今回は、司法書士試験の記述式対策の本についてお話します。
記述式問題は配点が高いというのもそうですが、そもそもどのように解けばいいかわからない、解き方を学べばよいかわからないという方も多いと思います。
記述式問題に関する書籍は、主にインプット用のものとアウトプット用のものに分けられます。インプット用のものは、法律を通して学習する基本書、記述式問題に特化したもの、記述式問題で使うひな形のものがあります。アウトプット用のものは、予備校等が作成した問題集、過去問題集があります。
基本書は、司法書士試験の学習に使ういつもの基本書です。不動産登記法や商業登記法の学習を通して、登記制度がどのようになっているかを学ぶことができるようになっています。そして、記述式問題に特化したものは、文字通り記述式問題を解くためのものです。ひな形は、記述式問題を解く上で必要となるひな形を習得するものです。もっとも、これらは厳密に分かれているわけではありません。
そこで、今回は、記述式対策に使えるインプット向けの本の特徴と個人的な意見をお伝えします。
山本浩司のautoma system
早稲田セミナー専任講師・山本浩司氏によるオートマシリーズの記述式対策本です。
- 司法書士 山本浩司のautoma system 不動産登記法 記述式
- 司法書士 山本浩司のautoma system 商業登記法 記述式
記述式問題がどのようになっているかを学ぶことができます。普段の学習にオートマシリーズを使っている方は、迷うことなくこちらを選ぶとよいと思います。
一方、基本書は別のシリーズを選んだ方、特にオートマシリーズは合わないと感じた方にはおすすめしません。あくまでオートマシリーズなので、文体や著者の雰囲気は同じだからです。
司法書士 リアリスティック
辰巳法律研究所の松本 雅典氏による「リアリスティック」シリーズの記述式対策本です。
- 司法書士 リアリスティック不動産登記法 記述式
- 司法書士 リアリスティック商業登記法 記述式
リアリスティックは、オートマ、Vマジックなどと比べると後発ですが、その分、他のシリーズがあまり注力していない記述式対策に力を入れた書籍が多いように感じます。普段の学習に「リアリスティック」シリーズを使っている方は、他のものを選ぶ理由はありません。
私は、本シリーズの手法を覚えるのが大変だと思いました。個人的にあまりテクニカルなことはせず、普通に問題を解いていきたいので、同じ方にはおすすめしません。
うかる!司法書士記述式答案構成力
伊藤塾の山村講師による記述式対策の本です。伊藤塾の記述式対策の本は、複数あるので整理します。
- うかる!司法書士記述式「別紙」完全対策(2009)
- うかる!司法書士記述式答案構成力不動案登記 基礎トレーニング編(2017)
- うかる!司法書士記述式答案構成力商業登記 基礎トレーニング編(2017)
- うかる!司法書士記述式答案構成力不動産登記 実戦力養成編(2018)
- うかる!司法書士記述式答案構成力商業登記 実戦力養成編(2018)
この中で、記述式対策をしたいという方が読みたいのは、おそらく基礎トレーニング編です。「基礎トレーニング編」では、記述式の基礎から答案構成などの方法について学ぶことができます。「実践力養成編」は、いわゆる問題集のような位置づけになります。なお、「『別紙』完全対策」は、問題を収録したものですが、発売時期も古いので、ここでは言及しません。
暗記本で「うかる」を使っている方は、本シリーズでも良いと思いますが、オートマやリアリスティックと異なり、著者の色はそれほど強くないため、「うかる」で縛る必要は高くありません。
私は、「リアリスティック」シリーズと同様、答案構成のルールを覚えるのが大変だと思いました。「リアリスティック」よりはかんたんそうですが、やはりテクニカルという印象があります。
司法書士 択一・記述 ブリッジ
早稲田セミナーの講師であった竹下先生によるブリッジシリーズです。竹下先生は、基本書として「デュープロセス」シリーズがあり、こちらは記述式問題の対策本になります。
- 司法書士 択一・記述 ブリッジ 不動産登記法 理論編(2020)
- 司法書士 択一・記述 ブリッジ 商業登記法 理論編(2022)
- 司法書士 択一・記述 ブリッジ 不動産登記法 実戦編(2020)
- 司法書士 択一・記述 ブリッジ 商業登記法 実戦編(2022)
※早稲田経営出版から発売されているため、おそらく今後は改訂はしないと思われます
理論編では、記述式についてわかりますが、おそらく多くの方にとっては難しいのではないかと思います。「理論編」を読んでみるとわかりますが、記述式問題の解き方というより、不動産登記法・商業登記法の理論を学ぶため、これだと基本書を読めばよいのではと感じる方が多いと思うからです。なお、「実践編」は、問題集になります。
番外編:ケータイ司法書士 記述ひな形
LECの森山先生による「ケータイ司法書士」の記述ひな形です。本書は正確には、ひな形に分類されますが、5巻と6巻を通して、記述式問題の解き方も理解できるようになっています。
- ケータイ司法書士V : 記述ひな形 不動産登記
- ケータイ司法書士VI : 記述ひな形 商業登記
私は、本書で記述式問題の基礎を身につけ、「ケータイ司法書士」の講座に付いていた(セットになっていました)「記述式過去問分析講座」を使って、本試験でのひな形の使い方を習得しました。森山先生の解き方は、複雑な答案構成はせず、問題文に従って淡々と解いていくので、自分に合っていました。
講義の中で、「ひな形をおろそかにしている人が多い」といったことを仰っているのが印象的でした。たしかに、本試験問題をどのように解いていくか知りたい気持ちはわかりますが、まずは、数学の公式にあたる「ひな形」を覚えないとはじまりません。そして、ひとつひとつのひな形を組み合わせることによって、本試験問題が解けるようになっています。
といっても、いきなりひな形を学習できる方はほとんどいないと思います。そこで、まずは過去問を見て、どのように記述式問題が出題されるのかを知り、ひな形を知らなければ何も書けないということを肌で感じてから、ひな形の学習を進めるのでも問題ありません。
まとめ
司法書士試験の記述式対策のインプット向けの本を紹介しました。基本的には、今使っている基本書のシリーズに記述式のものがあればそれを使うのをおすすめします。著者の色が同じでなじみやすいからです。一方、記述式に特化した本がない基本書シリーズ(スタンダード、Vマジックなど)を使っている方は、「リアリスティック」、「うかる」あたりを選ぶのが良いのではないかと思います。ただ、解法が複雑だと感じる方は、「ケータイ司法書士」のひな形を使って、過去問を解いていくのをおすすめします。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。