商業登記法の登記手続から取得条項付株式の定めについて学習します。
取得条項付株式の定め
取得条項付株式は、株式会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができる旨を定めている株式のことをいいます。取得請求権付株式とは逆の方向であることを意識しましょう。
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⑦ 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
取得条項付株式の定めは、発行する株式の内容として登記をします。
手続
③ 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項(略)
取得条項付株式の定めは、定款の記載事項です。
⑥ 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項(略)
種類株式についても同様の規定がされています。
取得条項付株式の定めを設定・変更する定款の変更を行う場合、株主全員の同意が必要になります。取得条項付株式は、株主にとって重大な不利益が生じるため、株主全員の同意が求められます。取得請求権付株式は特別決議、譲渡制限株式は特殊決議であった点と比較しましょう。
また、取得条項付株式は、設定だけでなく変更も株主全員の同意が必要になります。たとえば、変更前の条件であれば取得される可能性が低かったのに、変更後の条件は取得される可能性が高いということを考えると理解しやすいと思います。もっとも、逆の場合も考えられますが、変更は一律で株主全員の同意と理解記憶するのをおすすめします。譲渡制限株式の変更は特別決議であった点と比較しましょう。譲渡制限株式は、譲渡制限があることは変わらず、決議機関が変わるだけといったように、不利益の程度がさほど変わらないと考えると、この差が理解しやすいと思います。
種類株式発行会社では、まず、株主総会の特別決議が必要になります。
その上で、種類株式の株主全員の同意が必要になります。譲渡制限株式のときと同じように考えることができます。
登記申請
(1)登記の事由
「発行する株式の内容の設定」とします。変更や廃止の場合は、「設定」の部分をそれぞれ「変更」「廃止」とします。種類株式発行会社では、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更」となります。記載事項が異なるのは、登記される場所が異なるからです。
(2)登記事項
設定年月日と「変更」(*「設定」の場合でも「変更」を用いるものとされています)とし、「発行する株式の内容 当会社は、◯◯のときに、当会社の株式を1株3万円で取得することができる。」のように記載します。文言については、記述式問題の株主総会議事録等に記載されているので、それを書き写しましょう。
(3)登録免許税
登録免許税は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第1.24(1)(ツ))。
(4)添付書面
総株主の同意があったことを証する書面を添付します(46条1項)。
また、株主リストの添付が必要になります(規則61条3項)。
廃止の場合は、株主総会議事録と株主リストを添付します(46条2項、規則61条3項)。
種類株式発行会社では、種類株主総会議事録と株主リスト、種類株主全員の同意があったことを証する書面と株主リストを添付します(46条1項、2項、規則61条2項、3項)。
代理人によって登記を申請するには、委任状の添付が必要になります(18条)。
(5)記載例
登記の事由 | 発行する株式の内容の設定 |
登記事項 | 令和◯年◯月◯日変更 発行する株式の内容 当会社は、◯◯のときに、当会社の株式を1株3万円で取得することができる。 |
登録免許税 | 3万円 |
添付書面 | 総株主の同意があったことを証する書面 1通 株主リスト 1通 委任状 1通 |