会社法の株式会社の株式から総則について学習します。
第2章「株式」は、全10節で構成されています。
- 第1節 総則
- 第2節 株主名簿
- 第3節 株式の譲渡等
- 第4節 株式会社による自己の株式の取得
- 第5節 株式の併合
- 第6節 単元株式数
- 第7節 株主に対する通知の省略等
- 第8節 募集株式の発行等
- 第9節 株券
- 第10節 雑則
まずは、株式の全体について定めている総則をみていきましょう。
目次
株主の責任
株式会社は有限責任となっています。
株主の権利
株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する(105条1項)。
① 剰余金の配当を受ける権利
② 残余財産の分配を受ける権利
③ 株主総会における議決権
株主に前項第1号及び第2号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない(同条2項)。
株主の権利が害されるため、剰余金の配当を受ける権利と残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは無効となります。
共有者による権利の行使
これは、会社の事務処理上の便宜を図るための規定です。そのため、会社が権利を行使することに同意した場合は、この限りでない、つまり、行使することができます。
株式の内容についての特別の定め
① 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
② 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
③ 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
① 譲渡制限株式
② 取得請求権付株式
③ 取得条項付株式
異なる種類の株式
① 剰余金の配当
② 残余財産の分配
③ 株主総会において議決権を行使することができる事項
④ 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
⑤ 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
⑥ 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
⑦ 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
⑧ 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
⑨ 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。)又は監査役を選任すること。
株式会社は、異なる種類の株式を発行することができます。
9号について、株式株式は、種類株主総会において取締役または監査役を選任することができる株式を発行することができます。ただし、指名委員会等設置会社では指名委員会が選任し、公開会社は株式総会で選任する必要があるため、この2つは除かれています。
株主の平等
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない(109条1項)。
前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号[株主の権利]に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる(同条2項)。
定款の変更の手続の特則
株式会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができる取得条項付株式は、株主にとって負担が大きいため、取得条項付株式についての定款の定めを設定・変更しようとする場合は、株主全員の同意を得る必要があります。
ひとつめの括弧書きについて、取得条項付株式についての定款の定めを廃止することは株主の不利にならないため除かれています。
ふたつめの括弧書きについて、種類株式発行会社では、株主総会で特別決議をしたあと、種類株主総会で株主全員の同意が求められるため、除かれています。
発行可能株式総数
株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない(113条1項)。
定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない(同条2項)。
次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない(同条3項)。
① 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合
② 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合
2項について、発行済株式の総数より発行可能株式総数が少ないと矛盾が生じてしまうため、このような定款の変更はできないようになっています。
3項について、持分比率が低下することを防止するため、公開会社が定款を変更する場合、非公開会社が公開会社となる場合、発行可能株式総数は、発行済株式の総数の4倍を超えることができないようになっています。発行可能株式総数が多いと、新たに会社を支配する人が出てくる可能性があるというのを考えるとわかりやすいと思います。
議決権制限株式の発行数
公開会社では、議決権制限株式を利用して、会社を支配することを防止するためにこのような規定がされています。
反対株主の株式買取請求
次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(116条1項)。
① その発行する全部の株式の内容として第107条第1項第1号[譲渡制限株式]に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 全部の株式
② ある種類の株式の内容として第108条第1項第4号[譲渡制限株式]又は第7号[全部取得条項付種類株式]に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第111条第2項各号に規定する株式[種類株式]
③ 次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式(第322条第2項[種類株主総会の決議を要しない旨]の規定による定款の定めがあるものに限る。)を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき 当該種類の株式
イ 株式の併合又は株式の分割
ロ 株式無償割当て
ハ 単元株式数についての定款の変更
ニ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第202条第1項各号[株主割当]に掲げる事項を定めるものに限る。)
ホ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第241条第1項各号[株主割当]に掲げる事項を定めるものに限る。)
ヘ 新株予約権無償割当て
「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう(同条2項)。
① 前項各号の行為をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主
イ 当該株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該行為に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
② 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主
第1項各号の行為をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日(効力発生日)の20日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない(同条3項)。
条文が複雑なので整理しましょう。
1項について、譲渡制限株式や全部取得条項付種類株式の定めを設ける定款の変更をする場合、反対株主は、株式買取請求をすることができます。1号と2号がわかりにくいですが、1号はひとつの株式を発行している場合、2号は種類株式を発行している場合と整理するとわかりやすいと思います。
また、株式の併合や株式の分割などをする場合において、種類株式を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあり、種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがあるときも、株式買取請求をすることができます。種類株主総会の決議があるときは、種類株主の意見を反映できますが種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがあるときは、種類株主の意見を反映できないため、株式買取請求をすることによって株主を保護する仕組みが定められています。
2項について、反対株主とは、決議を要する場合は、株主総会に先立って反対する旨を通知し、かつ、株主総会において反対した株主や議決権を行使することができない株主をいいます。また、決議を要しない場合は、すべての株主をいいます。
新株予約権買取請求
① その発行する全部の株式の内容として第107条第1項第1号[譲渡制限株式]に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更 全部の新株予約権
② ある種類の株式の内容として第108条第1項第4号[譲渡制限株式]又は第7号[全部取得条項付種類株式]に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 当該種類の株式を目的とする新株予約権
株式買取請求と同様の趣旨で新株予約権買取請求について定められています。新株予約権者は、株主ではないため、株式買取請求をすることができません。そこで、新株予約権者は、株式に譲渡制限や全部取得条項付種類株式についての定めを設ける場合、新株予約権買取請求をすることができます。
株主等の権利の行使に関する利益の供与
健全な会社運営を害することから、利益供与は禁止されています。