【会社法】募集株式の発行等について、①募集事項の決定等のまとめ

会社法

会社法の株式会社の株式の募集株式の発行等から募集事項の決定等について学習します。募集株式の発行等は、全6款で構成されています。

  • 第1款 募集事項の決定等
  • 第2款 募集株式の割当て
  • 第3款 金銭以外の財産の出資
  • 第4款 出資の履行等
  • 第5款 募集株式の発行等をやめることの請求
  • 第6款 募集に係る責任等

今回は、募集株式の発行等の中心となる募集事項の決定等をみていきましょう。

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募集事項の決定

株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない(199条1項)。
① 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
② 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
③ 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
④ 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は財産の給付の期日又はその期間
⑤ 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
募集事項の決定は、株主総会の決議[特別決議]によらなければならない(同条2項、309条2項5号)。
払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない(同条3項)。
種類株式発行会社において、募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない(同条4項)。
募集事項は、第1項の募集ごとに、均等に定めなければならない(同条5項)。

株式会社は、募集株式について、株主総会の特別決議によって、募集株式の数や払込金額を定める必要があります。また、払込金額が特に有利な金額である場合には、取締役は、株主総会において、それを必要とする理由を説明しなければなりません。

まずは、この原則をおさえたうえで、特則について学習しましょう。

募集事項の決定の委任

前条第2項及び第4項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない(200条1項)。

種類株式発行会社において、募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定の委任は、当該種類の株式について前条第4項の定款の定めがある場合を除き、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない(同条4項)。

募集事項の決定を取締役に委任することができます。種類株式発行会社については、基本的に種類株式の株主に影響を与える可能性があるときは、種類株主総会が必要になるという価値判断を持っておくと理解しやすいと思います。

公開会社における募集事項の決定の特則

第199条第3項[有利発行]に規定する場合を除き、公開会社における同条第2項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない(210条1項)。

公開会社は、取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の2週間前までに株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない(同条3項)。

前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる(同条4項)。

公開会社では、募集株式について、取締役会で決定することができます。もっとも、有利発行の場合は株主の意見を聞く必要があるため、株主総会による必要があります。そして、取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、期日の2週間前までに、株主に募集事項を通知します。株主総会ではなく、取締役会で決議した内容は株主は知ることができないため、通知する必要があるということです。

株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合

株式会社は、第199条第1項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない(202条1項)。
① 株主に対し、申込みをすることにより当該株式会社の募集株式の割当てを受ける権利を与える旨
② 募集株式の引受けの申込みの期日

株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に1株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする(同条2項)。

第1項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない(同条3項)。
① 当該募集事項及び第1項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
② 当該募集事項及び第1項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
③ 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議
④ 前3号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議

株式会社は、第1項各号に掲げる事項を定めた場合には、期日の2週間前までに、株主に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない(同条4項)。
① 募集事項
② 当該株主が割当てを受ける募集株式の数
③ 期日
第199条第2項[株主総会の決議]から第4項[有利発行、種類株主総会]まで及び前2条の規定[募集事項の決定の委任、公開会社における募集事項の決定の特則]は、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない(同条5項)。

株式会社は、株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する株主割当てをすることができます。そして、申込の確保を保障するために、期日の2週間前までに、株主に対して通知をします。

3項1号、2号について、取締役の決定または取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合、それぞれ取締役の決定、取締役会の決議によって定めます。3号について、公開会社である場合、取締役会の決議によって定めます。第三者割当ての場合も、公開会社のときは取締役会で決議することができる特則がありました。4号について、前3号に掲げる場合以外、つまり、非公開会社であって定款の定めがない場合は、通常通り株主総会の決議によって定めます。

5項について、株主割当ての場合、株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利が得られるため、株主総会の決議による必要はありません。

募集株式についてまとめましょう。

第三者割当て 株主割当て
公開会社 取締役会
(有利発行の場合:株主総会)
取締役会
非公開会社 株主総会
(委任:取締役等)
株主総会
(定款の定め:取締役等)

表については、縦と横を入れ替える、上下左右を入れ替えるのは自由なので、自分にとって覚えやすい方法でまとめましょう。

まず、条文の順番でいうと、募集株式を発行する場合、株主総会の決議によることが原則です。そして、株主総会で委任をすることによって、取締役の決定または取締役会の決議によることができます。

次に、公開会社の場合、取締役会の決議によることが原則です。もっとも、有利発行の場合は、株主にとって不利になるおそれがあるため、株主総会の決議による必要があります。株主割当においては、株主が不利になることはないため、有利な価格であったとしても、取締役会の決議によります。

そして、非公開会社の株主割当てについて、202条3項で定められていた部分です。原則として、非公開会社は株主総会の決議によるとおさえましょう。その上で、株主割当ては、定款の定めがある場合は、取締役会の決議や取締役の決定による点をおさえましょう。

募集株式の発行の決議機関は、本試験でも頻出です。最終的には、このような表を暗記して瞬時に対応することが求められますが、まずはどのような理由でどの決議機関になっているか理解し、そのあとに過去問演習をしながら、記憶を定着させていくのをおすすめします。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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