会社法の株式会社の株式の募集株式の発行等から金銭以外の財産の出資について学習します。設立時に現物出資財産があるときの検査役と共通することが多いので、比較しながらみていきましょう。
株式会社は、第199条第1項第3号[金銭以外の財産を出資の目的とするとき]に掲げる事項を定めたときは、募集事項の決定の後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない(208条1項)。
裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない(同条2項)。
裁判所は、検査役の報告を受けた場合において、現物出資財産について定められた価額(検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない(同条7項)。
募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。以下この条において同じ。)は、前項の決定により現物出資財産の価額の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後1週間以内に限り、その募集株式の引受けの申込み又は契約に係る意思表示を取り消すことができる(同条8項)。
前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない(同条9項)。
① 募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合 当該募集株式の引受人が給付する現物出資財産の価額
② 現物出資財産について定められた価額の総額が500万円を超えない場合 当該現物出資財産の価額
③ 現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定められた価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての現物出資財産の価額
④ 現物出資財産について定められた価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 当該証明を受けた現物出資財産の価額
⑤ 現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合 当該金銭債権についての現物出資財産の価額
次に掲げる者は、証明をすることができない(同条10項)。
① 取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人
② 募集株式の引受人
③ 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
④ 弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第1号又は第2号に掲げる者のいずれかに該当するもの
株式会社は、現物出資財産等があるときは、検査役の選任を申立てます。このあたりは、設立時の変態設立事項があるときと同じなので理解しやすいと思います。
検査役による検査は、1号から5号の場合はされません。
1号は、割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を越えない場合です。2号は、500万円を超えない場合です。1号と2号は、会社に与える影響が小さい場合と考えることができます。
3号は、有価証券が市場価格を超えない場合です。4号は、弁護士等の証明を受けた場合です。5号は、金銭債権が帳簿価格を超えない場合です。少し難しく感じますが、引受人が株式会社に対する800万円の金銭債権を有しており、その価額である800万円が会社の負債の帳簿価額である800万円を超えない場合ということです。反対にいうと、800万円の金銭債権を負債の帳簿価額を超えた900万円として出資をすることは認められないということです。3号から5号は適正さが担保されていると考えることができます。
なお、1号と5号は設立時にはなかったことを比較しておきましょう。設立前は発行済株式という概念がなく、設立前は会社に対する金銭債権は発生し得ないと考えると理解しやすいと思います。
10項について、取締役や会計参与など会社の役員等である者は証明をすることができません。また、弁護士法人等であっても、社員の半数以上が会社役員等である場合も証明をすることができません。会社内部の者が証明をしても、適正かわからないと考えるとわかりやすいと思います。