【民事訴訟法】判決について、判決事項や自由心証主義などのまとめ

民事訴訟法

民事訴訟法の判決について解説します。いよいよ訴訟が終了する場面です。訴訟の終了形式は、裁判によるものと裁判によらないものに分けられます。ここでは、裁判による判決がどのようにされるのか、見ていきましょう。

第一審の訴訟手続>判決

終局判決

裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする(243条1項)。

 

裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る(244条)。

条文が少し読みにくいので整理しましょう。原則として、裁判所は、当事者の双方または一方が口頭弁論の期日に出頭しないなどの場合、相当と認めるときは、終局判決をすることができます。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭しないなどの場合は、もう一方はやる気があるので、出頭した相手方の申出があるときに限るとしています。

判決事項

裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(246条)。

訴えを提起するか、どのような請求をするか、どのように訴えをやめるかについては、当事者が自由に決定できます。これを処分権主義といいます。「処分」や「主義」など、日常で使っている言葉の意味とは若干ズレますが、民法の「悪意」のように、理解しつつある程度は飲み込むようにしましょう。

裁判所は、当事者が申し立てていない事項、たとえば「100万円を返してほしい」という請求をする訴訟について、「いや、かわいそうだから200万円を返しなさい」といったことはできません。

判例は、「被上告人は終始賃借権に基き右板垣の撤去を求めていることは記録上明白であり、本訴は占有の訴ではないことも明らかであるにかかわらず、同被上告人主張の賃借権を否定しながら、同被上告人の主張していない占有権を理由として上告人に右板垣の撤去を命じたことは当事者の申立てざる事項につき判決をした違法があるものといわねばならない。」としています(最判昭36.3.24)。

補則すると、本判例は、「自分には賃借権があるから、板垣を撤去してほしい」と訴えています。これに対し、原判決(控訴審)が「賃借権はないけれど、占有権はあるから板垣を撤去しなさい」と命じたことは、当事者が申し立てていない事項(占有権)につき判決をした違法があるとしています。

自由心証主義

裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する(247条)。

これを自由心証主義といいます。

損害額の認定

損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる(248条)。

どのような請求をするかは訴えを提起する当事者の自由とありました。しかし、それでは原告に請求額を証明する過大な負担を課すことになってしまいます。そこで、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、相当な損害額を認定することができるとされています。

直接主義

判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする(249条1項)。

裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない(249条2項)。

単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない(249条3項)。

自由心証主義のため、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断することができます(247条)。そこで、裁判官が代わった場合や合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、当事者がもう一度尋問をしてほしいと申出をしたときは、裁判所は、尋問をしなければならないとされています。

判決の発効

判決は、言渡しによってその効力を生ずる(250条)。

言渡期日

判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から2月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない(251条1項)。

判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる(251条2項)。

言渡しの方式

判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする(252条)。

判決書

判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない(253条1項)。

① 主文
② 事実
③ 理由
④ 口頭弁論の終結の日
⑤ 当事者及び法定代理人
⑥ 裁判所

これまで、主文や理由に既判力が生ずるといった内容について学習しました。ここで判決書はこのような事項が記載されているということを押さえておきましょう。なお、裁判所のホームページでは、多くの裁判例を読むことができるようになっているので、ぜひ見ておくのをおすすめします。

言渡しの方式の特則

次に掲げる場合において、原告の請求を認容するときは、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる(254条1項)。

① 被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合
② 被告が公示送達による呼出しを受けたにもかかわらず口頭弁論の期日に出頭しない場合(被告の提出した準備書面が口頭弁論において陳述されたものとみなされた場合を除く。)

原則として、判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする必要があります。しかし、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わないなどの場合は、迅速に判決を受けることができるようにするため、判決書の原本に基づかないですることができるとされています。この場合、期日調書に判決内容が書かれることになります。

変更の判決

裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後1週間以内に限り、変更の判決をすることができる。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない(256条1項)。

更正決定

判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権でいつでも更正決定をすることができる(257条1項)。

変更の判決が、判決の言渡し後1週間以内に変更の判決をするのに対して、更生の場合は、申立てによりまたは職権で、いつでも更生の決定をすることができるという違いを押さえておきましょう。

仮執行の宣言

財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる(259条1項)。

手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる(259条2項)。

裁判所は、申立てにより又は職権で担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる(259条3項)。

司法書士試験は、手形訴訟に関する出題があるため、その前提となる仮執行宣言について押さえておきましょう。仮執行宣言とは、判決が確定する前に執行力を与えるものをいいます。

敗訴した当事者は上訴することができますが、その間、勝訴した人は何もできないと均衡が保たれません。そこで、財産権上の請求に関する判決については、必要があると認めるときは、申立てによりまたは職権で、担保を立てて、または立てないで仮執行をすることができることを宣言することができるとされています。

そして、手形又は小切手による金銭の支払の請求に関する判決については、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならないとしています。原則が、申立てによりまたは職権で、仮執行をすることができることを宣言することができるのに対して、手形訴訟の場合は、権利の早期実現の要請から、職権により仮執行をすることができることを宣言しなければならないとなっている点を押さえましょう。

一方、仮執行宣言を受けた側、つまり、敗訴した側を保護する必要もあるため、申立によりまたは職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができるようになっています。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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