【不動産登記法】抵当権に関する登記について、順位の変更や代位の登記などのまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続の権利に関する登記の担保権等に関する登記から抵当権に関する登記について学習します。担保権の山場のひとつとなります。

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抵当権の登記の登記事項

抵当権(根抵当権を除く。)の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]及び第83条第1項各号[担保権の登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(88条1項)。
① 利息に関する定めがあるときは、その定め
② 民法第375条第2項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定め
③ 債権に付した条件があるときは、その条件
④ 民法第370条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
⑤ 抵当証券発行の定めがあるときは、その定め
⑥ 前号の定めがある場合において元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定め

根抵当権の登記の登記事項は、第59条各号及び第83条第1項各号(第1号[債権額]を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
① 担保すべき債権の範囲及び極度額
② 民法第370条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
③ 担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、その定め
④ 民法第398条の14第1項ただし書の定めがあるときは、その定め

条文上、抵当権と根抵当権の登記事項が分けられています。

1項2号について、民法をみてみましょう。

抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない(民法375条1項)。

前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の2年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができない(民法375条2項)。

抵当権は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償額の定めがあるときは、登記をすることができます。

1項4号について、民法をみてみましょう。

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない(民法370条)。

抵当権は、原則、付加一体物に対して効力が及びます。ただし、設定行為に別段の定めをすることができます。この定めについて、登記します。

1項5号について、抵当証券発行については、別途学習しましょう。

2項について、根抵当権については、回を分けて学習します。

抵当権の順位の変更の登記等

抵当権の順位の変更の登記の申請は、順位を変更する当該抵当権の登記名義人が共同してしなければならない(89条1項)。

このとき、ABCの順位をCBAに変更する場合、Bは順位を変更する抵当権には入らないそうですが、Bは、AとCの債権額の影響を受けるため、たとえば、Cの債権額がAより大きい場合は、Bの配当額が減少する場合があるため、共同してしなければならないとされています(先例)。

抵当権の処分の登記

第83条[担保権の登記の登記事項]及び第88条[抵当権の登記の登記事項]の規定は、民法第376条第1項の規定により抵当権を他の債権のための担保とし、又は抵当権を譲渡し、若しくは放棄する場合の登記について準用する(90条)。

条文だと少しわかりにくいですが、抵当権の処分、具体的には転抵当抵当権の譲渡抵当権の放棄をするときは、抵当権の登記の方法を使用するということです。また、抵当権の譲渡と抵当権の放棄は、すでに抵当権を持っている人へ譲渡や放棄をすることも考えられるため、それぞれ抵当権の順位の譲渡抵当権の順位の放棄の場合も抵当権の登記の方法を使用します。

共同抵当の代位の登記

民法第393条の規定による代位の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]に掲げるもののほか、先順位の抵当権者が弁済を受けた不動産に関する権利、当該不動産の代価及び当該弁済を受けた額とする(91条1項)。

第83条[担保権の登記の登記事項]及び第88条の規定[抵当権の登記の登記事項]は、前項の登記について準用する(91条2項)。

民法を確認しましょう。

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する(民法391条1項)。

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる(民法392条2項)。

前条第2項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる(民法393条)。

ある程度、実体面について理解している前提で進めます。

まず、債権者Aが同時配当をするときは、各不動産の価額に応じて、債権の負担を按分します。たとえば3000万円の債権を持っていて、甲不動産(4000万円)、乙不動産(8000万円)の場合、甲不動産から1000万円、乙不動産から2000万円が配当されます。これが民法392条1項の部分です。

次に、債権者が異時配当をするときは、代価から債権の全部の弁済を受けることができます。甲不動産のみから弁済を受けるときは甲不動産から3000万円の弁済が受けられるということです。

このとき、甲不動産の次順位に2000万円の債権者Bがいた場合、同時配当がされていたら、甲不動産からAに配当する債権額1000万円を引いた3000万円から2000万円の弁済を受けることができます。しかし、Aが異時配当で甲不動産のみから配当を受けていた場合、Bは、残りの1000万円からしか弁済を受けることができません。

この場合において、次順位の抵当権者は、弁済を受ける抵当権者(債権者A)が前項の規定(同時配当)の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、抵当権者Aに代位して抵当権を行使することができます。これが民法392条2項の部分です。

そして、この代位によって抵当権を行使する者は、抵当権の登記にその代位を付記することができます。これが民法393条の部分です。

この代位の登記の登記事項について定めているのが91条1項です。民法第393条の規定による代位の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]のほか、先順位の抵当権者が弁済を受けた不動産に関する権利当該不動産の代価及び当該弁済を受けた額とします。また、第83条[担保権の登記の登記事項]、第88条の規定[抵当権の登記の登記事項]が準用されるので、これらの項目も登記します。

応用論点ですが、令和5年度の記述式問題の最後で、目的「◯番抵当権代位」、原因「◯年◯月◯日民法第392条第2項による代位」が書けるか問われたため、言及しました。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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