【商業登記法】取得条項付株式の定めについて、設定・変更・廃止のまとめ

商業登記法

商業登記法の登記手続から取得条項付株式の定めについて学習します。

商業登記法>登記手続>株式会社の登記>取得条項付株式の定め

取得条項付株式の定め

取得条項付株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいう(会社法2条19号)。

取得条項付株式は、株式会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができる旨を定めている株式のことをいいます。取得請求権付株式とは逆の方向であることを意識しましょう。

設立の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない(会社法911条3項7号)。
・・・
⑦ 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)

取得条項付株式の定めは、発行する株式の内容として登記をします。

手続

株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない(会社法107条2項)。
③ 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項(略)

取得条項付株式の定めは、定款の記載事項です。

株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない(108条2項)。
⑥ 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項(略)

種類株式についても同様の規定がされています。

定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第107条第1項第3号[取得条項付株式]に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、株主全員の同意を得なければならない(会社法110条)。

取得条項付株式の定めを設定・変更する定款の変更を行う場合、株主全員の同意が必要になります。取得条項付株式は、株主にとって重大な不利益が生じるため、株主全員の同意が求められます。取得請求権付株式は特別決議、譲渡制限株式は特殊決議であった点と比較しましょう。

また、取得条項付株式は、設定だけでなく変更も株主全員の同意が必要になります。たとえば、変更前の条件であれば取得される可能性が低かったのに、変更後の条件は取得される可能性が高いということを考えると理解しやすいと思います。もっとも、逆の場合も考えられますが、変更は一律で株主全員の同意と理解記憶するのをおすすめします。譲渡制限株式の変更は特別決議であった点と比較しましょう。譲渡制限株式は、譲渡制限があることは変わらず、決議機関が変わるだけといったように、不利益の程度がさほど変わらないと考えると、この差が理解しやすいと思います。

株式会社は、その成立後、株主総会の決議[特別決議]によって、定款を変更することができる(会社法466条、309条2項11号)。

種類株式発行会社では、まず、株主総会の特別決議が必要になります。

種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第108条第1項第6号[取得条項付株式]に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない(会社法111条)。

その上で、種類株式の株主全員の同意が必要になります。譲渡制限株式のときと同じように考えることができます。

登記申請

(1)登記の事由

発行する株式の内容の設定」とします。変更や廃止の場合は、「設定」の部分をそれぞれ「変更」「廃止」とします。種類株式発行会社では、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更」となります。記載事項が異なるのは、登記される場所が異なるからです。

(2)登記事項

設定年月日と「変更」(*「設定」の場合でも「変更」を用いるものとされています)とし、「発行する株式の内容 当会社は、◯◯のときに、当会社の株式を1株3万円で取得することができる。」のように記載します。文言については、記述式問題の株主総会議事録等に記載されているので、それを書き写しましょう。

(3)登録免許税

登録免許税は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第1.24(1)(ツ))。

(4)添付書面

総株主の同意があったことを証する書面を添付します(46条1項)。

また、株主リストの添付が必要になります(規則61条3項)。

廃止の場合は、株主総会議事録株主リストを添付します(46条2項、規則61条3項)。

種類株式発行会社では、種類株主総会議事録株主リスト種類株主全員の同意があったことを証する書面株主リストを添付します(46条1項、2項、規則61条2項、3項)。

代理人によって登記を申請するには、委任状の添付が必要になります(18条)。

(5)記載例

登記の事由 発行する株式の内容の設定
登記事項 令和◯年◯月◯日変更
発行する株式の内容 当会社は、◯◯のときに、当会社の株式を1株3万円で取得することができる。
登録免許税 3万円
添付書面 総株主の同意があったことを証する書面 1通
株主リスト 1通
委任状 1通

 

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

特集記事

TOP
CLOSE