会社法の総則について学習します。会社法は、司法書士試験の主要科目のひとつです。また、実体面について定めた会社法を前提として、手続き面について定めた商業登記法があるので、その点からも重要な科目と言えます。なお、同じことは民法と不動産登記法の関係にも共通します。
会社法は、全8編で構成される法律です。
- 第1編 総則
- 第2編 株式会社
- 第3編 持分会社
- 第4編 社債
- 第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付
- 第6編 外国会社
- 第7編 雑則
- 第8編 罰則
今回学習するのは、会社法全体に共通することについて定めた第1編「総則」です。
第1編「総則」は、全4章で構成されています。
- 第1章 通則
- 第2章 会社の商号
- 第3章 会社の使用人等
- 第4章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
目次
第1章 総則
趣旨
会社法は、会社の設立、組織、運営、管理について定めています。会社法は、会社に関する一般的なルールを定めた「一般法」と位置づけられます。一方、銀行法や保険業法など、特定の業務に関する法律は「特別法」として、会社法に優先して適用されることになります。
もう少し広い視点でみると、私法の一般法は常に民法です。そして、私法のうち、商人を対象とする特別法が商法、商法のうち会社を対象とする特別法が会社法になります。一般法や特別法は相対的なものなので、会社法は、民法に対しては特別法ですが、銀行法などに対しては一般法になります。
定義
① 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。
2条は、さまざまな用語の定義を定めています。今の時点で定義を見ても、暗記するだけになってしまうので、まずは、会社は、株式会社などをいうという点だけおさえておきましょう。持分会社である合名会社、合資会社、合同会社については、第3編で学習します。
法人格
住所
商行為
商法1条1項は、「商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。」と定めています。
会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為を「商行為」とすることで、商法が適用されることになります。前述のように、会社法は商法の特別法にあたるので、会社法で規定されていることは会社法が適用され、会社法で規定されていないことは商法が適用されます。また、商法に規定されていないときは、商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の規定に従います(商法1条2項)。
第2章 会社の商号
商号
会社は、その名称を商号とする(6条1項)。
会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない(同条2項)。
会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない(同条3項)。
会社と誤認させる名称等の使用の禁止
何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない(8条1項)。
前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(同条2項)。
自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任
第3章 会社の使用人等
支配人
支配人の代理権
支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(11条1項)。
支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる(11条2項)。
支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(11条3項)。
会社は、支配人を置いた場合、登記をします。もっとも、支配人の登記には、支配人の代理権に加えた制限を登記することができないため、取引の相手方を保護する必要性があることから、支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができないとされています。
支配人の競業の禁止
支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない(12条1項)。
① 自ら営業を行うこと。
② 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
③ 他の会社又は商人の使用人となること。
④ 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
支配人が前項の規定に違反して同項第2号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する(同条2項)。
支配人は、会社の許可を受けなければ、競業取引等をすることができません。会社の許可を受けずに競業取引を行ったときは、競業取引によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定します。競業取引についての考え方は、株式会社の取締役とも共通します。
表見支配人
会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人を表見支配人といいます。表見支配人は、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなします。
第4章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
譲渡会社の競業の禁止
事業を譲渡した会社(譲渡会社)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含む)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない(21条1項)。
譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有する(同条2項)。
前2項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない(同条3項)。
譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等
事業を譲り受けた会社(譲受会社)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う(22条1項)。
前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする(同条2項)。