
- 災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。):2年間
まず、賃金に関しては保護性が高いため5年間だとおさえましょう。そして、それ以外の請求権は2年間となります。これが原則です。「その他の請求権」で賃金の請求権を除くものには、たとえば、退職時の証明や金品の返還、年次有給休暇請求権などがあります。
次に、附則部分です。
- 退職手当の請求権:5年間
- 賃金(退職手当を除く。)の請求権:3年間
- 災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。):2年間
賃金のうち、退職手当の請求権については5年間で同じです。これは、退職手当は紛争が生じやすいことや退職労働者の権利行使は必ずしも容易であるとはいえないことが理由としてあげられます。
(退職手当を除く)賃金の請求権については、2020年に民法が改正される前までは2年間でした。つまりその他の請求権と同じということです。そして、改正民法では、契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年間とされました。そこで、賃金の請求権も5年間とされました。しかし、これまで2年だったものが、いきなり5年になると使用者側にとっても酷であるということから、当面の間は3年間とされています。
本試験対策としては、ここまでの理解で問題ありません。
参考「厚生労働省:賃金等請求権の消滅時効の在り方について(論点の整理)」
適用除外