商業登記法の登記手続から発行可能株式総数の変更について学習します。
発行可能株式総数
発行可能株式総数とは、株式会社が発行することができる株式の総数のことをいいます。
発起人は、発行可能株式総数を定款で定めます。
手続
発行可能株式総数は、定款の記載事項です。
定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要になります。
もっとも、株式の分割をする場合において、分割比率を超えない範囲内で増加するときは、株主総会の決議によらないで、定款の変更をすることができます。たとえば、1株を5株に分割する場合、発行可能株式総数を5倍までは株主総会の決議は不要になるということです。株主の持株比率が下がるという不利益がないのであれば、株主総会が不要になると考えるとわかりやすいと思います。
① 次に掲げる事項についての定款の変更
・・・
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
種類株式発行会社では、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の株式の種類株主総会の特別決議が必要になります。
定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない(同条2項)。次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない(同条3項)。
① 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合
② 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合新株予約権(新株予約権を行使することができる期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式の総数を控除して得た数を超えてはならない(同条4項)。
株式会社は、発行可能株式総数についての定めを廃止することはできません。
また、発行可能株式総数は、発行済株式の総数を下ることはできません。発行可能株式総数が1000株なのに発行済株式総数が5000株というのはできないということです。
3項について、公開会社が発行可能株式総数を「増加」する場合や非公開会社が公開会社となる場合、発行可能株式総数は、発行済株式の総数の4倍を超えることができませんでした。これは、株主の持株比率が大きく変動することによって、株主の利益を害さないようにするための規定です。
4項について、新株予約権を行使したときに発行される株式の数を留保しておく必要があるということです。
登記申請
(1)登記の事由
「発行可能株式総数の変更」とします。
(2)登記事項
変更年月日と「発行可能株式総数 10,000株」のように記載します。
(3)登録免許税
登録免許税は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第1.24(1)(ツ))。
(4)添付書面
株主総会議事録を添付します(46条2項)。
また、株主リストの添付が必要になります(規則61条3項)。
取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、定款を変更した場合は、取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会による場合は、取締役会議事録)を添付します。
種類株主総会の決議を経たときは、種類株主総会議事録と株主リストが必要になります(46条2項、規則61条3項)。
代理人によって登記を申請するには、委任状の添付が必要になります(18条)。
(5)記載例
登記の事由 | 発行可能株式総数の変更 |
登記事項 | 令和◯年◯月◯日変更 発行可能株式総数 10,000株 |
登録免許税 | 3万円 |
添付書面 | 株主総会議事録 1通 株主リスト 1通 委任状 1通 |