【民事保全法】保全抗告について、「保全命令に対する保全異議の申立ての裁判」などのまとめ

民事保全法

民事保全法の保全抗告について解説します。保全異議と保全取消しは、保全命令に対して債務者がする不服申立てでした。今回の保全抗告は、債権者と債務者がする不服申立てです。条文を読み進めていきましょう。

保全命令に関する手続>保全抗告

保全抗告

保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判に対しては、その送達を受けた日から2週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない(41条1項)。

原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない(41条2項)。

保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない(41条3項)。

民事保全法で難しい部分のひとつなので、整理しましょう。

これまで見てきた保全異議と保全取消しの申立てについての裁判に対しては、送達を受けた日から2週間の不変期間内に、保全抗告をすることができます。これにより、抗告裁判所(上級裁判所)が審判をしてくれることになります。ここまでは理解しやすいと思います。

そして、但書です。「抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない」。民事保全法は、強制執行を保全するためのものなので、かんたんにいうと強制執行まで待っている時間がないから仮にするものです。そのため、二審制になっています。

たとえば、債権者が、保全命令の申立てを簡易裁判所にしたところ、却下されました。債権者は、即時抗告をし、地方裁判所が抗告裁判所として保全命令を発します。そして、この保全命令に対して、債務者が保全異議を申し立て、地方裁判所が裁判をします。ここで、抗告裁判所である地方裁判所が発した「保全命令に対する保全異議の申立て」についての裁判に対しては、さらに抗告をすることができないとされています。すでに一度、保全の必要性について審判しているからです。

条文が「抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては」とあるので、保全取消しの場合について気になる方もいると思いますが、保全取消しの場合は、別の理由のため、制限されません。たとえば、先ほどと同じように、即時抗告を受けた抗告裁判所である地方裁判所が改めて保全命令について判断をし、それに対して事情の変更などの保全取消しの事由がある場合は、保全取消しを申立て、保全取消しの裁判に対しては、保全抗告をすることができます。

2項について、原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければなりません。条文だけみると、疑問が残ると思うので、流れをおさらいしましょう。

まず、保全命令が発せられ、保全異議や保全取消しの申立てがされると、口頭弁論または当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経て、保全異議や保全取消しの申立ての決定がされます(29条、40条)。この裁判に対して、不服がある者は保全抗告をすることができます。ここで、さらに原裁判所が、保全抗告の理由の有無について判断できると、手続の安定が害されてしまうため、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならないとされています。

3項について、民事保全は二審制をとっているので、二審目である保全抗告についての裁判に対しては、さらに抗告をすることができません。

参考:不服の申立て等(保全異議,保全取消し,保全抗告) | 裁判所

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

特集記事

TOP
CLOSE