不動産登記法の登記手続の権利に関する登記から担保権等に関する登記について学習します。
不動産登記法では、担保権は、先取特権、質権、抵当権の3つについて登記します。留置権は、登記による公示という制度になじまないため、登記をすることができません。
今回は、担保権等に関する登記の全体部分について見ていきましょう。なお、担保権「等」となっているのは、同じ款に「買戻しの特約の登記」が含まれるからです。
担保権の登記の登記事項
先取特権、質権若しくは転質又は抵当権の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(83条1項)。
① 債権額(一定の金額を目的としない債権については、その価額)
② 債務者の氏名又は名称及び住所
③ 所有権以外の権利を目的とするときは、その目的となる権利
④ 2以上の不動産に関する権利を目的とするときは、当該2以上の不動産及び当該権利
⑤ 外国通貨で第1号の債権額を指定した債権を担保する質権若しくは転質又は抵当権の登記にあっては、本邦通貨で表示した担保限度額
登記官は、前項第4号に掲げる事項を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、共同担保目録を作成することができる(83条2項)。
おそらく、多くの方が抵当権を学習するときにこれらの登記事項を覚え、それを他の権利に応用させていると思いますが、条文では、担保権としての登記事項となります。そのため、「先取特権(または質権)では債権額は登記事項か?」といったことを問われたとき、抵当権と比較して登記事項だったか考えるのではなく、「担保権だから登記事項である」と考えるのが正攻法といえます。
3号について、所有権以外の権利、たとえば地上権などを目的として登記することもできます。
4号について、2以上の不動産に関する権利を目的とするときは、2以上の不動産と権利を登記します。たとえば、1000万円の債権を担保するために、甲と乙、2つの不動産に抵当権を設定するなどの場合です。このとき、登記官は、2以上の不動産に関する権利を目的としていることを明らかにするため、共同担保目録を作成することができます。共同担保目録は、1つの債権に対して、複数の不動産が担保として使われている場合に、その不動産を一覧にしたものです。これによって、担保に供された不動産を一覧で確認でき、管理がしやすくなるという利便性があります。
債権の一部譲渡による担保権の移転の登記等の登記事項
債権の一部の譲渡または代位弁済がされた場合、譲渡または代位弁済の目的である債権の額を登記します。
【登記事項の例】
これらは、担保権に共通する事項です。もちろん、試験対策として抵当権が最重要なのは間違いありませんが、先取特権や質権が曖昧にならないよう注意しましょう。