不動産登記法の登記手続の権利に関する登記から仮処分に関する登記について学習します。仮処分に関する登記は、民事保全法の知識が必要になります。今の時点で理解できない方は、民事保全法を学習したあとに復習しましょう。
仮処分の登記に後れる登記の抹消
所有権について民事保全法第53条第1項の規定による処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる(111条1項)。
前項の規定は、所有権以外の権利について民事保全法第53条第1項の規定による処分禁止の登記がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする当該権利の移転又は消滅に関し登記(仮登記を除く。)を申請する場合について準用する(111条2項)。
登記官は、第1項(前項において準用する場合を含む。)の申請に基づいて当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは、職権で、当該処分禁止の登記も抹消しなければならない(111条3項)。
まず、用語を整理するために、民事保全法をみてみましょう。
不動産登記法では、このうち、係争物に関する仮処分についての手続を学習します。
係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更、たとえば登記が移転するなどにより、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、または権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができます。
裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、必要な処分をすることができます。
不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う(民事保全法53条1項)。
不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う(民事保全法53条2項)。
不動産に関する仮処分の執行は2種類あります。
①処分禁止の登記をする方法
②処分禁止の登記をする方法+保全仮登記をする方法
不動産登記法では、この仮処分の執行の手続について学びます。
ここで、不動産登記法に戻ります。
所有権について、民事保全法第53条第1項の規定による処分禁止の登記がされた後、仮処分の債権者が仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記を申請する場合、債権者は、処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができます。なお、今は53条1項の処分の禁止の登記の話をしているので、カッコ書きにもあるように2項は除かれるので気をつけましょう。
登記官は、処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは、職権で、当該処分禁止の登記も抹消します。登記官が抹消するのは、「処分禁止の登記」です。債権者が所有権移転の登記をしたことによって、処分禁止の登記は不要になるため、登記官が職権で抹消します。
保全仮登記に基づく本登記の順位
ここから、53条2項の処分禁止の登記をする方法+保全仮登記をする方法の手続について規定しています。所有権の場合、現在の所有者は1人しかありえないので、処分禁止の仮処分だけして、処分禁止の登記に後れる登記を抹消すれば足ります。一方、所有権以外の権利、たとえば抵当権などは、1つの不動産に対して複数設定することができるため、場所を取っておく必要があります。そのため、53条2項では、処分禁止の仮処分だけでなく保全仮登記もします。この保全仮登記に基づいて本登記をした場合は、保全仮登記の順位になります。
保全仮登記に係る仮処分の登記に後れる登記の抹消
地上権や賃借権のように不動産の使用又は収益をする権利について保全仮登記がされた後、債権者が本登記を申請する場合、債権者は、地上権や賃借権などであって処分禁止の登記に後れるものの抹消を単独で申請することができます。使用又は収益をする権利は、不動産に1つしか設定することができないため、単独抹消が認められています。
処分禁止の登記の抹消
保全仮登記に基づく本登記をするときは、処分禁止の登記の役目が終わったことがわかるので、職権で、処分禁止の登記が抹消されます。