国民年金法の給付から通則について学習します。給付は、全6節で構成されています。今回は、給付の全体について定める通則をみていきましょう。
目次
給付の種類
国民年金法による給付(以下単に「給付」という。)は、次のとおりとする(15条各号)。
①老齢基礎年金
②障害基礎年金
③遺族基礎年金
④付加年金、寡婦年金及び死亡一時金
給付では、これらについてひとつずつ学習していきます。
裁定
調整期間
これによって、給付額が調整されます。
端数処理
年金の支給期間及び支払期月
年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする(18条1項)。
年金給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた日の属する月の翌月からその事由が消滅した日の属する月までの分の支給を停止する。ただし、これらの日が同じ月に属する場合は、支給を停止しない(18条2項)。
年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれの前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、その支払期月でない月であっても、支払うものとする(18条3項)。
2月期支払の年金の加算
支払額に1円未満の端数が生じたときは、これを切り捨てるものとする(18条の2第1項)。
毎年3月から翌年2月までの間において切り捨てた金額の合計額(1円未満の端数が生じたときは、これを切り捨てた額)については、これを当該2月の支払期月の年金額に加算するものとする(18条の2第2項)。
支払額に1円未満の端数が生じたときは、切り捨てます。この切り捨てた金額の合計額は、2月に支払われる年金額に加算されます。
死亡の推定
死亡の推定は、労災保険と同様の規定がされています。民法の死亡の推定だと1年間なので、他の資格試験で民法を学習している方は混同しないように気をつけましょう。
失踪宣告の場合の取扱い
これによって、保険料納付要件や遺族の生計維持要件は、行方不明となった当時で判断します。
未支給年金
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる(19条1項)。
未支給の年金を受けるべき者の順位は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の3親等内の親族の順序とする(19条4項、政令4条の3の2)。
未支給の年金を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす(19条5項)。
未支給年金は、他の法律と同じように考えることができます。ただし、労災法と異なり、「3親等内の親族」が入っている点に注意しましょう。
併給の調整
併給の調整については、厚生年金保険法を学習し全体像がわからないと理解しにくいので、一旦保留しておきます。今の時点では、年金は併給の調整があるという点をおさえておきましょう。
前項の規定によりその支給を停止するものとされた年金給付の受給権者は、同項の規定にかかわらず、その支給の停止の解除を申請することができる(20条2項本文)。
第2項の申請は、いつでも、将来に向かって撤回することができる(20条4項)。
受給権者の申出による支給停止
年金給付は、その受給権者の申出により、その全額の支給を停止する(20条の2第1項本文)。
支給停止の申出は、いつでも、将来に向かって撤回することができる(20条の2第3項)。
支給を停止されている年金給付は、政令で定める法令の規定の適用については、その支給を停止されていないものとみなす(20条の2第4項)。
年金給付は、申出によって、支給を停止することができます。少し理解しにくいかもしれませんが、お金には困っていないから停止することができるということです。また、停止したけれど、将来に向かって撤回することもできます。
年金の支払の調整
乙年金の受給権者が甲年金の受給権を取得したため乙年金の受給権が消滅し、又は同一人に対して乙年金の支給を停止して甲年金を支給すべき場合において、乙年金の受給権が消滅し、又は乙年金の支給を停止すべき事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として、乙年金の支払が行われたときは、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなす(21条1項)。
年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたときは、その支払われた年金は、その後に支払うべき年金の内払とみなすことができる。障害基礎年金又は遺族基礎年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として減額しない額の障害基礎年金又は遺族基礎年金が支払われた場合における当該障害基礎年金又は遺族基礎年金の当該減額すべきであった部分についても、同様とする(21条2項)。
同一人に対して厚生年金保険法による年金たる保険給付(厚生労働大臣が支給するものに限る。以下この項において同じ。)の支給を停止して年金給付を支給すべき場合において、年金給付を支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として同法による年金たる保険給付の支払が行われたときは、その支払われた同法による年金たる保険給付は、年金給付の内払とみなすことができる(21条3項)。
年金給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以降の分として当該年金給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下この条において「返還金債権」という。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき年金給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該年金給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる(21条の2)。
年金の支払の調整は、条文が複雑に見えますが、消滅や停止されていた年金が支払われたときは、内払とみなすことができるということです。また、返還金債権があるときは、充当することができます。このあたりは他の法律と同様に考えることができます。
損害賠償請求権
政府は、障害若しくは死亡又はこれらの直接の原因となった事故が第三者の行為によって生じた場合において、給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する(22条1項)。
受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、給付を行う責を免かれる(22条2項)。
損害賠償請求権についても、他の法律と同様に考えることができます。
不正利得の徴収
受給権の保護
原則として、年金は譲り渡し、担保に供し、または差しおさえることができません。ただし、老齢基礎年金と付加年金に関しては、所得と同じように考えることができるので、国税滞納処分により差しおさえることができるようになっています。
公課の禁止
先ほどと同じように、老齢基礎年金及び付加年金については課税されます。今の段階では、老齢基礎年金や付加年金がどのようなものか学習していないので、老齢基礎年金と付加年金を学習したあとで、また復習するようにしましょう。