不動産登記法の登記手続の権利に関する登記から仮登記について学習します。
仮登記
仮登記は、次に掲げる場合にすることができる(105条1項)。
① 第3条各号[登記することができる権利等]に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるもの[登記識別情報又は第三者の許可、同意若しくは承諾を証する情報]を提供することができないとき。
② 第3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
仮登記は、1号と2号があります。1号仮登記は、登記識別情報または第三者の承諾等を証する情報を提供することができないときにするものです。2号仮登記は、請求権を保全しようとするときにするものです。1号はすでに権利が発生しているけれど登記識別情報等を提供できない状態、2号は所有権移転などの権利がまだ完全に発生しているわけではない状態と考えると理解しやすいと思います。
仮登記に基づく本登記の順位
このことから、仮登記は、あらかじめ場所取りをしていると考えることができます。
仮登記の申請方法
仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、第60条[共同申請]の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる(107条1項)。
仮登記の登記権利者及び登記義務者が共同して仮登記を申請する場合については、第22条本文[登記識別情報の提供]の規定は、適用しない(107条2項)。
仮登記は、あくまで「仮」の登記のため、登記義務者の承諾があるときや仮登記を命ずる処分があるときは、登記権利者が単独で申請をすることができます。
また、登記権利者と登記義務者が共同して仮登記を申請する場合は、登記識別情報は提供する必要はありません。こちらも「仮」の登記だからと考えることもできますし、1号仮登記の場合、登記識別情報を提供することができず、仮登記をする場合もあるためと考えることもできます。ただ、あくまで共同して仮登記を申請する場合である点に注意しましょう。
仮登記を命ずる処分
保全の必要性が高い場合など、裁判所は、登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができます。
仮登記に基づく本登記
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(109条1項)。
登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない(109条2項)。
登記上の利害関係を有する第三者とは、たとえば、仮登記がされたあとに所有権の移転の登記を受けた者などが該当します。
仮登記の抹消
仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請することができます。