【民事執行法】不動産に対する強制執行について、強制競売や強制管理などのまとめ

民事執行法

民事執行法の不動産に対する強制執行について解説します。今回から、第2節の「金銭の支払を目的とする債権についての強制執行」に入ります。第2節は、不動産、動産、債権に対する強制執行の大きく3つに分けられます。なお、船舶に対する強制執行は省略します。

強制執行>金銭の支払を目的とする債権についての強制執行>不動産に対する強制執行

第1目 通則

不動産執行の方法

不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる(43条1項)。

ここでは、不動産に対する強制執行は、強制競売と強制管理の2つの方法があり、これらの方法は併用することができる点を押さえておきましょう。具体的な方法については、順番に見ていきます。

執行裁判所

不動産執行については、その所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する(44条1項)。

民事執行法に規定する裁判所の管轄は、専属でした(19条)。ここで、不動産執行については、その所在地を管轄する地方裁判所が、管轄であることがわかりました。

第2目 強制競売

開始決定等

執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない(45条1項)。

前項の開始決定は、債務者に送達しなければならない(45条2項)。

強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる(45条3項)。

差押えの効力

差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる(46条1項)。

差押えは、債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、又は収益することを妨げない(46条2項)。

差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時、または差押えの登記がされた時いずれか早いときに生じるということです。

二重開始決定

強制競売又は担保権の実行としての競売(以下この節において「競売」という。)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあったときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする(47条1項)。

先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の申立てが取り下げられたとき、又は先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の手続が取り消されたときは、執行裁判所は、後の強制競売の開始決定に基づいて手続を続行しなければならない(47条2項)。

担保不動産収益執行については、後ほど見ていきましょう。ここでは、すでに強制競売の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあったときは、さらに強制競売の開始決定がされるという点を押さえておきましょう。これによって、最初の強制競売が取り下げられ、または取り消されたときも、後にされた強制競売に係る手続を進めることができます。

差押えの登記の嘱託等

強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない(48条1項)。

強制競売の開始決定がされると、裁判所書記官が登記を嘱託し、差押えの登記がされます。不動産登記法につながっていく重要な部分です。

配当要求

第25条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び第181条第1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる(51条1項)。

配当要求とは、すでに開始されている競売に参加して、自己の債権の満足を受けようとする手続です。かんたんにいうと、「競売で得た金額を自分にも分けてほしい」とお願いすることです。不動産の強制競売の配当要求は、①債務名義の正本を有する債権者、②強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者、③一般の先取特権を有することを証明した債権者です。

第3目 強制管理

開始決定等

執行裁判所は、強制管理の手続を開始するには、強制管理の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し収益の処分を禁止し、及び債務者が賃貸料の請求権その他の当該不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「給付請求権」という。)を有するときは、債務者に対して当該給付をする義務を負う者(以下「給付義務者」という。)に対しその給付の目的物を管理人に交付すべき旨を命じなければならない(93条1項)。

前項の収益は、後に収穫すべき天然果実及び既に弁済期が到来し、又は後に弁済期が到来すべき法定果実とする(93条2項)。

第1項の開始決定は、債務者及び給付義務者に送達しなければならない(93条3項)。

給付義務者に対する第1項の開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達された時に生ずる(93条4項)。

強制管理の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる(93条5項)。

不動産に対する強制執行の2つめの方法は、強制管理です。強制管理の開始決定が債務者と給付義務者に送達されると、債務者は収益の処分が禁止され、債務者が賃貸料の請求権などの給付請求権を有するときは、給付義務者(たとえば賃借人など)は目的物である賃貸料などを管理人に交付しなければならなくなります。強制競売が不動産を競売にかけて、そこからお金を返してもらうのに対し、強制管理は不動産から得られる賃料などを返してもらうことになります。

参考:不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売)の申立てについて | 裁判所

二重開始決定

既に強制管理の開始決定がされ、又は第180条第2号に規定する担保不動産収益執行の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあったときは、執行裁判所は、更に強制管理の開始決定をするものとする(93条の2)。

強制競売と同じように、強制管理においても、すでに強制管理の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあったときは、二重開始決定がされます。

管理人の選任

執行裁判所は、強制管理の開始決定と同時に、管理人を選任しなければならない(94条1項)。

管理人の権限

管理人は、強制管理の開始決定がされた不動産について、管理並びに収益の収取及び換価をすることができる(95条1項)。

強制管理のための不動産の占有等

管理人は、不動産について、債務者の占有を解いて自らこれを占有することができる(96条1項)。

管理人がどのようなものかイメージしやすくするために、条文を確認しておきましょう。管理人は、強制管理の開始決定と同時に、選任され、不動産の管理や収益の収取などをします。また、管理人は、不動産について、債務者の占有を解いて自ら占有することができます。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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