商業登記法の登記手続から種類株式発行会社について学習します。
種類株式発行会社
種類株式発行会社とは、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社のことをいいます。
種類株式発行会社では、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」が登記事項となります。このことからわかるように、種類株式発行会社では、発行可能種類株式総数や発行する各種類の株式の内容を変更したとき、具体的には種類株式を発行したときや種類株式の内容を変更したとき、廃止したときに登記申請が必要になります。
手続
株式会社は、株主総会の特別決議によって、定款を変更することができます。
そのうえで、種類株式発行会社では、譲渡制限株式なら特殊決議、取得条項付株式なら種類株主全員の同意が必要になります。
① 次に掲げる事項についての定款の変更(第111条第1項[取得条項付株式]又は第2項[譲渡制限株式]に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
①の② 第179条の3第1項[株式等売渡請求]の承認
② 株式の併合又は株式の分割
③ 第185条[株式無償割当て]に規定する株式無償割当て
④ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第202条第1項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
⑤ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第241条第1項各号[株主割当て]に掲げる事項を定めるものに限る。)
⑥ 第277条[新株予約権無償割当て]に規定する新株予約権無償割当て
⑦ 合併
⑧ 吸収分割
⑨ 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
⑩ 新設分割
⑪ 株式交換
⑫ 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
⑬ 株式移転
⑭ 株式交付
また、定款の変更等を行う場合において、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、種類株主総会の特別決議が必要になります。1号から14号を暗記するのは大変なので、試験対策としては、種類株式に影響を及ぼすときであって、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、種類株主総会が必要になるとおさえておきましょう。
1号について、括弧書きで取得条項付株式と譲渡制限株式に規定するものを除くとなっているのは、これらの場合は、特別決議ではなく、取得条項付株式は種類株主全員の同意、譲渡制限株式は特殊決議が必要になるからです。要件が加重されているために除かれているということです。
登記申請
(1)登記の事由
「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定」とします。変更や廃止の場合は、「設定」の部分を「変更」「廃止」とします。
(2)登記事項
年月日「変更」とし、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の内容を記載します。種類株式発行会社では、登記事項の一部が変わった場合でも「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の全部を書く必要がある点に注意しましょう。株式会社の「目的」の変更の登記と同じように考えることができます。
(3)登録免許税
登録免許税は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第1.24(1)(ツ))。
(4)添付書面
株主総会議事録を添付します(46条2項)。
また、株主リストの添付が必要になります(規則61条3項)。
種類株式発行会社では、種類株主総会議事録と株主リストを添付します(46条2項、規則61条3項)。
代理人によって登記を申請するには、委任状の添付が必要になります(18条)。
(5)記載例
登記の事由 | 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定 |
登記事項 | 令和◯年◯月◯日変更 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容 甲種類株式 10,000株 乙種類株式 5,000株 甲種類株式を有する株主は、いつでも当会社に対して当会社の株式を1株3万円で取得することを請求することができる。 |
登録免許税 | 3万円 |
添付書面 | 株主総会議事録 1通 種類株主総会議事録 1通 株主リスト 2通 委任状 1通 |